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会う機会が減ったからこそ“言葉”が大切になる。 “ほめる”達人が教える お互いが幸せになるほめ方

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たった一言、ちょっとした言葉の言いかえで、人生がもっと楽しくなるかもしれません。

コロナをきっかけに人と会うケースが減っていき、リモートワークなどワーキングスタイルも変化したことで、会社では上司や同僚、部下と、家庭では親と子の人間関係の構築やコミュニケーションが難しくなっています。こうした悩みを“ほめて”解決しているのが、“ほめ達”の第一人者である松本秀男さん。著書である『できる大人は「ひと言」加える』と『できる大人のことばの選び方』には、“ほめる”をベースに、人と人とのコミュニケーションを円滑にするためのノウハウがたっぷりつまっています。ブックセラピストとして活動する元木忍さんが聞き手となり、“ほめる”術とその効果を、松本さんに直接伝授していただきました。

Contents 目次

『できる大人は「ひと言」加える』 『できる大人のことばの選び方』 (青春出版社)

『できる大人は「ひと言」加える』
『できる大人のことばの選び方』
(青春出版社)

さだまさしさんから学んだ
言葉を大切にする姿勢が“ほめ達”の原点

元木忍さん(以下、元木):松本さんが、“ほめる”ことをビジネスやコミュニケーションスキルとして意識された理由から教えていただけますか?

松本秀男さん(以下、松本):私は30代で家業を継ぎ、ガソリンスタンドの経営者をしていました。ところがセルフスタンドの登場などもあって徐々に価格競争の激しさが増し、10年後には経営に行き詰まりまして。45歳の時、完全歩合の契約社員として、まったく経験のない外資系保険会社の営業に飛び込んだんです。この転職が“ほめる”ことに目を向けさせ、私の人生を180度変える大きなきっかけになりました。

元木:まったく別の世界への挑戦ですね。

松本:法人向けの個人情報漏洩保険や賠償責任保険などを売っていたのですが、それまでの10年、ネクタイもせずガソリンスタンドを走り回っていた人間でしたから、はじめのうちはまったく契約が取れませんでした。毎日70社回って2000円という月もありました。

元木:基本給にプラス2000円ですか?

松本:いえいえ。基本給が出るのは最初だけで、徐々になくなっていきます。45歳で子どもがいて、月給2000円ですよ! これはさすがにまずいなと思い、営業に取り入れたのが“ほめる”技術です。とはいえそれ以前も、「すごいですね、社長!」とかけっこうヨイショをしてみていたんですが、まったく効果なし(笑)。そこで、社長さんと初めてお会いした時、「その会社のよさ」や「取り扱っている商品やサービスの良さ」「経営者の素晴らしさ」を質問しながら、まず私自身がしっかり理解して「なるほど、だから御社はすばらしいのですね!」とお伝えしたところ、驚くほどコミュニケーションが円滑に回り始めました。こちらからお願いしなくても契約が取れるようになり、営業成績も一気に上がっていったんです。

著者の松本秀男さん。月給2000円から、ほめる技術をみがくことによってトップ営業マン、そして伝説のトレーナーへと駆け上っていった。
著者の松本秀男さん。月給2000円から、ほめる技術をみがくことによってトップ営業マン、そして伝説のトレーナーへと駆け上っていった。

元木:“ほめる”を具体的にするだけで、そうも成績が変わるものなんですね。

松本:私自身も驚きました。その後は社内でも、相手の良さを先に探すという“ほめるコミュニケーション”を心がけてみたら、やはり効果が出ました。それが認められて、50歳の時に契約社員から正社員となり営業トレーナーをまかされ……2年半後には、本社の中枢である経営企画部に引き抜かれました。外資系ですから、私以外の経営企画部のメンバーは全員バイリンガル。私は英語がしゃべれない代わりに、“ほめる”がスキルとして役立ったんですね。

元木:『できる大人は「ひと言」加える』の中に、ガソリンスタンド時代、「雨の日にボンネットで雨粒が躍る。ポリマー洗車!」の一言をチラシに書き、1日に185台の洗車記録を作ったというエピソードが出てきますね。もともと言葉を使ったコミュニケーション術の素質をおもちで、松本さんの言葉がいいかたちで、人々の心に染みたのかなと思っていますが、ほめ達(ほめる達人)の基本はいったいどこで身についたのでしょうか?

松本:私は歌手のさだまさしさんと同じ高校に通い、同じ落研(おちけん・落語研究会)のOBと現役という縁で、高校時代から交流が始まり、大学卒業後はさださんのプロダクションの社員となりました。そこから8年半、制作担当マネージャーとしてサポートをしていたなかで、さださんから大きな影響を受け多くを学びましたが、とくに言葉と本気で向き合う姿をずっと見せていただいたことが、その後も教えとして残ってきたと思っています。

ひと言つけくわえるだけで
コミュニケーションは一気に回り出す

著書『できる大人のことばの選び方』より。
著書『できる大人のことばの選び方』より。

元木:『できる大人は「ひと言」加える』と『できる大人のことばの選び方』を拝読しました。この中にはさまざまな“ほめる達人”テクニックがあり、コミュニケーション術のヒントもたくさんありますね。『できる大人は「ひと言」加える』に書かれた<言葉は自分と誰かをつなぐ接点であり、自分と社会をつなぐ接点である>という言葉には唸りました。

松本:ほんの一言プラスするだけで、人間関係、自分自身の評価や未来も大きく変わることをお伝えしたいという思いで本書を書きました。身近なところでは仕事相手との何気ないメールのやり取りに「どんな結果になるのか、いまからワクワクしています」などと一文加えると、相手のやる気も変わってきます。

元木:コロナ禍でメールの重要度が増してきましたけれども、言葉足らずだと冷たい印象を与えがちですよね。私はワクワクという言葉が口癖で、自分で自分のモチベーションを上げたい時によく使っているんですが、メールにも一言添えてあるだけで、ポジティブな気持ちになれます。

聞き手は元木忍さん。
聞き手は元木忍さん。

松本:上司が部下にメールを送る際にも使えると思いますよ。

元木:<できる上司は「ダメ出し」ではなく「惜しい!」を使う>、<「間違いもほめる」で勇気づける>は、うちの上司もぜひやってほしい!(笑)と思っているビジネスパーソンがたくさんいそうですね。

松本:ダメ出しが仕事と思っている上司の方はけっこういらっしゃいます。課題解決という意味では間違っていません。ですが否定だけでは部下は育ちません。「惜しいなあ、もう一息だよ」と言われたらどうでしょう。相手を応援し勇気づける言葉にもなります。

元木:<誰でも今日から「ほめる達人」になれる3つの言葉>は、コミュニケーション下手の人でもすぐにできるテクニックですね。

ほめ達3S

・すごい
・さすが
・素晴らしい

松本:「すごい」「さすが」「素晴らしい」は、私が専務理事を務める「日本ほめる達人協会」の基本メソッドであり「ほめ達3S(スリーエス)」と呼んでいます。シンプルですが感情を素直に言葉にすることで相手に気持ちが伝わりやすく、ちょっと小声でも言うだけでも効果があります。

元木:『できる大人のことばの選び方』の中にも金言がいろいろありますね。「相手のスキルではなく存在価値を認める」「マイナスをプラスに変換する」「減点法より加点法で見る」「ヨコではなくタテでほめる」の4つの言いかえはとても勉強になりました。

言葉選びをすることで
45歳で飛び込んだ保険会社のトップ営業に

松本:下町のガソリンスタンドのおやじにすぎなかった私が、外資系保険会社のトップ営業になれたのも、この「小さな言葉選び」にあったからだと思います。ちょっとした言葉の言いかえが、大きな仕事につながったり、人生を変えてしまったりすることもあります。『できる大人のことばの選び方』は、そこにスポットをあて一冊にまとめました。

元木:とくに「ヨコではなくタテでほめる」はグッときますね。

松本:ヨコでほめるは、人と比較してほめることで、例えば営業成績の棒グラフの高さをヨコ並びにして比べるようなほめ方です。この方法だと、ほめられる回数が少なく、人によっては一度もほめられないケースもでてきます。タテにほめるとは、棒グラフでいうと他と比べず、当人のタテに伸びた分をほめる方法です。これだと何度もほめられますし、ほんの少しの成長でもほめられます。

元木:タテでほめるは他との比較にならない点もいいですね。

松本:“ほめる”は他人と比較して評価することだけではないんです。今の社会では、“ほめる”基準を会社や上司が作ってその基準を超えたらほめるとか、周りより結果が良かったらほめるとか、すべて他の基準との比較だけになってるんですよ。そうでなくて、ほめる相手自身の中での比較にできたらいいですね。人には成長欲求がありますから、「成長しているよね」「がんばってるね」を伝えてあげるだけで、本人が成長を実感することができ、心の報酬にもなります。

元木:先ほどの「ほめ達3S」に加えて、「あなたらしい」というほめ方も、言われたらとてもうれしい気持ちになりますね。私も一度は言われたいなぁ(笑)。

松本:「あなたらしい」には、3Sが込められているだけではなく、「もともとあなたの素晴らしさは知っているけれども、今回もすばらしい」というようなメッセージも入っています。自分を認めてもらったという承認欲求も満たされますから、気持ちのよくなるほめ言葉になるのです。

元木:この本の中には、さだまさしさんとのエピソードもまじえた、大人の言葉の選び方がいくつか書かれていますが、さださんの<生まれ変わることはできないが、生きなおすことはできる>は心に響く名言ですね。

松本:コンサートのトークでさらっと言われた一言です。生き方や人生の見方、周囲との向き合い方を変えるなどの意味が含まれた“生きなおす”はさださんらしい言葉だと思います。私もこれまでの人生で何度も生きなおしを繰り返してきましたが、読者のみなさんもこれから壁にぶつかるたびに生きなおしを思いだしていただければと思います。

対談

元木:松本さんは本だけではなく、「日本ほめる達人協会」の専務理事でもありますが、ここではどのような活動をなされているのでしょうか。

松本:メインは「ほめる達人検定」ですね。検定には3級、2級、1級があり、これを通して“ほめる”ことを自身で再整理してもらいます。「このぐらいだったら自分でもやれる」というふうに勇気を持っていただき、ちょっとでも“ほめる”ことで、周りの人といい関係を築き、幸せな人生を送っていただきたいと思っています。あとは大手企業をはじめとした社員研修や、講演も積極的に行っています。講演では、ビジネスのことだけではなく家庭の悩みごとの相談も“ほめて解決”する方法をお教えしています。

元木:“ほめる”はいろいろなシーンで役に立つのですね。最後に、松本さんにお会いしたらぜひともお伺いしたかったのですが、「できる大人」はどういう人だとお考えですか。

松本:2冊書いてみて思うのは、もちろん仕事ができることも大切ではあるんですけど、もう少し広い意味として「自分にとっていてほしい人」が「できる大人」なんだと思います。この人にそばにいてほしいなとか、この人と仕事したいなとか、話を聞いて欲しいなとか。私自身のゴールもそこにありますね。

Profile

対談

日本ほめる達人協会 専務理事 / 松本秀男
東京生まれ。国学院大学文学部卒業後、歌手さだまさし氏のプロダクションで8年半勤め、制作担当マネージャーとしてアーティスト活動をサポート。その後、家業のガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資系大手損害保険会社に転職。トップ営業経験の後、伝説のトレーナーとして部門実績を前年比130%に。さらに本社・経営企画部のマネージャーとなり社長賞を受賞するなど、数々の成果と感動エピソードを生み出し続けた。現在は「日本ほめる達人協会」の専務理事。「ほめ達」として、リーダーシップやコミュニケーション、チームビルディング研修、子育て講演などでも活躍する。

ブックセラピスト / 元木 忍
学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。

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