これまで鉄欠乏性貧血が女性やスポーツをする人に多いことをお伝えしてきました。疲れやだるさなど貧血の症状を改善するには食事による十分な鉄補給が基本ですが、それでも症状が改善されない場合は、別の病気の可能性や、背後に深刻な病気が隠れていることも…。今回は「貧血かな?」と思ったときに、疑ってみるべき病気についてご紹介します。
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じつはまったくの別物! 間違いやすい「貧血」と「脳貧血」
めまいや立ちくらみが起こると「また貧血か…」などと思いがちですが、似て非なる「脳貧血」が起こっている可能性もあります。
「貧血」は酸素を運ぶ血中ヘモグロビンが不足することで脳が酸欠状態となり、めまいや立ちくらみが起こります。
一方「脳貧血」は別名「起立性低血圧」といい、急に立ち上がったときや、長時間立ちっぱなしのときなどに起こります。
濱木先生は「血圧が一時的に急低下して、十分な血液が送られなくなることで脳が酸欠状態となり、めまいや、目の前が急に暗くなるような立ちくらみが現れます。たとえば、学校の朝礼などでバタンと倒れてしまったり、朝なかなか起きられず学校に行けなかったりする子どもは、脳貧血の可能性があります」と指摘します。
「脳貧血」は自律神経の乱れが原因!?
脳貧血は、もともとの体質のほかに、脱水や、睡眠不足による自律神経の乱れによって、血圧のコントロールが上手くいかなくなることも原因です。
特に涼しくなったからといって水分補給を怠って脱水状態になりやすかったり、夜更かしをして睡眠不足になりやすかったりする秋は、それまで困っていなかった人でも脳貧血のリスクが出てくる季節だといいます。
「予防のためにも、水分と睡眠をしっかりとって、規則正しい生活を心がけましょう。また、めまいや立ちくらみでいちばん危ないのは、倒れて頭を打ったり、けがをしたりすること。立ち上がるときは、なるべくゆっくりした動作を心がけ、もし自覚症状が現れたら、その場にしゃがむ、ものをつかむなどして身の安全を図ってください」
鉄欠乏性貧血が改善しない場合は… 別の病気が隠れているかも
そして、貧血の場合、軽くみて放置しないことも重要です。鉄欠乏性貧血は一般的に、食事によって十分な鉄を摂取することで症状が改善されますが、食事を見直して2~3か月しても改善が見られない場合は、別の病気の出血が原因で鉄不足が起こっている可能性があります。
代表的なものとして次のような疾患が考えられます。
・子宮筋腫や子宮内膜症による月経過多
・胃潰瘍や胃がん、大腸がんによる慢性的な出血
・痔による出血 など
また胃の不調が原因で鉄の吸収率が落ちていることもあり、特にピロリ菌がいる人は鉄の吸収が悪くなることもあるそうです。
貧血かもしれないけれど、なかなか体調がよくならない――。そんなときは、迷わず病院を受診することが大切だと濱木先生。
「健康診断で貧血と診断された人や経過観察となった人はもちろんのこと、貧血と診断されなくても、だるさや疲れが抜けないなどの不調が続く人はそのままにせずまずは食事を見直して自分で対策を始めましょう。それでも改善が見られない場合は貧血以外の起立性低血圧や、婦人科系の病気のこともあるので受診が必要です。ほかにも心配があれば、気負わず内科や貧血外来に相談して、早めの治療につなげましょう」
取材・文/井上幸恵