前回、女性は鉄欠乏性貧血になりやすいことをお伝えしましたが、スポーツをしている人も貧血になりやすい傾向があります。「スポーツする人が貧血?」と思うかもしれませんが、その理由について、濱木珠恵先生に解説していただきました。
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大量の汗が鉄不足を招く!
女性に多い貧血ですが、スポーツをしている人も注意が必要です。その理由のひとつが、大量の汗によって鉄が体外に流れ出てしまうから。
「鉄は汗にも含まれていますが、通常であれば皮膚表面に出るまでの間に体内に再吸収されます。ところがスポーツなどで一気に汗をかくと、再吸収が追いつかず汗と一緒に流出してしまうのです」
さらに、「スポーツによる体への衝撃」と「筋肉量」も影響するそう。
「ランニングやサッカーなど足の裏に衝撃を受けるスポーツをすると、血液中の赤血球が衝撃で破壊され鉄の流出につながります。また、鉄は筋肉にも存在し酸素のとり込みにかかわっているため、筋肉量が多い人はその分、より多くの鉄が必要に。これらのことから運動をする人は、比較的簡単に鉄不足に陥り、“スポーツ貧血”になりやすいのです」
検査ではわからない“隠れ貧血”にも注意!
女性はもちろん、スポーツをする人にも身近な貧血。
でも、「貧血の不調は、何となくやり過ごせてしまうため自覚しにくく、案外見逃されがちです」と濱木先生。そこで、気をつけたいのが“隠れ貧血”です。
「貧血かどうかは一般的な血液検査の『ヘモグロビン値」で確認できますが、たとえヘモグロビン値が正常であっても油断は禁物です 。検査では見つからない“隠れ貧血”の場合もあるからです」
体内にある鉄はヘモグロビンを作る材料になり、一部は「貯蔵鉄」として肝臓に蓄えられています。貯蔵鉄はヘモグロビンに必要な鉄が不足したときに補充用として使われますが、ヘモグロビンを維持するために鉄を供給し続け、貯蔵鉄のほうが先に不足ぎみになっている状態、つまり“隠れ貧血”の人が少なくないそうです。
「鉄は食べ物からとるのが基本ですが、サプリメントを活用して補うのもオススメです。それでもなかなか調子が改善しない場合は、医療機関を受診するとよいでしょう。貧血の不調は自覚しにくく、いつもの疲れと思って放ってしまいがちですが、治療をするとすごくラクになりました!という人が結構います。貧血は対策をすれば治せる不調のひとつなので、ぜひ前向きに改善してくださいね」
次回は貧血に関係する病気についてお伝えします。
取材・文/井上幸恵