乳がんは日本でも大きな問題。乳がんが増える理由には食の欧米化が関係しているとされ、脂肪の摂取が増える一方で、食物繊維の摂取が減っているなどの影響が指摘されています。こうしたなか米国の研究グループが、乳がんの細胞が脂肪を積極的にとり込みエネルギー源にしていると報告。乳がんを防ぐための食生活を考えるヒントになるかもしれません。
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乳がんが増えている理由は?
日本の女性がかかるがんで最も多いのが乳がん。さらに、死亡原因になるがんとしても、大腸がん、肺がん、膵臓がん、胃がんに次いで5位となっています。乳がんは増えており、その理由としては食の欧米化があると考えられています。たんぱく質や脂肪を多く摂取して、食物繊維の摂取が減っているなどの変化が、乳がんの発生に何らかの関係を及ぼしているのではないかと考えられているのです。
これまでの研究では、血液に流れている脂肪が乳がんのがん細胞を増やしている可能性があると報告されています。そして、このたび新たに米国の研究グループが顕微鏡などを駆使した研究から、乳がんのがん細胞が脂肪をエネルギー源にしてとり入れている証拠を発見。「予想外のメカニズム」として報告しています。
乳がん細胞が脂肪をとり込むと…
実際に映像で確認できたのは、がん細胞が脂肪を食べるように表面から脂肪をとり入れ、そのうえで増殖のためのエネルギー源として脂肪を使っている事実でした。
研究グループは、今回の研究結果から、食品からとり入れた脂肪が乳がんのがん細胞に利用されることで、がんの増殖につながってしまう可能性を指摘。単にがん細胞が脂肪をエネルギー源にしているばかりではなく、がん細胞が脂肪を積極的にとり入れていることが確認されたのが大きいといえます。研究グループは、細胞が細胞外の物質をとり込む「エンドサイトーシス」という仕組みによってがん細胞が脂肪をとり込むという、予想外のメカニズムがあったと解説しています。
研究グループは、脂肪の多い食事や肥満になると乳がんの危険性が高まると説明。食べものからとる脂肪分は血液にとり込まれており、ダイレクトに乳がんのがん細胞の“エサ”になっているとしたら怖いこと。まさに、脂肪は女性の大敵に。脂肪分の多い食事をよく食べるという人は注意するとよいのかもしれません。
<参考文献>
Breast Cancer Cells Swallow a “Free Lunch” of Dietary Fat Particles from the Bloodstream
https://geiselmed.dartmouth.edu/news/2019/breast-cancer-cells-swallow-a-free-lunch-of-dietary-fat-particles-from-the-bloodstream/
J Lipid Res. 2019 Dec 5. pii: jlr.RA119000327. doi: 10.1194/jlr.RA119000327. [Epub ahead of print] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31806729
国立がん研究センター「がん情報サービス 最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html