なかなか寝つけない、夜でも目が冴える、かといって昼間は眠気が残っている。「もともと自分はそういう体質なのでは?」と感じる人もいるのではないでしょうか。たしかに、遺伝的に不眠傾向にある人はいるようで、そうした場合、心臓の健康に意識的に気配りするとよいかもしれません。このたびスウェーデンの研究グループが、不眠は心臓の病気と関係している可能性があると報告しているのです。
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眠りにつけない体質だと体に影響が?
日本人の5人に1人が睡眠を十分にとれていないと示している調査結果があることからも、睡眠をめぐる問題はとても身近なこと。布団に入ってからも眠りにつけない人は珍しくありません。
不眠症に悩んでいる人の中には、遺伝的に決定づけられている体質を持つ人もいることが研究からわかっています。そんな遺伝的な特徴がある場合、心臓の病気や脳卒中の危険性が少し高まることがスウェーデンの研究グループによって、このたび明らかにされました。
研究グループによると、これまでの研究では不眠症の場合、心臓など循環器系の病気の危険性が30%ほど上がる可能性がわかっていました。
そこで研究グループは新たに、心臓に血液を行きわたらせる血管が狭くなって血液がうまく流れなくなる「冠動脈性心疾患」、心臓の動きが悪くなり全身に血液をめぐらせるのが難しくなる「心不全」、さらに、脳の血管が狭くなって詰まりが生じ、血液がうまく流れなくなる「脳卒中」などの循環器系疾患と、不眠との関係について詳しく調べました。分析のために使ったのは、不眠と心臓病、脳卒中についての約130万人分のデータです。
循環器系のリスクにつながる可能性
その結果、わかったのは遺伝的に不眠症の傾向にある人は、冠動脈性心疾患や心不全という心臓病や脳卒中になりやすいということでした。
研究グループは、遺伝的な特徴を左右するDNAの情報と、心臓病や脳卒中の発生との関係を突き合わせて、その関連性について分析。不眠症と関連したDNAの情報を確認できる人は、冠動脈性心疾患のリスクが12%、心不全が19%高いという結果に。さらに、脳卒中についてもリスクが6%高くなるという結果を得たのです。
これまでの研究も踏まえると、不眠症に悩む人は心臓病や脳卒中のリスクが高い可能性もあると研究グループは考えています。
ふだん、なかなか眠れないという人は、意識的に健康診断で血圧などの循環器系の数字に気を配るようにするとよいかもしれません。
<参考文献>
Circulation. 2019 Aug 19. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.119.041830. [Epub ahead of print]
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.041830
Insomnia tied to higher risk of heart disease and stroke
https://newsroom.heart.org/news/insomnia-tied-to-higher-risk-of-heart-disease-and-stroke
厚生労働省e-ヘルスネット「不眠症」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
文/星良孝