味覚の秋。食欲に負けそうになってしまいそうな人も多いのでは? 大好きな食べ物に肉が入る人も少なくないでしょう。ステーキや焼き肉、しゃぶしゃぶのような肉そのものの料理に限らず、肉の食べ方はさまざま。一方、赤身肉の食べ過ぎは健康にとってマイナスともいわれ始めています。このたび米国のグループが、乳がんのことを考えると、鶏肉と置き換えるのがよさそうだと提案しています。
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赤身の肉を食べ過ぎると…
国立がん研究センターの統計によると、日本人女性のがんの中でも最も多いのは乳がん。死亡の原因としても、大腸がんに続く2番目にあります。乳がんのリスクはますます身近な問題になってきています。実際、乳がんになる人は年々増えており、その背景にあるとされる原因のひとつは、洋食化など食習慣の変化だと考えられています。そうした中で、肉を多く食べることが、乳がんと関係している可能性が指摘されるようになっています。
このたび米国の研究グループは、肉と乳がんとの関係に注目して分析を行いました。これらの関係性を指摘する研究が増えていることが背景にあります。研究グループでは、肉の摂取状況の情報を含んでいる研究から4万2012人分のデータを分析。肉の摂取状況と乳がんの発生の間にどのような関係があるかを調べました。対象となったデータの調査期間は平均7.6年で、研究に参加してからの1年以内に浸潤性乳がんと診断されたのは4万2012人のうち1536人でした。
鶏肉だとリスクが15%低下
確認されたのは、赤身の肉を食べる量が多いと、浸潤性乳がんのリスクが1.23倍と、23%上昇していたことです。逆に、鶏肉を食べる量が多いときには、そのリスクは0.85倍とむしろ15%減る結果になっていました。データに基づいて、赤身肉を鶏肉に切り替えていた場合にどれくらい乳がんの危険性が減るかを研究グループは計算。すると、リスクは28%減少するという結果になりました。
こうした結果は、調理の方法のほか、高温で調理したときに発生して発がん性と関係があるとされる「ヘテロサイクリックアミン」、同様に発がんとの関係が疑われることもある「ヘム鉄」とは無関係でした。
これらの結果からは、牛や豚、羊などの赤身肉を多く食べると、乳がんの危険性が高まる可能性があると考えられました。一方、鶏肉はむしろ乳がんのリスクを減らすような結果が出ており、研究グループは赤身肉を鶏肉に置き換えてはと提案しています。2000年に発表された研究でも鶏肉のがんを防ぐ効果が報告されたことがあります。同じ肉でもがんとの関係性は異なる可能性があるようです。
まだわからないところもありますが、ふだんの食事を考えるときには、参考にしてもよいのかもしれません。
<参考文献>
国立がん研究センター「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
Int J Cancer. 2019 Aug 6. doi: 10.1002/ijc.32547. [Epub ahead of print] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31389007
Carcinogenesis. 2000 Apr;21(4):607-15.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10753193
文/星良孝