日本を含め世界中で最も多い女性のがんである「乳がん」。検診や予防に関して数多くの研究が行われ、食べものについても研究が進んでいます。このたび「野菜、果物、大豆」をたくさん食べていると乳がんのリスクが下がるという報告がありました。ひとつの食品の効能だけでなく、食事全体のバランスにも目を向けるとよさそうです。
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どんな食品を多く食べるかが影響
女性のがんでは、日本を含め世界的に最も多い乳がん。2012年のデータによると、世界で新たに診断された人は167万人に上りました。
乳がんを引き起こす要因として、遺伝、環境、食事が影響すると考えられています。なかでも食事は、乳がんに限らずあらゆるがんの要素として30〜35%を占めるという研究結果も。最近ではひとつの食品に限らず、食事全体の構成についても研究が進められています。
乳がんについては、野菜、果物、豆類を多く含む食事に予防効果があるという研究結果が数多く出ています。豆類のなかでは特に大豆が代表的。しかし、野菜、果物、大豆が多い食事といっても民族や地域によって違いがあることから、これまで乳がんとの関連性が一致していませんでした。そこで、今回、中国の徐州医科大学の研究グループが過去の研究をまとめて分析してみました。
さまざまな栄養素が相互作用する食事パターンとは
欧州、アジア、北米などの大規模な追跡研究(それぞれの参加者1万人〜9万人以上)12件をまとめて分析してわかったのは、野菜、果物、大豆(食品)の多い食事をとっていると、乳がんになりにくいということ。これらの食品群には、ファイトケミカル、食物繊維、ビタミン、大豆イソフラボンなど、それぞれが乳がんへの効果が報告されている栄養素を含むことが大きいものと考えられました。
私たちはふだん、さまざまな食品を食べています。それぞれの栄養素が単独で効果を発揮するというよりは、複雑に相互作用しているという考え方が注目されるようになっています。今回の研究では、ひとつの食品というよりも、有効な成分を多く含む食品群をたくさん食べる「食事パターン」で効果が見られたことに意味があります。研究グループは、比較試験でさらに明らかにする必要があると指摘しつつも、「野菜、果物、大豆(食品)をたくさんとると乳がんの予防になるのではないか」と結論しています。
<参考文献>
J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2019;65(5):375-382. doi: 10.3177/jnsv.65.375.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31666473