年末年始は、忘年会や新年会などお酒を飲む機会が多くなります。つい飲み過ぎて、二日酔いになったり、「あんなことを言わなければ」「こんなことをしなければ」と後悔したりしないように、大人の女性として、上手にお酒とつき合っていきたいものです。『酒好き医師が教える薬になるお酒の飲み方』(日本文芸社)の著書を持つ秋津医院院長・秋津壽男先生に、お酒の飲み方について、ご指南いただきました。
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お酒を飲んだとき、人の脳はマヒしている
「どうして、あんなことを言ってしまったんだろう」と、お酒の席での発言を悔やんだことはありませんか。しらふなら絶対に言わないことを言ったり、自分でも理解不能な行動をしてしまったりすること、ありますよね。お酒を飲んで、酔っているとき、私たちには何が起こっているのでしょうか。
「お酒に含まれるエチルアルコールの作用によって、脳が軽くマヒした状態になっています。ふだん理性で押さえ込んでいる本能や感情の働きが活発になり、抑圧がとれるため、言いたいことも言えるようになるというわけです」
軽く酔っているときは、ストレス発散ができて、幸せな気分にもなれそうですね。では、一定のラインを超えると――?
「耳や目、舌、体の反射速度もマヒして、感覚が鈍くなってきます。酔うと話し声が大きくなるのは、耳が聞こえにくくなるためです。記憶力が低下するので、何度も同じ話をしたりもします」
さらに飲み続けると、「楽しい」「気持ちいい」から一転、本能が暴走して、レッドゾーンに突入です。
「怒鳴る、泣き出す、グチる、ケンカになるといった、“感情失禁”が起こります。俗に言う酒グセが悪い人は、じつは、ふだん押さえ込んでいる本性が、お酒の効果で前面に出てきただけで、もともと、そういう性格なのだともいえますね」
帰り道の記憶がなくても、なぜ帰宅できているのか?
酔っ払うと、「昨晩の記憶がない!」なんてことも起こります。帰途についた記憶がないのに、ちゃんと自宅に戻って眠っていてびっくり、という経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか。
「ある程度、ルーチンでやっていることは、酔っ払っていてもできるものです。たとえば、考えごとをしながら、家の最寄り駅から帰宅できるとのと同じです。ですから、飲み会の場所が初めて訪れる場所であったりすると、そうはいかないかもしれません。もっとも、帰り道の途中でパニックになることで、酔いが覚めるでしょう。逆にいえば、帰宅途中の記憶がないのは、無事に家に帰り着いたから、といえるかもしれません」
「ケンカしたことを覚えていない」など、思い出したら恥ずかしいことは、あえて忘れようと脳が処理している可能性もあるそうです。
楽しい気分から理性崩壊への分岐点
日本では、お酒の席で起こったことには寛容な雰囲気がありますが、やはり大人になったら、お酒はスマートに飲みたいですよね。お酒で失敗しないために、次の酒量を目安にしましょう。
●お酒を飲んで、楽しい気分になる「爽快期」
アルコール20g
ビール500ml、またはワイン180ml、または日本酒1合
●テンションが上がるも、理性が失われつつある「ほろ酔い期」
アルコール50g
ビール1000ml、またはワイン360ml、または日本酒2合
ビールでいうと、理性崩壊の分岐点は、大びん2本です。ただし、個人によって、お酒の適量は異なります。これまでの経験から、「ここまでなら大丈夫」という目安を知っておくことも大事です。
取材・文/海老根祐子