手洗いと冬の寒さで、なぜ手が荒れるの？

冬になると、手のひらがカサカサしたり、ひどくなると指先が割れたり、湿疹ができることもあります。なぜ、冬は、こうした手荒れが起こりやすくなるのでしょうか。肌のしくみから見ていきましょう。

「手には皮脂腺が少なく、皮脂があまり分泌されないことから、手はもともと乾燥しやすい部位です。そのうえ、冬の冷たく、乾燥した空気にさらされることで、水分が奪われ、手荒れが起こりやすくなるのです」

では、手が荒れているとき、肌はどんな状態になっているのでしょうか。
「そもそも肌には、水分を逃さないようにしたり、ウイルスや刺激物などの異物からガードしたりするための、“バリア機能”があります。それを担っているのが角層と皮脂膜です。角層には、天然保湿因子といううるおい成分を含む角質細胞がびっしりと並び、そのスキマを細胞間脂質（セラミド）が埋めていますが、これが“バリア機能”の役目を果たしています。また、皮脂膜は皮脂と汗からできており、角層を覆うように膜をはり、角層のバリア機能を助けています。手荒れは、この肌の“バリア機能”が低下した状態です」

●健康な肌

●手荒れした肌

この冬は、新型コロナウイルス感染症対策のため、手洗いや消毒の回数が増え、それも手荒れをひどくする原因になっています。
「夏頃から、手荒れを訴える患者さんが増えています。ハンドソープの石けん成分や消毒のアルコール成分（エタノール）は、ウイルスの膜を壊し、無毒化する効果がある反面、手のバリア機能も壊してしまいます。皮脂膜がとれて、角質細胞がはがれ、そこから角質細胞間脂質が溶け出してしまい、水分を保持するバリア機能を保てなくなってしまうのです」

バリア機能が壊れたところに、洗剤などの刺激物が入りこむことで、手に湿疹ができる“手湿疹”ができたり、指先が割れてしまうこともあります。洗濯や洗いものなどの水仕事をすることが多い主婦に多いことから、主婦湿疹という呼ぶこともあります。
「手湿疹ができたら、セルフケアは難しいかもしれません。皮膚科の受診をおすすめします」と花房先生はアドバイスします。

手荒れで、感染症リスクが高まる！？

手あれは、感染症対策の上でも、マイナスになるといいます。
「手あれで痛みがあったりすると、手洗いが不十分になります。万が一、手にウイルスがついても、十分に洗い流せず、それが感染リスクを高めることにつながります。また、手あれの部分には、黄色ブドウ球菌などの雑菌が入り込んで、バイオフィルムという膜を形成することがあります。すると、菌の毒素で手あれがひどくなることも。また、手で触れたウイルスがバイオフィルムに付着すると、手洗いや消毒をしても、ウイルスが残りやすくなるかもしれません」

バイオフィルムが形成されているかどうかは、肉眼で見ることはできません。新型コロナウイルスやインフルエンザの感染予防としても、手あれは防ぎたいですね。
次回は、具体的にどのようにケアしていくのがよいかを教えていただきます。

取材・文／海老根裕子　　イラスト／クロカワユカリ