朝の通勤時や屋外でのアクティビティ時などに浴びる太陽の光、スマホやパソコンから発せられるブルーライト、夜道ですれ違う車のまぶしいヘッドライトなど、知らず知らずのうちに“光のストレス”にさらされている私たち。それは、目だけでなく、私たちの体にまで影響を与えているそう。光のストレスから私たちを解放すべく、今「調光」という概念が新たなスタンダードになろうとしています。
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日常には「光のノイズ」があふれている
ジョンソン・エンド・ ジョンソン株式会社が、15〜49歳の視力補正が必要な日本人男女641人に対して行った調査の結果、じつに98%もの人たちが、日常生活の中でまぶしい不快な光、つまり“光によるストレス”を感じていることが判明しました。
北里大学 医療衛生学部視覚機能療法学教授の半田知也先生によると、日常には人が不快と感じる3つの「光ノイズ」が存在するそうで、ひとつ目はBlur(ブラー)、いわゆるボケのことで、これは視力補正で解決できる要素とのこと。2つ目のノイズはGlare(グレア)で、これは夜間の車のヘッドライトのように、光がにじんで見える状態を指すそう。そして3つ目のノイズが、まぶしさ。このうちグレアとまぶしさは、私たちにとって単に不快感を与えるだけでなく「対象物がくっきりはっきり見えるかどうか」を意味する「コントラスト感度」を下げる要因ともなるそう。コントラストが低く見えづらい状態だと、私たちはよく見ようとして無意識に姿勢をくずしたり、目をこすったり、まばたきをくり返したり、さらに強い度数のレンズに変えたり…という行動をとってしまい、それは体にとっても負担につながると言うのです。
体の負担も軽減? 光のマネジメント「調光」とは
矯正レンズでは解決することができないという2種類の光のノイズ。サングラスなどによる「遮光」や、特定の角度の波長の光をカットする「偏光」によって解決できるものの、どちらも日常生活の中で使用するには、シーンに応じてつけ替えをする必要があるというデメリットがあります。
こういった従来の常識と問題を覆すのが、「調光」という、いわば光のマネジメント。レンズが光(紫外線量)によって自動的に色を変えることによって、まぶしさのような光のノイズは抑え、必要な光は残して明るさをキープすることができるため、1枚のレンズでさまざまなシーンに対応し、見えやすさだけでなく体への負担を軽減する効果も期待できると言います。
「見やすさ」は姿勢や表情にもつながるから
まぶしさや見えにくさを感じていると、目だけでなく体も疲れる、頭痛や肩こりにつながるなど、光のノイズによる視界のストレスが私たちにとってよくない影響を与えていると実感するシーンは多々あると思います。
コンタクトレンズに「調光」の機能を備えるのはとても難しく、Transitions Optical社とジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ビジョンケア カンパニーによる、世界初の調光コンタクトレンズ「アキュビュー®︎ オアシス®︎ トランジションズ スマート調光™」の共同開発には10年以上の歳月を要したそうですが、きっとこれからは調光レンズによる光のマネジメントが少しずつアイウェアの新しいスタンダードになっていく予感。見えづらさを感じると、姿勢を崩したり目を細めたりしがちだということは、逆に言えば「見やすさ」は美しい姿勢や表情にもつながるということ。生活はもちろん、美と健康に直結するものとして、「見やすさ」の追求はとても価値のあるものと言えそうです。
まぶしい光や不快な光をコントロールすることで、いつでもストレスフリーな「見やすい」視界が目の前に広がる。それがコンタクトレンズを装着するだけで実現できたなら、それはもう目の前の世界が変わるといってもいいのかもしれません。日々の生活の中で“光のストレス”に思い当たったら、調光レンズという選択肢をプラスしてみてはいかがでしょうか。
文/野田美香