ゲームの時間を守らない、宿題をやらない、いつも部屋は散らかしっぱなし……子どもには、「こうあってほしい」という期待があるだけ、ついつい怒りっぽくなってしまいます。でも、怒りにまかせて注意をしても、子どもには伝わりません。それどころか、子どもの心に傷を負わせてしまうことも。子どもとのコミュニケーションにおいて、言ってはいけないNGワードを日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実さんに伺いました。
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子どものやる気をそぐNGワードとは?
子どもに言ってはいけないNGワードもあります。ついつい言ってしまっていないか要チェックです。
■質問の「なぜ」ではなく、詰問の「なぜ」
×「なぜ、宿題をやらないの?」
×「なぜ、言ったことを守らないの?」
×「なぜ、部屋を片づけないの?」
「この『なぜ』は、質問ではなく、相手を責める『なぜ』です。これは子どもを追い詰めるだけで、思考停止になるか、言い訳をするかのどちらかです。本当に理由を求めているなら、『なぜ? 理由があるなら聞かせて』と落ち着いた口調で尋ねましょう」(戸田さん)
■「いつも」「必ず」「また」
×「勉強しろって言ってるのに、いつもスマホをやっているよね!?」
×「あなたは、必ず、言い訳するよね!?」
×「また、テストでこんな点数をとって!」
「子どもは、これに対して『いつもじゃないし』『またじゃない。初めてだよ』など、言い訳をするようになります。親は、その言い訳にまた腹が立ち、悪循環を招きがちです」戸田さん)
■注意しているときの「ダメ出し」
×「宿題忘れたらダメじゃない! バカじゃないの?」
×「そんなことだから、いつも失敗するんでしょ!」
×「ちゃんと考えれば、わかることだよね?」
「こうした言葉は、子どもの人格否定や、自信を失わせたり、自尊心を傷つけることにつながります。子どもに限らず、人はダメ出しをされている限り、自発的に改善しようという気持ちは起こりません。直してほしいところがあれば、それだけを伝えるようにします。そして、『○○をしたら、もっとよくなると思うよ』と、成長を願う大切な存在であることも伝えるようにします」(戸田さん)
叱る目的は、子どもの成長のため
さらに、こんな言葉がけにも注意が必要です。
■一度にたくさんのことを要求する
×「いつまでもスマホをしていないで、勉強しなさい! こんな散らかった部屋だから、勉強する気も起きないんでしょ! 片づけなさい!!朝も早く起きなさいよ!」
「直してほしいところを一度に言うと、子どもは混乱してしまいます。次々に論点が変わることで、子どもは“たくさん怒られた”という記憶しか残りません。あれもこれも気になるかもしれませんが、大事なことを伝えるときには、一点に絞って伝えるようにしましょう」(戸田さん)
■子どもの成長のために叱る
×「宿題をやらずに学校へ行ったら、お母さんが恥ずかしいのよ」
「叱るときは『べき』が破られ怒りを感じますが、相手の成長のために意識と行動を変えてもらうという目的は忘れずに。“お母さんが恥ずかしい”と言ってしまったら、子どもは『お母さんの体裁のために、やらされているんだ』と思ってしまいます。叱り方を間違えると、親自身が自己嫌悪に陥り、罪悪感から何かの拍子に『お母さんは、こんなにつらい思いをしているのよ』と子どもに感情をぶつけることにもなりかねません。前提をはき違えないように気をつけて」(戸田さん)
アンガーマネジメントでは、怒りのピークは6秒間と言われています。とっさに怒りをかわすには、怒りのピークをやり過ごすことも大切です。イラッときたときは、深呼吸をしたり、いったんその場を離れるなど、意識的に行動を変えてみましょう。
取材・文/海老根祐子