風邪やインフルエンザの予防のポイントは、手洗い・うがいなどで「ウイルスを遠ざける」ことと「免疫力」を保つこと。特に体内に侵入してしまったウイルスを退治してくれる免疫力は、いわば発症を防ぐ最後の砦。そこで、すぐに実践できる免疫力を味方につける方法について、総合内科専門医で、いりたに内科クリニック院長の入谷栄一先生にうかがいました。
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大切なのは「免疫力をニュートラルに保つ」こと
“免疫力アップ”という言葉をよく耳にしますが、「そもそも免疫力は上げればいいというものではありません」と入谷先生は指摘します。
「免疫力は常に同じではなく、人それぞれ上下に波を描きながら変動しています。この波が低くなりすぎると風邪やインフルエンザ、がんなどにかかりやすく、逆に暴走して高まりすぎると過剰反応して、リウマチや膠原病などの自己免疫疾患につながります。風邪・インフルエンザを予防するには、うがい、手洗いなどのケアもさることながら、いかに免疫力を落とさないかも大事。免疫力が低下した場合は、免疫力を上げてニュートラルな状態に戻すことが必要です」
免疫力を保つ3つの秘訣
免疫力の低下を防いで、ニュートラルな状態を保つポイントについて、入谷先生は「“休養”“運動”“食事”をバランスよく行うこと」とアドバイスします。
しっかり睡眠をとる
「睡眠中には、免疫の働きをよくする成長ホルモンが分泌されるため、質のよい睡眠をとることは不可欠です」
睡眠時間が少ないほど風邪をひく可能性が高まることがわかっており、睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上の人より約3倍かぜをひきやすい、という研究報告もあります。
よい睡眠をとるには、入眠前の過ごし方もポイント。
「寝る前に何か飲みたいなら、牛乳で煮出したカモミールティーがオススメ。体が温まり、リラックス作用で心地よい眠りにつけます。ベッドの上での軽いストレッチもよいでしょう。逆に、寝る直前までのスマホは安眠を妨げるので厳禁です」
運動や入浴で体温を上げ、血流をよくする
免疫細胞が活発に働くのは、体温が約37℃のとき。冬の寒さによる冷えや運動不足で血流が悪くなると、免疫力が低下します。
「まずは、適度な運動をして血液の流れを促しましょう。ウォーキングなど汗ばむ程度の運動を週5日以上行うのが理想です。筋肉が多いほど体温が上がるので、筋肉をつけることも必要。ただし、疲労を伴う突然の激しい運動はかえって免疫力を下げるので避け、継続的に運動をしながら、少しずつレベルアップしていきましょう」
また、39℃のぬるめのお風呂にゆっくり浸かって、体を温めるのもよいそう。
「湯温については41℃で急激に交感神経が高まり、39℃でもっとも副交感神経が優位になるデータがあります。リラックスできる湯温には個人差がありますが、「39℃」を目安に入浴するとよいでしょう。湯船のなかでストレッチやリンパマッサージ、ツボ押しなどをすると、より血流がアップします。ただし、41℃以上の熱い湯に長く浸かると交感神経が優位に働き、免疫力の低下につながる可能性があるので気をつけましょう」
腸内環境を整える。野菜はレインボーフーズを!
免疫細胞の約7割は、病原体が侵入しやすい「腸」に集まっているといわれます。そのため免疫の働きを保つには、腸内環境を整えることも大切です。
食事の基本は、いろいろな食材からまんべんなく栄養をとること。そのうえで、善玉菌である乳酸菌や、野菜を継続的にとるのがオススメです。特に野菜は色に注目するとよいそう。
「免疫力のバランスを整える働きをもつ“フィトケミカル(植物性化学物質)”に由来するので、赤・緑・黄・白・紫・茶・黒の7色の“レインボーフーズ”を意識してとるようにしましょう。食べものには即効性があり、1週間ほどとり続けると体調が変わってくるはずですから、ぜひ試してみてください」
取材・文/井上幸恵