中国では、旅行先の日本で化粧品を爆買いする、というのがここ数年定番でした。しかし、新型コロナウイルスの影響により、なかなか海外への渡航ができなくなってしまったため、中国国内では、国産コスメのニーズが高まったり、中華メイクに注目が集まったりしています。特に「古代歴史」がブームになり、それらのメイクやコスプレが流行っているのです。
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国産コスメのブームの始まりと言われているのが、北京にある「紫禁城(しきんじょう)」が発売した口紅です。紫禁城は、明清朝の旧王宮である歴史的建造物で、「北京と瀋陽の明・清王朝皇宮」のひとつとしてユネスコの世界遺産に登録されています。
この口紅は、2018年のネットショッピングの大セールに合わせて発売され、カラーは「丹頂鶴(たんちょうづる)」と「郎窯紅(ろうがまべに:清代の赤い陶器)」の2色。4日間で10万本を売り上げたという伝説の商品。
その後、カラーバリエーションを増やしたほか、また、李白(りはく)の詩を刻んだものや2020年に紫禁城完成600年を記念した限定版などを販売。また、ケースには、皇后や宮廷の女性たちが暮らした王宮の部屋に実在する織物や壁掛け、衣服の図柄を3Dプリンター技術で再現した画像をあしらい、持っているだけで気分が上がりそうな豪華なデザインも人気の理由です。
口紅のほかに、アイシャドウパレットやハイライトパウダーも発売されています。
また、北京にある歴代皇帝と妃たちのための避暑庭園「頤和園(いわえん)」からも、同様にメイクアップアイテムを展開。こちらも古典芸術のおもむきで、西太后が好んだとされる、庭園内に多く見られる装飾「鳳凰」がプリントされています。
これらの歴史をモチーフにしたアイテムがヒットした背景には、「古代歴史」ブームがあります。特に中国の若者の間で流行っています。
日本のテレビでも放映されていますが、明や清の時代を舞台にした宮廷ロマンスや人間模様を描いたドラマや映画が大人気! 通勤途中の地下鉄やバスでも、タブレットやスマホなどを使って夢中になって見入っている人をよく見かけます。
また、漢民族の伝統的な衣装を着たエレガントな女優たちに憧れて、北京にある紫禁城や蘇州の水郷、上海などの歴史的遺産へ宮廷衣装のコスプレで訪れ、思い思いのポーズをとって記念写真を撮り、SNSにアップするのが今トレンドとなっています。
じつは、以前は「メイクは肌にあまりよくない」という誤解が一部であった中国。2014年の統計によると化粧品の年間個人消費額はわずか約2500円でした。
しかし、古典ブームとともに赤味の強い口紅やアイシャドウが今や売れる時代になりました。
“アジアン・ビューティ”に注力している中国の若者を中心に、次はどのようなトレンドを生み出すのか目が離せません!
写真・文/伊勢本ゆかり