そろそろインフルエンザの流行が気になる季節。今年は例年にない大流行の予想が出ていますが、対策として真っ先に思いつくのがワクチン接種。でも、なかには「本当に効くの?」「かえって体調が悪くなった」といった声もあるようで…。ワクチンの疑問や誤解について、総合内科専門医で、いりたに内科クリニック院長の入谷栄一先生に解説していただきました。
Contents 目次
ワクチンは重症化を防ぐもの。大流行に備えるべし
例年12月から3月にかけて流行するインフルエンザですが、今年は早くも9月に流行開始の発表がありました。入谷先生によると「これはすごく珍しい」とのこと。
「今年は例年より流行するのが早いので、今から十分に気をつけてください。
インフルエンザワクチンは、体内に接種することでウイルスに対する抗体をつくるものです。発症そのものを完全に防御できませんが、本来の目的は“重症化を予防”すること。インフルエンザが重症化すると肺炎や脳症などが現れて入院したり死亡したりすることがあるからです。なお妊娠中にかかると胎児に影響する場合もあるため、妊娠の可能性がある人や妊娠中の人にもワクチン接種がすすめられています。自分がかかって周囲の人にうつさないためにも、ワクチン接種がまだの人は早めに受けましょう」
「接種してもインフルエンザになった」の真相は…
患者さんのなかには「ワクチンを接種したら、インフルエンザになった」という人もいるそうですが、これについて入谷先生は「そんなことはありません。単なる確率の問題です」と断言します。
「そもそもワクチンは、接種すれば100%かからないというものではありません。インフルエンザワクチンには、成人では発病率を70~80%減少させる効果と、重症化を抑える効果が認められています」。なかには抗体がつくられたためか、インフルエンザにかかっても発熱しない人もいるといい、「ワクチンを打ったのにインフルエンになった」ではなく、「接種したおかげで重症化せずに済んだ」が正解のようです。
知っておきたい、ワクチン接種を受ける際の注意点
「ワクチンは打ったほうがいいですか?」という質問に対する入谷先生の答えは、「人それぞれだけど、多くの医療関係者は打っているよ」というもの。ただ、なかには接種後に具合が悪くなる人もいるので注意が必要です。
「体質によっては、ワクチンを打つと、免疫が働いて抗体をつくる際に局所的なはれや赤み、微熱が出ることがありますが、数日間でおさまるので基本的に心配いりません。また当日の体調によっては具合が悪くなる人もいるので、なるべく体調を万全に整えて受けるようにしましょう。ただ毎年、接種するたびに具合が悪くなるようであれば無理にはおすすめしません。接種後や当日の体調などで心配がある人は、接種する前に医師に相談してください」
ワクチン接種をしても油断は禁物。手洗い・うがいを忘れずに
インフルエンザウイルスは変異しやすく、毎年流行するA型だけでも144種類。流行する型は毎年変わるので、毎年、流行しそうな4つの型を予測してワクチン(4価)がつくられています。
「ワクチンを打っていたとしても、この予測がはずれ、ウイルスが大量に飛散したり、免疫力が落ちているときにウイルスに接したりすれば、発病しやすくなります。いずれにしても接種したからと安心せず、日頃からこまめな手洗い・うがいをし、免疫力を下げないよう睡眠と栄養をしっかりとることも心がけましょう」
取材・文/井上幸恵