女性に多く、意外に身近な「鉄欠乏性貧血」。原因となる鉄不足を解消するには、まず食事を見直すことが大切です。毎日の食事で効率よく鉄を補給するポイントを、貧血治療に詳しい濱木珠恵先生にうかがいました。
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女性はみんな鉄が足りない!? まとめてとるより毎日コツコツが大切!
鉄欠乏性貧血は、血液中のヘモグロビンが不足した状態のこと。その原因には栄養成分のひとつ「鉄」不足が挙げられます。
「たとえば、月経のある女性の場合、毎日10.5mgの鉄摂取が推奨されていますが、実際の摂取量はわずか7.5mgとかなり不足しています。月経とともに毎月鉄が失われる女性は基本的にみんな鉄が足りていない状態と考えて日ごろから対策をしましょう」と濱木先生。
「鉄不足で起こる鉄欠乏性貧血の予防・改善の基本は、毎日の食事で鉄を補うこと。もともと鉄は体内で吸収されにくく、一度に大量の鉄をとっても吸収されなかった分は体外に排出されてしまうため、毎日コツコツ効率よく摂取することが大切です。いつもの食事に、鉄を含む食材を積極的にとり入れましょう」とアドバイスします。
貧血解消の味方! 「レバー」で鉄をたっぷりチャージ
鉄には、肉や魚などに含まれる「ヘム鉄」と、海藻や野菜などに含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
「鉄の補給には、より体に吸収されやすい『ヘム鉄』がオススメ。代表的な食品といえば、何といっても『レバー』でしょう。肝臓に蓄えられた貯蔵鉄をそのままいただきますから、たっぷりと鉄がとれます。味が苦手という人は、小さく切って麻婆豆腐に入れたり、カレー粉やしょうがなどの香辛料を使ったりすると食べやすくなりますよ」
「ヘム鉄」はレバーのほかに、赤身の肉、まぐろ、かつお、いわし、あさりなどにも含まれます。一方で、「非ヘム鉄」が豊富なのは、のり、ごま、納豆、厚揚げ、小松菜、ほうれん草など。
「非ヘム鉄は体に吸収されにくいものですが、ヘム鉄と一緒にとったり、梅干しやお酢、レモンなどの酸っぱいものと組み合わせて食べると、吸収がよくなります。さらによく噛んで食べることでも、胃酸が促されて鉄の吸収率が高まります。ただし、お茶に含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げてしまうので、食事中の濃いお茶は控えめに」
ちょっとひと工夫。鍋やフライパンを鉄製に替えてみよう!
食事以外にもちょっとした工夫で鉄の摂取をアップさせることができるそう。それは鉄製の料理器具を使うこと。
「鉄が豊富なメニューの代表格“ひじきの煮物”も、じつは鉄鍋から溶け出した鉄が含まれていた、というのは有名な話。フライパンや鍋などを鉄製のものに替えてみるのも、毎日の鉄補給によさそうです。もっと手軽に活用したい人向けには、お湯を沸かす際に入れるだけで鉄補給ができる“鉄玉子”なども出ていますよ」
大変なときはサプリメントに頼ってもOK!
毎日の食事が基本ですが、「いつもしっかりした料理を作るのが大変」「胃の調子が悪くてたくさん食べられない…」というときもあるかもしれませんね。
食事からの鉄分補給が難しい場合は、プラスアルファでサプリメントを活用するのもひとつの手です。
「酸素を運ぶヘモグロビンは毎日つくられているので、毎日きちんと材料となる鉄がある状態にしておくことが大事。サプリメントを活用するなら、できるだけ毎日、継続してとることがポイントです。ヘモグロビンを含む赤血球の寿命は約4か月あるので、貧血時の小さい赤血球などがすべて入れ替わるまで、最低半年は続けましょう」
次回はFYTTEの「作り置きレシピ」でおなじみの管理栄養士・中井エリカさんに、簡単に作れる貧血対策レシピを教えていただきます!
取材・文/井上幸恵