お酒を飲めるかどうかは体質によるものです。たくさん飲める人がいる一方で、少し飲んだだけでも顔が真っ赤になったり、頭痛がしたりする人も少なくありません。アルコールが苦手という人は、お酒を口にしなければいいはず。ところが、中国の研究グループが、腸内細菌によって、腸の中でアルコールが作られる問題があり得ると報告。注意が必要かもしれません。
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4人に1人が飲酒しなくても肝臓の病気?
中国の研究グループが注目しているのは、肝臓の病気のひとつである「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」と呼ばれる病気です。肝臓が悪くなる原因として、飲酒がよく知られていますが、非アルコール性脂肪肝疾患は、お酒を飲まなくても、肝臓に脂肪がたまってしまう病気。
研究グループによると、世界的に見て成人のうち4人に1人がこの非アルコール性脂肪肝疾患の問題を抱えていると考えられているそう。ところが、原因がよくわかっておらず、関係する要因を突き止める研究が世界で進められています。
そこで研究グループが考えたのは、「腸内細菌がアルコールを作ってしまい、そのせいで肝臓がダメージを受けているのでは」というもの。そうしたアイデアを思いついたのは、自分の腸内でアルコール発酵を引き起こす人の治療に当たったことでした。糖分の多い食品を食べると、アルコールが含まれていなくても酔っ払った状態になり、肝臓がダメージを受けていたのです。最初は酵母によってアルコールが作られているのではと疑ったものの、それは否定され、さらに詳しく検証することになったそうです。
ある細菌が悪さをしている?
その結果、わかったことは、「クレブシエラ・ニューモニエ」という細菌が悪さをしているようだということ。病気の人が持っている細菌が、健康な人よりも4~6倍もアルコールを作り出していることも明らかになりました。
研究では、非アルコール性脂肪肝疾患の43人と、肝臓の健康な48人について腸内細菌を検査。非アルコール性脂肪肝疾患の人の60%が、アルコールを多く作るクレブシエラ・ニューモニエを持っていることを確認しました。健康な人では6%でした。
さらに、動物実験によってこの細菌が悪さをしているかについての検証作業を進めたところ、病気の人からとったクレブシエラ・ニューモニエを与えられたマウスは、脂肪肝を発症して、病気になることが確認されたのです。お酒を飲まなくても、細菌の影響でアルコールが作られ病気になる可能性があると示されたことになります。研究グループは、非アルコール性脂肪肝疾患にはさまざまな原因があると考えられるものの、そのひとつとして細菌の影響がありそうだと指摘します。
まだ、こうしたアルコールを作る細菌が住み着きやすい人とそうではない人との差など不明な点はありますが、思わぬ悪者に今後、さらなる注目が集まりそうです。
まだまだわからないことは多いようですが、飲酒していなくても健康診断などで肝臓の機能に問題が見つかったときには、医療機関に相談することが大事です。
<参考文献>
Alcohol-producing gut bacteria could cause liver damage even in people who don’t drink
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/09/190919142336.htm
Fatty Liver Disease Caused by High-Alcohol-Producing Klebsiella pneumoniae
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413119304474?via%3Dihub