腸内環境をよくするには、悪玉菌、善玉菌、日和見菌の腸内細菌のバランスを整えることが大事(→第2回)。ところが、毎日の食事が原因で、このバランスが崩れることも。どんな食材が腸内環境を乱しやすいのでしょうか。気をつけるポイントは? 腸に悪いNG食材について、おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎先生に伺いました。
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赤身肉の食べ過ぎは腸にハイリスク
腸内細菌の悪玉菌が栄養源とするのが、動物性たんぱく質。そのため、たんぱく質の多い肉を食べ続けていると悪玉菌を増やすことに。特に気をつけたいのが赤身肉です。
「日本人の男女8万人を対象に1995年以降、肉の総量や、赤身肉、白身肉、加工肉の1日の摂取量から5つのグループに分けて追跡して研究したデータによると、赤肉の摂取量が多いグループ(1日80g以上)で、女性の結腸がん(大腸がんの一種。結腸の腸壁は腸内環境の影響を受けやすい) のリスクが高くなることが明らかになりました」(大竹先生)
赤身肉とは、霜降り肉を含む牛肉、豚肉、羊肉で、生の状態で赤い肉を指します。日本人の肉摂取量の全体の約85%を占めるのが、赤身肉といわれています。
「赤身肉の推奨摂取量は、1週間に500g未満とされています。赤身肉は調理しやすく、おいしいので『減らさなければ!』と思うと実践しにくいと思います。なので、『たまには赤身ではなく、白身を食べよう』と視点を変えることを、食事の際に意識してみてください」(大竹先生)
白身肉は、鶏肉や白身魚(サケやヒラメなども含む)で生の状態で白い肉をさします。また、腸の働きをよくするには、1日に1食、魚をとるといいそう。
「特に、生の魚がおすすめです。生の魚を食べることで、大腸がんの抑制作用を期待できる不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)をとることができます。1日に、刺身を4切れほど食べるのが効果的ですね。焼き魚にする場合は、ホイル焼きや蒸し焼きにするとEPAやヤDHAの流出を少なくすることができます」(大竹先生)
サラダ油やマーガリンなどのリノール酸も要注意
不飽和脂肪酸の中でも、リノール酸を多くとり過ぎると、大腸がんのリスクが高くなるので気をつけましょう。リノール酸は、サラダ油や大豆油、マーガリンなどに多く含まれます。これらを使って作られる菓子、パン、カップ麺、スーパーやコンビニの弁当、レトルト商品、ジャンクフード、ファストフードなど調理済み加工商品のとり過ぎも、腸内環境に悪影響を及ぼします。
腸のためにも、アルコールは適量を死守!
約20万人の飲酒の習慣を研究した結果によると、日本では飲酒によって大腸がんのリスクが「恐らく確実に高くなる」という結果が出たそう。具体的には、1日にあたりのアルコール摂取量が23g以上の女性のグループは、アルコールをまったく飲まないグループより大腸がんのリスクが1.6倍、結腸がんのリスクが1.7倍、直腸がんのリスクは2.4倍高いという結果に。これらのことから、腸内環境を整え、大腸がんのリスクを抑えるためのひとつの目安が「1日あたりの平均アルコール摂取量=23g以内」と考えられています。
アルコール23gにあたる目安量は、ビール:大瓶1本(633ml)、日本酒:1合(180ml)、焼酎25度:120ml、ワイン:グラス2杯(200ml)、ウィスキー:ダブル1杯(60ml)。この範囲を超えない飲酒量が適量といえます。
抗生物質は腸を荒らす!?
食材とは異なりますが、病気の治療薬として使われる抗生物質も注意が必要。抗生物質を服用し続けると善玉菌が減り、悪玉菌や日和見菌が増加。腸内細菌のバランスを崩してしまいます。それだけでなく、抗生物質に負けない菌が出現することもあり、新たな病気を引き起こす可能性も。
「腸への悪影響を最小限に抑えるために、抗生物質と乳酸菌生産物質を併用することもありますが、抗生物質を不必要に使うと、肝心なときに薬が効かなくなる危険があります。抗生物質をすぐに処方する医師は勉強不足といえるかもしれないので、信頼できる、かかりつけ医を見つけることも、腸のため、健康のためには大事ですね」(大竹先生)
今回、そして前回と、腸にとってのベスト&NG食材を紹介してきましたが、食への意識に変化はありましたか? 次回は、日常生活で迷いがちな腸にいい食材の選び方について、大竹先生にくわしく教えてもらいます。
取材・文/野口美奈子