朝型の人は、夜型の人よりもほんの少しだけ乳がんになりにくそう──。そんな研究報告がありました。リスクの違いは1%足らず(1000人当たり10人未満)ですが、体内時計が乳がんのリスクに関連しているようです。さらに、睡眠時間が7〜8時間より長いと、乳がんのリスクが上がるという結果も見られました。
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夜型か朝型かが乳がんと関連?
米国国立がん研究所(NCI)の推定では、アメリカ人女性の13%が、一生のどこかの時点で乳がんと診断されるそうです。日本では、女性の9%が診断されるとされます。
過去の研究によると、シフト制の夜間勤務に就いている女性は、乳がんになりやすいと指摘されていて、睡眠パターンが乱れていたり、夜間に光にさらされたりすることが原因になるのではないかと考えられています。しかし、睡眠の習慣と乳がんとの関連性についてはきちんと調べられていませんでした。
このたび欧米を中心にした国際的な研究グループが、遺伝的な朝型か夜型かの違い、睡眠時間、不眠症といった睡眠の問題の有無が、乳がんのリスクに影響を与えるかどうかを分析しています。
研究グループは、遺伝情報を大勢の人から集めている「UKバイオバンク」という大規模な調査の50万人分のデータを活用して、遺伝的に朝型なのか、夜型なのかという違いと、乳がんの関連性について調べました。条件に合った15万6868人(うち乳がんの人7784人)の情報から分析しています。乳がん協会コンソーシアム(BCAC)と呼ばれる組織が持っている22万8951人分のデータも一緒に分析しました。
遺伝的な特徴から因果関係を確認
わかったのは、夜型の人は乳がんのリスクがやや高いということ。UKバイオバンクのデータからの分析で判明したのは、遺伝的に朝型の人は、夜型の人に比べると、乳がんのリスクが5%低くなるということです。同じように乳がんのリスクにつながる肥満や喫煙などと比べると大きいとはいえませんが、統計学的に有意な差がついており見逃せません。
一方の乳がん協会コンソーシアムのデータ分析では、睡眠時間が7〜8時間より長いと乳がんのリスクが19%高まる可能性が見られました。
生まれもった遺伝的な差が、がんのリスクにつながるという因果関係を示していると研究グループは解説。今後は、こうした遺伝的な体内時計による影響をどのようにやわらげられるかが研究の課題になるそう。
自分は夜型と思う方は、少しだけ気をつけておくとよいのかもしれません。
<参考文献>
国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」
BMJ. 2019 Jun 26;365:l2327. doi: 10.1136/bmj.l2327.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31243001
Being a “morning person” linked to lower risk of breast cancer
https://www.bmj.com/company/newsroom/being-a-morning-person-linked-to-lower-risk-of-breast-cancer/
文/星良孝