今、「はしか」が日本国内、および海外で大流行しています。はしかと言えば、子どものころに聞いたという方も多いかもしれませんが、今は成人になってからの感染が大きな問題になっています。日本でも拡大中ですが、米国では2000年にいったん「はしか」のウイルスを国内から根絶したはずなのに、再び急増しています。米国NIH(国立衛生研究所)の研究グループが解説していますので、そこから「はしか」の基本についておさらいします。
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感染力が強いウイルス
そもそも「はしか」とは、日本では「麻疹(ましん)」とも呼ばれる感染症の一種です。どんな症状かというと、1週間くらいの高熱、倦怠感、鼻かぜ、結膜炎、せきのほか、全身に赤い発疹ができるのが特徴です。
米国では2000年にはしかが根絶されたはずが、再び大流行し2019年は4月までにはしかの感染者が555人報告されました。日本でも2019年現在、かつてないレベルで感染者が増えています。この10年間で大きな流行は2014年にあったのですが、2019年は5月半ばの時点で2014年の1年間の感染者の人数をすでに上回ってしまったのです。
軽く考えられないのは、今でも世界で10万人以上が亡くなっていることです。ほとんどの人は問題なく回復するのですが、症状が重くなる場合があり、命にかかわるケースもあるのです。ですから、感染には十分に気をつけなければいけないのです。
生まれ年によってワクチン接種が足りないことも
大きな問題は、感染力が強いことです。せきなどを媒介として、ウイルスが広がるばかりではなく、ウイルスの粒子が風に流れて、それを吸い込んだ人がうつってしまうという空気感染まで起こすのです。はしかのウイルスに免疫のない人は、ウイルスに接触すると95%は感染が起きてしまいます。空気感染してしまうために、いくら手を洗ってマスクをしても予防しきれないのです。
一番大事なのはワクチン接種を受けることになります。残念ながら、再び発生してしまいましたが、米国ではかつてワクチン接種によって国内から「はしか」をなくすことに成功したくらいです。
日本でもワクチン接種が大切であるのは変わりありません。現在では1歳時と小学校入学前の2回にわたって麻疹のワクチン接種が行われています。主に使われているのは、「麻しん風しん混合ワクチン」。
ただし、1978年から定期接種になったので、1977年以前に生まれた人はワクチン接種を受けていないことがあります。また、1978年~2005年に生まれた人についても、定期接種は1回だったので、十分に免疫が付いていない可能性があります。ただし、2008年度から2012年度の5年間は、ワクチン接種を徹底させる緊急対策として、中学1年生と高校3年生にワクチンが定期接種として打たれていました。
そうした経緯を踏まえて、ワクチン接種を受けていないのではという人は、医療機関でワクチン接種を受けることを考えてもいいでしょう。保険が効きませんので、数千円から1万円程度の出費になりますが、日本ではかつてない感染の広がりが起きていますので、検討に値するのではないでしょうか。
自分や家族の身を守るため、病気の流行を知っておくことは大切です。
<参考文献>
Paules CI et al. Measles in 2019 – Going Backward. N Engl J Med. 2019 Apr 17. doi: 10.1056/NEJMp1905099. [Epub ahead of print]
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1905099