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ダイエットに効果的!専門家が実践する上手な「乳酸菌」のとり方

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ダイエットに効果的!専門家が実践する上手な「乳酸菌」のとり方

お腹の調子を整えることは、健康だけでなく美容にもよい影響を与えます。体を内側からキレイにしたいなら腸内環境の改善は必須! そこでキーワードになるのが、ヨーグルトなどに含まれる「乳酸菌」です。便秘改善に効果があることで知られている乳酸菌ですが、実は、驚くほど多種多様な働きがあり、その力は、まさに"万能"ともいわれているのです。そこで、体を内側から美しく若返らせる乳酸菌の働きや、おすすめの摂取方法を新宿大腸クリニックの後藤利夫先生に伺いました。

監修 : 後藤 利夫

新宿大腸クリニック院長。東京大学医学部卒業。大腸がんの予防推進のために無麻酔、無痛大腸内視鏡検査法を「水浸法」を開発。腸内細菌や乳酸菌にも造詣が深く、メディアなどで乳酸菌が持つ万能の力を広めている。著書に「ヨーグルトで健康革命 あなたの知らない乳酸菌力」(小学館)、「乳酸菌がすべてを解決する」(アスコム)など。

Contents 目次

乳酸菌生活でスリムも健康も手に入れる!


ヨーグルトやチーズなど、発酵食品に多く含まれていることでおなじみの乳酸菌。
「もともと乳酸菌は、食品だけでなく、自然界のあらゆるところに棲息している細菌です。私たち人間の体の中では、腸内に多く存在し、善玉菌として体によい効果をもたらしてくれます。ところが、乳酸菌などの善玉菌は、加齢や乱れた食生活などによって減ってしまうことが……。50代以降になると、乳児期に比べて100分の1にまで減ってしまうため、食事などから積極的に乳酸菌を補うことが大切なのです」(後藤先生)

乳酸菌は腸内フローラを整える

腸内には、乳酸菌をはじめとした腸内細菌が100兆個~1000兆個も棲息し、菌種ごとにグループに分かれて腸壁に張り付いています。その様子が、品種ごとに咲き並ぶ“花畑”に見えることから、腸管内の細菌の状態を「腸内フローラ」(腸内細菌叢)と呼ぶように。

腸内フローラを構成する腸内細菌は、その働きによって大きく以下の3つに分かれます。

「善玉菌と悪玉菌は、その数を増やすことで日和見菌を味方につけ、腸内で常に縄張り争いをくり広げています。ひとたび悪玉菌が優勢になると、毒素を発生させて体に悪い影響を与えるため注意が必要! とはいえ腸内フローラは、自力でコントロールができるところです。まずは、食事から乳酸菌を補って、腸内を善玉菌優勢に整えていきましょう」(後藤先生)

便秘改善や免疫力アップなどの健康効果で以前から注目されてきた乳酸菌ですが、近年の研究では、肥満の抑制、ストレスの緩和、生活習慣病の予防など、さまざまな効果があることがわかってきました。ここで紹介する乳酸菌の働きやその選び方、摂取方法をチェックして、気になる不調を改善しましょう。

お悩み解消!乳酸菌のすごい働きとは?


乳酸菌とは、代謝の過程で多量の「乳酸」をつくり出す細菌のこと。何か特定のひとつの細菌ではなく、腸内で多くの乳酸をつくり出すものを、すべて“乳酸菌”と呼んでいます。

「乳酸菌には、糖質や食物繊維をエサにして乳酸をつくり出し、腸内を弱酸性に保つ性質があります。逆に悪玉菌は、たんぱく質をエサにして発がん物質や毒性物質をつくり出し、腸内をアルカリ性に傾けます。乳酸菌をとって腸内が酸性になれば、アルカリ性の環境を好む悪玉菌の増殖が抑えられるため、体にとって有害な物質が生まれにくくなります。また、体の外から侵入してくる細菌の多くは酸性の環境下では生きにくいため、撃退することもできるのです」(後藤先生)

ビフィズス菌は乳酸菌の仲間

乳酸菌とは少し種類が違うけれど、同じような働きをするのがビフィズス菌です。
「ビフィズス菌は、代謝の過程でおもに「乳酸」と「酢酸」をつくり出す細菌の総称。乳酸菌と同じく、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑えてくれます。小腸でも働く乳酸菌と違い、酸素があるところでは生きられないため、おもに大腸で働いています。ビフィズス菌と乳酸菌は、近年の分類では区別されていますが、現実には、多くの場合、仲間として扱われています」
(※本記事では、ビフィズス菌を乳酸菌の仲間として含み、その働きなどをあわせて紹介しています)

乳酸菌のさまざまな働き

腸内を弱酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を整えてくれる乳酸菌。その効果は多岐にわたり、万能のパワーを持つといわれています。ここでは、その一部の働きを後藤先生に教えて頂きました。

【ダイエット】

食事からとった脂質や糖質は、適度な量であればエネルギーとして代謝されますが、とり過ぎれば体内に余り、やがては体脂肪として蓄積されます。乳酸菌は、小腸で脂質や糖質の吸収を抑え、排出を促すので、余分な栄養の吸収を抑える働きがあります。
また、最近の研究によると、腸内細菌には、脂質の吸収を抑制するもの(ヤセ菌)と、逆に脂質の吸収を促進するもの(デブ菌)があることがわかっています。同じ量を食べても太りやすい人とやせやすい人がいるのは、この腸内細菌の量が関係しているため。乳酸菌には、デブ菌の増殖を防ぐ効果があるため、ダイエットの強い味方になります。

【便秘解消&予防】

腸内で悪玉菌が優勢になると、腸内環境が悪化してぜん動運動が低下し、腐敗物が溜まりやすくなります。すると、悪玉菌がますます増殖して悪循環に陥り、慢性的な便秘に……。ヨーグルトなどで乳酸菌を補うことは、腸内の善玉菌を増やす効果があるため、腸内環境がよくなります。その結果、ぜん動運動が促進されて便が排出されやすくなるので、便秘の解消&予防につながるのです。

【免疫強化】

体には、免疫システムが備わっており、さまざまな免疫細胞が、ウイルスの侵入を防いだり、病原体を攻撃したりして体を守っています。乳酸菌は、こういった免疫細胞の働きをサポートすることがわかっています。また、花粉症やアトピー性皮膚炎を引き起こす“免疫細胞の暴走”も食い止めるので、その改善に効果を発揮します。
免疫システムは、小腸に集中しており、腸内環境が悪化すると腸の粘膜がもろくなるため、バリア機能が低下します。免疫力強化には、腸内環境を整えることが何より大切なのです。

【生活習慣病の改善】

乳酸菌には、食事に含まれるコレステロールなどの脂質や糖質の吸収を抑え、排出を促す働きがあります。過剰にとった糖質や脂質が体内に増えすぎないため、脂質異常症や高血糖の予防、改善に効果があります。また、乳酸菌がつくるラクトペプチドという物質には、血管を拡張して血圧を下げる働きも。つまり、ヨーグルトなどで乳酸菌を補うことは、高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病を予防することにも役立つのです。

【ストレスの緩和】

腸と脳は密接につながり、お互いに影響し合っています。これを「腸脳相関」といい、ストレスがかかると便秘や下痢になったり、逆に便秘が続くと気分が落ち込んだりするのは、このよい例。これには、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが関係しています。セロトニンは脳でつくられているほか、腸でもつくられていて、しかも、体内のセロトニンの8~9割が腸でつくられているのです。便秘が続くと脳や腸でつくられるセロトニンの分泌が減るため、体と心の状態は不安定に。腸内環境を整えることは、心の安定にもつながるのです。

乳酸菌の効果は、ほかにもいっぱいあります。次の記事では、特定の乳酸菌の得意分野について紹介していきます。

効果別!乳酸菌の選び方


前の記事で紹介した働きは、乳酸菌ならどんな菌でもある程度は持っているもの。ただ、乳酸菌にはさまざまな種類があり、菌によっては「この効果に、より力を発揮できる!」という得意分野もあったりします。明確な目的があるなら、より効果を発揮する菌を優先的に補う方法もアリ! ここでは、効果別に菌をピックアップして紹介します。血糖値の上昇を抑制したり、歯肉炎・歯周病を予防する効果のある乳酸菌もあるのでチェックしてみましょう。

【ダイエット】

●ガセリ菌SP株

内臓脂肪を減らす効果が実験で確認された乳酸菌。肥満傾向のある人(101人)を2つのグループに分け、ガセリ菌SP株を含むヨーグルトと含まないヨーグルトを1日100g、12日間摂取してもらったところ、ガセリ菌SP株を含んだほうが、含まないグループに比べて内臓脂肪の有意な減少が認められました。

●ラクトバチルスラムノーサスGG菌、TMC0409菌、TMC1543菌

3つの乳酸菌を使用したマウス実験で抗肥満作用を確認。ラクトバチルスラムノーサスGG菌、TMC0409菌、TMC1543菌の3つの乳酸菌を使用し、カルシウムと乳清たんぱく質を強化した発酵乳を与えたグループと、高カルシウム乳製品のみを与えたグループで観察したところ、発酵乳を与えたほうがより顕著に体重と体脂肪が減少。実験で用いられた発酵乳には、脂肪分解の促進、脂肪合成の抑制など、脂質代謝にさまざまな影響を及ぼす可能性が示唆されました。

【便秘改善】

●ビフィズス菌BB536株

世界ではじめて食用に利用されたビフィズス菌。胃酸で死滅することなく、生きたまま大腸に届くことでお通じを改善する効果が。また、BB536株の働きは多岐に渡り、潰瘍性大腸炎に対する効果、花粉症の症状緩和効果などが実験によって明らかになっています。

●乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ・シロタ株)

胃液や胆汁に耐えて生きたまま腸に届く乳酸菌。乳酸菌 シロタ株を1日100億個以上、4週間摂取したところ、摂取しなかったときに比べ、腸内のビフィズス菌が3倍に増え、有害菌が5分の1まで減ることが確認されました。また、乳酸菌 シロタ株を1日100億個以上、5週間摂取した実験では、発がん促進作用のある腸内有害物質が減ることも確認されました。

●LB81乳酸菌

ブルガリア菌2038株とサーモフィラス菌1131株を合わせた乳酸菌。健康な成人に毎日500gのLB81乳酸菌を使用したヨーグルトを2週間食べてもらい、それぞれの糞便を調べたところ、腸内細菌叢の悪玉菌が減少し、善玉菌が増加することで、腸内環境のバランスを整える効果があることがわかりました。

【免疫力強化】

●ラブレ菌

腸で生きぬく力が強い植物性乳酸菌。腸内の免疫細胞を刺激し、インターフェロン-α(アルファ)の生成能を向上させる働きが確認されています。インターフェロン-αは、ウイルスやがん細胞を攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞の働きを高める成分。そのため、インフルエンザなどの病気にかかるリスクを低くします。

●1073R-1乳酸菌

乳酸菌がつくり出すEPS(多糖体)は、免疫に関わるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化する働きがあります。NK細胞はウイルスに感染した細胞やがん細胞など、異常上のある細胞を攻撃する免疫細胞なので、病気の予防に役立ちます。特に1073R-1乳酸菌のEPSは免疫活性化の機能が高いことが特徴に挙げられます。

●シールド乳酸菌M-1

シールド(盾)のように外敵から人の体を守る働きを持つことから名付けられたヒト由来の乳酸菌。腸の免疫細胞に働きかけて免疫力を高める効果が期待されています。シールド乳酸菌M-1を摂取させたマウスによる試験では、インフルエンザ感染の症状が軽減されることが確認されています。

【花粉症・アレルギー症状の緩和】

●L92乳酸菌

アレルギー症状を引き起こすIgE抗体を抑制する作用のある乳酸菌。ヒトを対象にした試験では、花粉症やアレルギー性鼻炎による目や鼻の症状が改善することが明らかになっています。

●Th221株

しょうゆの醸造過程でできる“もろみ”から発見された植物性乳酸菌。一般的な乳酸菌よりも抗アレルギー作用が高いのが特徴。ヒトを対象にした試験では、1日60gのTh221株を8週間にわたって摂取したところ、医師による鼻症状の判定が改善。アレルギー症状を引き起こすIgE抗体の量も低下するという結果が出ました。

【こんな効果に強い乳酸菌も】

乳酸菌が豊富な食べもの、飲みものは?


腸内環境を整える善玉菌は、加齢や食生活の乱れによって減るので、食べものから乳酸菌をとって増やしていく必要が。手っ取り早くとるならサプリメントなどもありますが、乳酸菌が豊富なおすすめの食品や食材もたくさんあるので、毎日の食事にとり入れてみて。

乳酸菌が豊富な食品・食材

乳酸菌は、太古の昔から自然界のあらゆるところに棲息してきた細菌です。そのため、古くから世界各地に乳酸菌を利用した食品が存在しています。例えば、ヨーグルトは、約8000年前の中央アジアで生まれた食品。生乳を入れた容器にたまたま乳酸菌が入り込み、発酵したことで生まれたといわれています。
乳酸菌というと乳製品に多いようにも思われますが、実はそうではありません。野菜を発酵させた漬け物やキムチ、大豆を発酵させた味噌や納豆、そのほかにも肉類や魚類を加工した食品にも豊富に含まれています。ただ、塩分が多めものもあるので、とり過ぎには気をつけましょう。

●乳酸菌を多く含む食品●

<手軽にとるならヨーグルトや乳酸菌飲料を>

手軽にとるなら、乳酸菌食品の王道ともいえるヨーグルトや乳酸菌飲料がおすすめ。
「パッケージを見れば、どんな菌が使用されているか書いてあることがあります。なるべく、目的に合った乳酸菌を選びましょう。また、腸内環境は人によって千差万別なので、Aさんに効果があってもBさんには効果がない、ということもあります。どの菌が自分に合っているかは、とってみないとわからないので、2週間くらい(アレルギー症状のケアの場合は、2~3か月)とってみて、体の調子を観察してみましょう」(後藤先生)

ヨーグルトを使った簡単あったかアレンジレシピ

乳酸菌が豊富なヨーグルト。シリアルにかけたり、ジャムやフルーツと一緒に食べるのも手軽ですが、加熱してさらにおいしく食べられるあったかアレンジレシピもおすすめです。冷え性さんにもぴったりなので試してみてください。

チキンのヨーグルト煮込み<294 kcal>

チキンのヨーグルト煮込みの完成イメージ

■材料(2人分)■
鶏むね肉:200g
水切り塩ヨーグルト:大さじ4
トマト:1個
にんじん:1/3本
スナップえんどう:6本
オリーブ油:小さじ1
はちみつ:小さじ2
コンソメスープの素:小さじ1
塩・こしょう:少々

※水切り塩ヨーグルトは塩ヨーグルトをキッチンペーパーを敷いたざるにを入れ、ボウルにのせてひと晩置いたもの(5時間程度でもOK)。

■つくり方■
(1)鶏むね肉はひと口大のそぎ切りにし、保存袋に入れて水切り塩ヨーグルトを入れ、冷蔵庫で2~3時間漬けこむ。
(2)トマトはざく切りにし、にんじんは薄い半月切りに、スナップえんどうはすじをとる。
(3)鍋にオリーブ油とトマトを入れて強めの中火で炒め、トロッとしたらはちみつを加えてまぜ、水1と1/2カップとコンソメスープの素、にんじんを加えて中火で煮る。
(4)煮立ったら、鶏むね肉を漬けだれごと加え、ときどきかき混ぜながら肉に火が通るまで約15~20分煮る。スナップえんどうを加えてさらに3~4分煮て、塩、こしょうで味を調え火を止める。

 

どっさりきのこのヨーグルトクラムチャウダー<118kcal>

どっさりきのこのヨーグルトクラムチャウダーの完成イメージ

■材料(2人分)■
あさりのむき身:80g
塩ヨーグルト:大さじ1(あさりを漬ける)
たまねぎ:1/6個
しいたけ:3枚
しめじ:1/2パック
えのき:1/3袋
オリーブ油:小さじ1
コンソメスープの素:小さじ1
低脂肪牛乳:1カップ
塩ヨーグルト:大さじ3
塩・こしょう:少々
パセリ(みじん切り):適宜

■つくり方■
(1)あさりのむき身に塩ヨーグルトを混ぜて約10~20分漬け込んでおく。
(2)たまねぎは薄切りに、しいたけは薄切りに、しめじは小房に分ける。えのきは長さを3~4等分に切ってほぐす。
(3)鍋にオリーブ油とたまねぎを入れて中火でしんなりするまで炒め、(2)のきのこ類も加えて軽く炒める。
(4)水1と1/2カップ、コンソメスープの素を入れて煮立ったら、(1)を加えて約5分煮込む。低脂肪牛乳と塩ヨーグルトを加えて温め、塩、こしょうで味を調える。器に盛りパセリを散らす。

乳酸菌サプリやショコラも上手に活用


乳製品や発酵食品が、どうしても苦手……という人も中にはいるはず。また、忙しいときは、食べものを用意することさえ大変なときも。そんな場合は、手っ取り早く補給できる乳酸菌のサプリメントがおすすめです。

「乳酸菌のサプリは、副作用もないので安心ですが、薬と違うところは、人によって効果が違うということ。前述しましたが、腸内環境は人によって違うので、効果の強い菌と弱い菌があります。まずは2週間毎日続けてみて判断し、目的にあった効果が実感できなければ、違う乳酸菌を試してみましょう」(後藤先生)

また、チョコレートやゼリーなど、クチコミでも話題になったおやつタイプの乳酸菌食品もいろいろ登場しているのでスーパーやドラッグストアなどをチェックしてみましょう!

ダイエットに効果的な乳酸菌のとり方


乳酸菌は、腸内環境を整えて代謝を上げるだけでなく、食事からとった余分な糖質や脂質の吸収を抑えてくれるのでダイエットをサポートします。とはいえ、いくら効果があっても、乳酸菌食品ばかり食べていればよいというわけではありません。また、どんなダイエットでも同じですが、「これさえ食べれば劇的にやせられる!」といった都合のよいものでもないので過大な期待は禁物。あくまでも健康的な体に導きながら、キレイを目指すためのひとつの方法としてとり入れましょう。

乳酸菌でダイエット効果を上げる6つのコツ

【1.極端な食事制限はNG!】

加齢以外に腸内環境を悪化させる原因が、乱れた食生活です。
「特に極端な食事制限をするのはダメ。乳酸菌などの善玉菌は、糖質や食物繊維をエサにしているので、例えば、過激な糖質制限をすれば、善玉菌は餓死してしまいます。また、肉類ばかり食べていると、たんぱく質をエサにする悪玉菌の増殖を手助けしてしまうことになるので注意が必要。体に必要な栄養素を適度にとり入れながら、無理なくバランスのよい食生活を心がけましょう」(後藤先生)

【2.目的に合わせた乳酸菌はひとつに絞る】

腸内環境は千差万別で、人によって腸内細菌の構成は違います。
「乳酸菌は多種多様なので、ある特定の乳酸菌が他人にとっては効果があっても、自分にはまったく効かない、といったこともあります。まずは、自分に合った乳酸菌を探すことが大切。そのためにも、1度にいろいろ試すのではなく、ひとつの乳酸菌に絞って摂取し、様子を見てみるとよいでしょう。効果がなければ違う乳酸菌を試してください。ただ、目的の効果が得られなくても、食べたことが台無しになるわけではありません。どんな乳酸菌でも腸内を酸性にする効果があるので、腸内環境は以前よりも改善しているはずです」

【3.2週間を目安に毎日とって】

乳酸菌で体質を変えたい場合は、目的に合った乳酸菌を毎日とり続けること。
「例えば、乳酸菌たっぷりのヨーグルトを1回食べたからといって、すぐに腸内環境が変わるわけではありません。多くの乳酸菌は胃酸によって死んでしまうので、生きて腸まで届き、働いてくれるのはほんの一部。そのため、ある程度の期間は毎日食べ続けて目的に合った菌を増やしていく必要があります。2週間くらいでやっと菌は増え、腸内に影響を与え始めるので毎日食べ続けて判断してください」

【4.食事といっしょにヨーグルトなら80~100g】

ダイエット目的の場合、乳酸菌食品は食事といっしょにとるのがおすすめ。
「糖質や脂質の吸収を抑える乳酸菌の働きを考えた場合、食事といっしょにとるとよいでしょう。とはいえ、便秘を改善して腸内環境をよくするだけでも代謝が上がって太りにくくなるので、本来ならいつ食べても構いません。できる範囲で続けてください。食べる量は、ヨーグルトなら80~100gくらい。カロリーがあるので、気になる場合は、おやつを少しだけ減らして調整しまでしょう」

【5.オリゴ糖や食物繊維もいっしょに】

乳酸菌をとるときはオリゴ糖や食物繊維をプラスすると、より効果的です。例えば、紅茶やコーヒー、ココアなどの飲みものに入れる砂糖を市販のオリゴ糖に変えるだけでもOK。
「オリゴ糖や食物繊維は、消化吸収されにくいので腸まで届いて乳酸菌のエサになります。腸内にエサがたっぷりあれば、乳酸菌も元気に働けるので善玉菌を増やすことに。市販されているオリゴ糖以外にも納豆、たまねぎ、バナナ、ごぼう、にんにく、エシャロット、きなこなどの食材には、オリゴ糖が豊富に含まれるので上手にレシピにとり入れてみて」

【6.ほかの発酵食品も忘れずに】

もともと乳酸菌は、漬け物や味噌といった発酵食品にも多く含まれています。
「漬け物や味噌など、食品に含まれている乳酸菌は、市販のヨーグルトのように研究が進んでいないため、具体的な名前も得意分野の働きも、まだまだわからないのが現状です。とはいえ、どんな乳酸菌でも一通り前述した働きを持っています。目的に合った乳酸菌を含むヨーグルトといっしょに発酵食品を積極的にとって乳酸菌パワーを高めていきましょう」

生活習慣が乳酸菌を増やす

乳酸菌を効率よく増やすためには、食生活だけでなく、普段の生活習慣を見直すことも重要です。適度な運動や十分な睡眠など、乳酸菌を増やす方法はほかにも。健康的な生活の基本にもなるのでとり入れていきましょう。

運動習慣で便を押し出す力をアップ

適度な運動は、腸の働きを活発にしてくれるので、乳酸菌を増やすことに役立ちます。

「便秘になる原因のひとつに運動不足が挙げられます。腸は外からの刺激も敏感に受けるので、運動不足でお腹に刺激を与えていないと、たちまちぜん動運動が低下します。便通をスムーズにするためには、1日1万歩のウォーキングが効果的。歩く振動や筋肉の動きが便通をサポートしてくれます。また、どうしても時間がとれないときは、簡単な筋トレもおすすめです。お腹の筋肉が衰えると、便を押し出す力も低下するので、腹筋を鍛える筋トレもとり入れていきましょう」(後藤先生)

【腸が元気になる簡単筋トレ】

<1>
あお向けになり、両ひざを立て脚をそろえます。両手は体の横に置き、手のひらを床につけましょう。

<2>
両脚をそろえたまま、息を吐きながらひざを伸ばして脚を斜め上に上げます。腹筋がしっかり使われていることを意識して。

<3>
両脚が伸びきったところでつま先を手前に倒します。そしてゆっくり息を吐きながら1の姿勢へ。1~3を6回くり返して。

しっかり眠って腸を働かせる

十分な睡眠をとることは、腸にもよい影響を与えます。
「寝ている間は、副交感神経が優位なので、腸が活発に働くタイミング。十分な睡眠をとっていれば、食べものは消化吸収されて腸に行って便になり、起きるころにはS字結腸まで移動しています。そして、朝に何か食べることで腸が反応し、便意が促されるのです。ところが、睡眠時間が短かったり、就寝時刻がバラバラだったりと、不規則な生活をしていると腸のリズムが崩れてしまい、便秘を招いてしまうことが。できるだけ就寝時刻は一定にし、十分な睡眠時間を確保しましょう」

美肌をつくるのは腸内環境

便秘が改善すれば、肌の調子もよくなることは、女性なら体験的に感じている人も多いはず。腸内環境を整えて美腸に導くことは、美肌づくりにもよい影響を与えます。

「腸内に悪玉菌が増えると、硫化水素やアミンといった毒性の強い物質が生まれます。これらの物質は、おならになって肛門から出てしまえば、まだいいのですが、ひどくすると体内に再吸収されて血管に入り、皮膚などの細胞に悪影響を及ぼすのです。便秘で肌が荒れてしまうのはこのため。他にも、口臭や体臭が悪化するなど、悪玉菌が生み出す毒素は、さまざまなところに現れます」(後藤先生)

肌荒れも深刻ですが、女性にとって口臭や体臭の悪化も大問題です。そんな目に合わないためにも、食べものから乳酸菌をとって善玉菌を増やすことは重要課題!

「体内で善玉菌が増えれば、悪玉菌の数を減らせるだけでなく、肌の代謝に関わるビタミンB群も生成できるようになります。肌にとってはダブルでよい効果があるので、美肌のためにも乳酸菌をしっかり補うようにしましょう」
乳酸菌の中には、肌に対して特によい働きをするものも。気になる人はとり入れてみて。

肌荒れ改善に働く乳酸菌

●LB81乳酸菌

ブルガリア菌2038株とサーモフィラス菌1131株を合わせた乳酸菌。20~30代の慢性的な便秘で乾燥肌の女性を対象にした実験では、便秘の改善と肌機能のアップを確認。LB81乳酸菌を使用したヨーグルトを1日に2回、120mlずつ毎日摂取してもらったところ、4週間後には、便秘とともに皮膚の弾力性や乾燥も改善したという報告があります。

●B.ブレーベ・ヤクルト株

生きて腸にとどくビフィズス菌。B.ブレーベ・ヤクルト株とガラクトオリゴ糖を含んだ発酵乳を4週間(1日100ml)飲んでもらったところ、これらを含まない疑似飲料を飲んだグループに比べて肌の水分量が保持されました。この時、腸から血液を通じて肌にとどき、肌の新陳代謝に悪影響を及ぼす、血液中のフェノールが減少することも確認されました。

キレイな腸内環境が美ボディをつくる

近年、腸内細菌の遺伝子解析が進んだことで、菌のさまざまな効果が発見されています。体にうれしい効果がいっぱいの乳酸菌ですが、もしかすると、今後も驚くべき発見がもたらされるかもしれません。ヨーグルトや発酵食品で普段から乳酸菌を摂取することは、健康だけでなく美ボディづくりもおすすめ。便秘改善やダイエットなど、気になることがあったら、今からでも乳酸菌生活をはじめましょう。

 まとめ

  • 乳酸菌にはダイエットや美容など、さまざまな効果がある
  • 善玉菌は加齢によって減るので積極的にとる
  • 菌によっては得意分野があるので、目的に合った菌を選ぶ
  • 人によって合う菌と合わない菌がある
  • 毎日2週間以上とり続けて効果を見極める
  • 適度な運動と十分な睡眠をとる

取材・文/オフィス・エール 撮影/山上忠 モデル/Itsumi ヘア&メイク/斎藤節子 スタイリング/井口美穂

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