胃のなかに、「ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)」と呼ばれる細菌が感染する人は少なからずいます。胃に炎症を引き起こす原因になり、胃がんの原因になることもわかっており、日本でも除菌治療が大事だとされます。このたび中国の研究グループが、除菌治療によって胃がんの発生が減らせることをあらためて確認しました。検査で胃炎が指摘された人などは考えてみるとよさそうです。
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除菌の効果を追跡調査
ピロリ菌は、日本でも一般的な細菌です。胃のなかに継続的に感染。厚生労働省の資料によると、20代~30代でも10%程度の人が感染、40代~50代になると20~40%が感染しているとみられています。この細菌は胃炎を引き起こし、胃がんの原因になることから除菌治療が進められています。
今回、中国の研究グループは、ピロリ菌の除菌によって胃がんをどれほど減らせるかを調べるため、長期にわたる追跡調査を実施。血液検査からピロリ菌が感染していると考えられた人に2週間の除菌治療を行い、さらにビタミン、またはにんにくのサプリメントを、7年を超える期間にわたって飲んでもらい効果を調べました。対象者はグループ分けされて、薬やサプリメントを飲むグループと飲まないグループの間で比較が行われました。
研究は1995年から始まり、長期にわたって胃がんの発生や胃がんによる死亡と治療との関係について分析。2010年の時点での効果報告では、胃がんの発生が防げることがわかったものの、胃がんによる死亡との関係については不明でした。今回、2017年までのデータを使って新たな結果が報告されました。
ビタミンやにんにくでも減らせた
ここからわかったことは、ピロリ菌の除菌によって胃がんが減少し、さらに胃がんによる死亡も減らせたことです。具体的には、胃がんの発生は52%、胃がんによる死亡は38%減らせるという結果に。さらに、胃がんの死亡を防ぐ効果は、除菌治療ばかりではなく、ビタミンやにんにくのサプリメントを飲んでいる人でも見られました。一方で、胃がん以外のがんの予防効果は見られませんでした。
研究グループは、今回の結果について胃がんの予防法を考えるヒントになると指摘します。もっとも、ビタミンやにんにくまで予防効果があると示された点については、さらに調べる必要がありそうだと説明。除菌治療などのリスクについてもさらに検討が必要であるとつけ加えています。胃がんが多い日本だけに、今回の研究は参考になるのではないでしょうか。ピロリ菌は胃炎を起こすため、胃炎が見つかったときには要注意です。
<参考文献>
厚生労働省審議会資料「ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000167150.pdf
Effects of Helicobacter pylori treatment and vitamin and garlic supplementation on gastric cancer incidence and mortality: follow-up of a randomized intervention trial
https://www.bmj.com/content/366/bmj.l5016
Treating gastric bacteria may be linked to lower risk of developing stomach cancer
https://www.bmj.com/company/newsroom/treating-gastric-bacteria-may-be-linked-to-lower-risk-of-developing-stomach-cancer/