年末年始は、忘年会や新年会などお酒を飲む機会が多くなります。一方、風邪などの感染症も流行る季節。お酒を飲んでしまったけれど薬を飲んでも大丈夫?など、気になることがありますよね。こんな時期だからこそ解決しておきたいお酒にまつわる疑問や不安を、『酒好き医師が教える薬になるお酒の飲み方』(日本文芸社)の著書をもつ秋津医院院長・秋津壽男先生に、ご回答いただきました。
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お酒を飲んだら、やってはいけないことがある?
Q.お酒を飲んだら、お風呂に入ってはいけない?
A.日々の晩酌量なら問題ありません。たくさん飲んだとき、かなり酩酊したときには避けましょう。酔っぱらって入浴すると、ふらつきから転倒、外傷になったり、急に血圧が下がって倒れたりする危険があります。
湯船につかって汗をかいて抜けるのは、水分だけです。アルコールは抜けません。アルコールの利尿作用で、尿として水分が排せつされるうえに、さらに汗をかくと、脱水状態になります。すると血が濃くなって、血管が詰まりやすくなってしまいます。心筋梗塞や脳梗塞のリスクになるため、たくさん飲んだあとの入浴やサウナは控えたほうがいいです。どうしても、お風呂に入りたいときは、シャワーでさっとすませるようにしましょう。
Q.お酒を飲んでいるけど、風邪薬や頭痛薬を飲んではダメ?
A.ダメです。薬を飲んで、お酒を飲むのもダメです。経口薬は、水で溶けて、胃から吸収されます。薬ごとに、水に溶けて吸収されるまでの時間は研究によってわかっており、飲む量や時間が決められています。ところが胃の中で、薬とお酒が混ざると、お酒の影響で薬が早く体内に吸収されてしまいます。本来、ゆっくりと時間をかけて吸収されるはずが、たとえば30分ぐらいで急速に体に回ってしまい、薬の効果が強く現れてしまうことがあるのです。また、お酒も薬も肝臓で分解されるため、肝臓での処理が追いつかず、薬の影響が長く体内にとどまってしまうこともあります。ただし、薬を飲んだのが朝であれば、夜にお酒を飲んでも大丈夫です。
Q.眠れない夜は、お酒を飲むといい?
A.これはNGです。なぜなら、お酒には入眠効果と覚醒効果の両面があるからです。お酒を飲むと、軽く脳がマヒするせいで、1時間ぐらいたつと眠気が起こります。寝つきがよくなるからと、寝る前にお酒を飲む人もいるかもしれません。しかし、たとえスムーズに入眠できたとしても、飲酒後、3時間も経つと、今度は覚醒効果のほうが前面に出てきて、夜中に目が覚めてしまいます。また、アルコールの影響で、深い睡眠も得にくくなるといわれています。睡眠でしっかり休養をとるためにも、寝酒はおすすめできません。
Q.年をとってお酒が弱くなった!? これって気のせい?
A.年齢とともに体の機能は衰えてきます。肝臓も同じです。アルコールを分解して、処理する機能も衰えてくるため、若い頃と同じ量を飲んでも、悪酔いしたり、二日酔いになったりすることも。年齢に合った飲み方を覚えていきましょう。
毎晩、飲まずにいられない人の不安に、ズバリ回答
1日の終わりにビールやワインが欠かせない、という女性も少なくありません。毎日飲まずにはいられない、こんな不安にも答えていただきました。
Q.毎晩、飲まずにいられない。これって依存症?
A.たとえば、疲れを癒やしたり、ストレスを発散するために晩酌が欠かせなかったとしても、それは毎日の儀式になっているだけといえるでしょう。また、晩酌で妻が夫の倍量を飲んでいたとしても、単なる「アルコールに強い女性」であって、アルコール依存症とは違います。
かつては、女性が日常的にお酒を飲む習慣がなく、お酒の味を覚えた女性が、家族に隠れて、こっそりキッチンで飲むという「キッチンドランカー」が増え、問題視された時代がありました。そこで、女性はアルコール依存書になりやすいともいわれましたが、現代では、お酒の飲み方を知っている女性も多くいます。女性だからといって、アルコール依存症になりやすいとはいえないでしょう。
しかし、女性に限ったことではありませんが、会社の昼休みに、トイレでこっそり缶チューハイを飲むなど、間違ったシチュエーションで、間違った飲み方をするような飲酒習慣には注意が必要です。
女性は男性より肝臓でのアルコールの処理能力が低いのは事実。自分の適量を知って、自分に合った量を飲むことも大切です。
取材・文/海老根祐子