家の中に引きこもりがちだったり、運動から遠ざかったりしていると、ちょっと体力が落ちたなと感じてしまうことも。さらに年を重ね、筋力や活動量が低下して、体が弱くなった状態になると、「フレイル」と呼ばれます。このたびビタミン類などが不足すると、こうした状態になりやすいという研究結果が報告されました。
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アイルランドの追跡調査データを分析
日本老年医学会によると、「フレイル」は英語の「frailty」の訳語。「加齢による身体の衰弱」、つまり生理的な老化とは別に、年をとって体が弱くなり、病気や機能障害になりやすくなった状態をいい、要介護状態の前段階を指します。「虚弱状態」のような意味で、筋力が弱くなり、病気や要介護につながりやすいのです。さらに、年齢にかかわらず、手術やがん治療を受けた人、重い感染症にかかった人などで起こり得ます。回復させるには、適切な栄養や運動が大切だと考えられています。
このたびアイルランドのダブリン大学などによる研究グループが、加齢に関する追跡調査データを使って、フレイルと微量栄養素(ビタミンB12、葉酸、ビタミンD、ルテイン、ゼアキサンチン)との関係を調べました。ビタミンB12と、やはりビタミンB群に属する葉酸は、DNAの修復やエネルギー代謝など体全体の細胞の働きにとって大切。ビタミンDは骨の代謝、筋力、気分の調節に不可欠で、ルテインとゼアキサンチンは、目と脳の健康に重要な抗酸化作用と抗炎症作用をもっています。今回、研究参加者である4068人(50歳以上)を対象に、微量栄養素の体内の量を測り、フレイルの程度との関連性を調べました。
栄養素が足りないほど…
その結果、判明したのは、フレイルだけでなく、フレイルの前段階(症状はまだ出ていないが、フレイルになりそうな状態)の人でもルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンDが体内に少ないということです。フレイルの前段階の人では、ビタミンB12と葉酸も低レベルでした。
さらに、このように不足している微量栄養素の種類が増えるほど、フレイルの程度はひどくなることもわかりました。研究グループは、微量栄養素の不足がフレイルの危険性を知るための指標になるのではないかと考えています。
研究グループによると、フレイルは体が「予備力(ふだんは使われていないが、ストレスがかかったときなどに対応する力)」を失って、ちょっとした病気からも回復しにくくなってしまう状態のことで、早めの対処が大切と考えられています。こうした面からも栄養不足には気をつけるとよいのでしょう。
<参考文献>
J Am Med Dir Assoc. 2019 Aug 7. pii: S1525-8610(19)30497-9. doi: 10.1016/j.jamda.2019.06.011. [Epub ahead of print]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31401047
https://www.jamda.com/article/S1525-8610(19)30497-9/pdf
Low levels of dietary vitamins linked to frailty in older adults
https://www.tcd.ie/news_events/articles/low-levels-of-dietary-vitamins-linked-to-frailty-in-older-adults/
日老医誌 2014;51:497-501.
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf