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幸福学が導き出した、幸せになるための4つの因子とは?
「やってみよう!」因子
・得意なことがあり、それを伸ばそうと努力をして強みをさらに高める人
・好きなことがあり、それを突き詰めようと打ち込んでいる人
「なんとかなる!」因子
・考えすぎず踏ん切りよく決断できる人
・失敗しても気持ちを切り替え立ち直るのが早い人
・肝がすわっていて度胸のある人
「ありがとう!」因子
・人を喜ばせたいと思う人
・困っている人を支援したいと思う人
・他者とのあたたかい付き合いに感謝している人
「ありのままに!」因子
・地位財形型の競争を好まない人
・自己像が明確な人
・他者への許容度が広い人
元木:『ニコイチ幸福学』では、幸せになるための4つの因子を明らかにしています。
前野:「ありがとう!」の気持ちはとてもシンプルなことですが、忘れている方は案外多いですね。先日もずっと夫婦仲が悪いという女性に関係修復の相談を受けたので、「感謝を10倍しましょう」とアドバイスしました。その後「夫との関係が劇的によくなりました」というメールが届きました。日常の小さなことでも相手に「ありがとう」と感謝をしたところ、パートナーも感謝をするようになって、出会った頃のように、ふたりの仲が良くなったそうです。
マドカ:悪いところに目がいくのをグッと抑えて、良いところに目を向けるようにすると、夫婦の関係はすごく変わっていきますね。
元木:「やってみよう!」はどうしたらいいですか?
前野:ふたりで同じやりがいを持ち、同じゴールを目指すことですね。目標は趣味でも、家事でも仕事でもいいと思います。相手の努力や頑張りは自分にとってのモチベーションになります。
マドカ:何事もやらされて生きていくのは大変じゃないですか。気持ちを切り替えてワクワクして取り組むことで、自分もまわりもハッピーに変わっていけると思います。
元木:「なんとかなる!」はよくわかります。私にもその因子があるからかもしれません。
前野:前向きで楽観的であることは、幸せになるために大事なことです。どんなにつらいことでも死ぬことに比べればどうってことないですから。くよくよ悩む時間が少ないぶん、楽しい時間が長く、幸せでいられます。
元木:自分らしく「ありのままに!」。こう生きていければ幸せですよね。
前野:人と自分を比べてしまうと幸福度が落ちるんです。ありのままで生きている自分を受け入れられる人は、自然に他者を受け入れることができるので、イライラすることも少なく、ストレスもたまりにくいですね。
マドカ:多くの悩みは、誰かと比べることで生まれると思いますね。自分の良さを肯定して、大丈夫といいきかせることで、仕事や勉強に自信がもてるようになります。
『幸福の達人 科学的に自分を幸せにする行動リスト50』(ユーキャン)
Twitterフォロワー130万人を超えるインフルエンサーTestosteroneが、科学、心理学、行動経済学などの110本以上の研究論文をもとに「これさえやれば幸せになる」というアクションを50の「TO DOリスト」にまとめた1冊。前野隆司さんが監修を務めています。
幸せになるための行動もあります
元木:前野先生が監修された『幸福の達人』も拝読しました。この中にあるチェックテストを試したところ29点。結果をみると「幸福の上級者」でした。
マドカ:忍さんは4因子が全部ありますから(笑)。幸せですよ。
元木:ほめていただいてありがとうございます(笑)。この本の中で、日本では年収660万円以上になると幸せ度は上がらないという箇所が気になったのですが、これは本当なんですか?
前野:金額は国によって違いますが、統計として、日本では600万円台の収入があれば衣食住がある程度満たされ幸福度も高い傾向があります。収入がアップするに越したことはありませんが、金銭面より、核家族化で失われてしまった、村社会にある周囲や近所とのつながりを取り戻した方が、幸福度は上がっていくと思います。
元木:『幸福の達人』では、「なんでもない日常を味わう」というアクションもささりました。私はすでに毎日の日常で幸せを感じていて、夕食に何をつくろうかと考えるだけでワクワクします(笑)。
マドカ:非日常の特別な体験ではなく 住んでいる家で幸福を感じられるというのは最強の幸せです。違う視点から見ることで、なんでもおもしろがれるというのも、幸せのエッセンスなんです。
元木:『幸福の達人』の幸せになる行動の中で、一つだけ難しいなと思ったのは「許す」という行為ですね。些細なことであれば許せますけど、人生ではどうしても許せないことってないですか? いったん忘れても、あとで思い出すことってありますよね。その時に本当は許してないんだと気づくこともあります。
マドカ:ひどい目にあわされた相手を「許す」ことが果たして幸せなのか、賛否はあるでしょう。相手の立場に立ってみると許せることもあれば、今許せなくても、何年か後に自分が成長して許せるかもしれないこともあります。そう思える自分になりたいという願望もありますね。
前野:許さないことは相手と同じ醜い心をむきだしにすること。行為によっては許すまでに時間を要するかもしれませんが、許そうと思うことで幸福度は成長していくと思いますね。
元木:コロナ禍で生活が変わった方も多いと思います。この時期に思う幸福学はありますか。
前野:在宅時間が長くなり、家族とコミュニケーションが増えたことで、幸せになった人もいれば、そうではない人もいます。昭和の頃は当たり前だった家族で食卓を囲む風景や、懐かしいご近所とのつながりが戻ってきて、これを受け入れた人と受け入れられなかった人で違いが出たと思います。また、傾聴、感謝、尊重という幸せになるための基本が整っているか否かでもそれぞれの方で幸福度は変わり、幸せの格差は広がっていると感じています。
元木:人によっては、コロナ禍で見えない不安を多く抱えてしまったということですね。
前野:幸せを感じることのできなかった人は、コロナの不安に、職場や家庭での不満が重なってしまっていると思います。こういうときだからこそパートナーと力を合わせることが重要です。コロナ禍でもうまくいっている家庭は、お互いに頼り合うことで、幸せにこの時代を乗り越えていけるはずです。
元木:心からそう思います。今日はありがとうございました。
Profile
慶應義塾大学大学院教授 / 前野隆司
1962年山口生まれ。1984年東工大卒。1986年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任する。著書に、『錯覚する脳』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)など。妻である前野マドカさんとの共著も多数ある。
慶應義塾大学大学院研究員 / 前野マドカ
EVOL株式会社代表取締役CEO、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員、一般社団法人ウェルビーイングデザイン理事、国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』(ヴォイス)、『家族の幸福度を上げる7つのピース』(青春出版社、2020年)などがある。
『なんでもない毎日がちょっと好きになる そのままの私で幸せになれる習慣』(WAVE出版)
前野隆司さんと前野マドカさんの共著による最新作。「幸せになれる」と科学的に証明された方法の中から、日々の小さな習慣で「幸せ」を感じとれる、誰でも簡単に実行できる50の習慣を紹介する。
ブックセラピスト / 元木 忍
学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。
GetNaviがプロデュースするライフスタイルウェブマガジン「@Living」