お酒の飲み過ぎは健康によくないとわかっていますが、適度に飲むのはどうなのかあまりはっきりしないところ。いいのか、悪いのか? このたび適度にお酒を飲んでいた女性がお酒をやめると、メンタルが改善するという研究結果が香港大学の研究グループから報告されました。お酒を飲むときの参考にするとよいかもしれません。
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適度なお酒は大丈夫なの?
厚生労働省の研究班が過去に調べたところ、日本でいわゆる飲み過ぎの人は、男性ではおよそ16%、女性では4%とされています。お酒は飲むと楽しい時間を過ごしたりコミュニケーションが円滑になったりしてよい面がありますが、飲み過ぎると、さまざまな病気につながるとされます。また“お酒は百薬の長”といわれることもあり、適度に飲むと健康によいといわれますが、そのあたりはよくわかっていません。
今回、香港大学の研究グループは一定期間を決めて飲酒習慣(お酒をやめた、飲み始めた、一度も飲んだことがないなど)の変化とメンタルがどのような関係があるかを調べました。
研究グループは、香港で行われている家族を対象にした追跡調査「ファミリーコホート」のデータを使って、18歳以上でお酒を飲まない、または適度に飲む1万386人を調査。適度に飲むというのは、男性ならば週に14杯以下、女性ならば7杯以下としています。メンタルの健康度は国際的な基準によって分析しています。
飲んだことがない人は、メンタルが良好
今回の調査には多くの女性も参加しており、その数は全体のおよそ6割。お酒を飲んでいない人が多く、以前は飲んでいてやめた人も含めて、男性では約6割、女性では約9割でした。
そしてデータを分析した結果、メンタルはお酒を飲んだことのない人のほうが良好だということがかわりました。
中でもメンタルへの効果がよく見られたのは女性で、今回の研究において「適度」な飲酒を楽しんでいた人でも、やめるとメンタルが改善していることがわかったのです。一度も飲んだことがない人と同じくらいのレベルになりました。
研究グループは、同じ分析を米国の「アルコール・関連障害全国疫学調査」という3万1079人のデータでも行ったのですが、結果は同様でした。
こうした結果は、肥満度や喫煙、経済的な条件などにかかわらず一緒。研究グループは、適度な飲酒が生活をよりよくしてくれるとすすめるのは要注意。お酒はやめたほうがメンタルにはいいと結論づけています。
お酒が好きな人には肩身が狭くなるような研究結果ですが、ちょっと参考にしてもよいかもしれません。
<参考文献>
厚生労働省研究班「飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究」2017年度
CMAJ. 2019 Jul 8;191(27):E753-E760. doi: 10.1503/cmaj.181583.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31285378
Quitting alcohol may improve mental well-being, health-related quality of life
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-07/ji-qam070319.php
文/星良孝