「オーガニックフード(有機栽培の食品)」は、ヘルシーなイメージがありますが、実際のところどうなのでしょう。過去には農薬とがんの関連性を示す研究結果が報告されたことも。たしかに、農薬が残留しているような食品は避けたいもの。このたび有機栽培の農作物を食べている人は乳がんになりにくいようだとの報告がありました。
Contents 目次
4万人近くのデータを分析
農林水産省の推計によると、2017年の日本のオーガニックフード(有機食品)の市場規模は1850億円と推計されており、前回推計された2009年と比べると1.5倍近くに伸びています。とはいえ、「ほとんどすべて有機食品を購入」している人の割合は1.68%。まだまだ一般的とはいえない状況かもしれません。
このたび研究グループは、米国国立環境衛生科学研究所(NIEHS)の研究データを分析し、オーガニックフードを乳がんとの関係について分析しました。乳がんになった女性の姉妹5万人以上(自分は乳がんではない)を追跡調査したもので、ここから乳がんになりやすい要素が何かを調べています。
研究グループは、オーガニックフードを食べているかどうかについて答えた3万9563人のデータを解析。過去12か月間に有機栽培の野菜、有機製法による肉、乳製品をそれぞれ「いちども食べていない」、食べた期間が12か月間の「半分未満」「およそ半分」「半分以上」の4パターンに分けて、乳がんとの関連があるかを調べました。研究開始時点で約62%がいずれかのオーガニックフードを食べていて、1年以内に乳がんになった人は2336人でした。
有機製法の肉と乳製品は関連せず
分析の結果、判明したのは、いずれかのオーガニックフードを食べていた人は、研究開始から1年以内に乳がんになるリスクが13%低いということ。乳がんはホルモンなどへの反応しやすさから複数のタイプに分類されますが、なかでも「エストロゲン受容体陰性」タイプの乳がんは23%低い結果となりました。
有機栽培の農作物を「およそ半分」か「半分以上」の期間にわたり食べていた人は、乳がんになるリスクが13%低くなりましたが、有機製法による肉と乳製品では、この傾向は見られませんでした。肥満やライフスタイル、家族歴などを考慮しても、その結果は変わりませんでした。
こうした結果から研究グループは、乳がんのリスクを下げたのはオーガニックフードと関連した何らか別の要素が存在している可能性はあるものの、「オーガニックフードの農作物を食べていると乳がんのリスクが低下すると思われる」と結論づけています。
今回の結果からいえば、食べるべきはオーガニックフードのなかでも野菜や果物などの農作物がよいと考えられます。ふだんの食生活を考えるときのヒントにするとよいかもしれません。
<参考文献>
農林水産省「有機農業をめぐる我が国の現状について」
https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2019/attach/pdf/190726_01.pdf
Association Between Organic Food Consumption and Breast Cancer Risk: Findings from the Sister Study
https://academic.oup.com/cdn/article/3/Supplement_1/nzz039.P18-038-19/5517295