ロボットや人工知能(AI)、デジタル技術が仕事を肩代わりする時代になりつつあります。ニュースでは便利な世のなかというものの、それで憂うつになる人もいるよう。海外の研究では、人工知能などで仕事が置き換わっていくと便利なのに、不幸せになる人が出てくる理由を調査。126もの職業について分析しています。
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6割の仕事は自動化される?
AIに代表される最新の情報技術(IT)が導入されると、将来さまざまな仕事が肩代わりされるともされます。特に大きく減るといわれるのが単純作業とのこと。一定のパターンがある仕事はAIに置き換えやすいといいます。研究によると、世界的な仕事のうち最大60%が影響を受けるとも。単純作業は退屈にも見えますから、そうした仕事が減るのはいいことのように思えますが、そう単純ではないようなのです。
今回、フィンランドの研究グループは、仕事の内容が変わっていった場合の影響について詳しく調べています。126種類の職業について自動化されやすいかどうか、自動化されるとしたらどのような影響が現れるのかを検討。仕事が変わったときに、もともとその仕事に取り組んできた人の価値観にどのような影響が及ぶのかに注目しました。
やる気の低下につながる?
こうして見えてきたのは、退屈とも思える、単純作業に合った価値観をもつ人が仕事を奪われる問題です。新しい仕事に変わらざるを得ないのですが、そこには価値観のズレがどうしても出てきてしまい、それがもとでストレスになりそうだというのです。
具体的には、単純労働や決まったパターンの仕事は、「安心感」や「協調性」「権力」といった価値観に合った人に向いた仕事だといいます。一方で、自動化されにくい仕事は「自主性」や「刺激」「達成感」などの価値観に合った人に向いた仕事になります。結果として、単純労働に取り組んでいた人が、たいていは創造的で非定期的な自動化されにくい仕事に就くことになると、働く意義や価値観が揺さぶられる可能性が高いというのです。それは、やる気をそいでしまい、仕事の満足感を落とす結果につながると研究グループは指摘しています。憂うつのもとになるならば、早めに手を打っておく必要があるのかもしれません。
<参考文献>
Will we enjoy our work more once routine tasks are automated? – Not necessarily, suggests a recent study
https://www.abo.fi/en/news/will-we-enjoy-our-work-more-once-routine-tasks-are-automated-not-necessarily-suggests-a-recent-study/
Johnny Långstedt (2021) How will our Values Fit Future Work? An Empirical Exploration of Basic Values and Susceptibility to Automation, Labour & Industry: a journal of the social and economic relations of work, DOI: 10.1080/10301763.2021.1886624
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10301763.2021.1886624