ヘルシーな間食として高い人気を誇るナッツ。ですが、ナッツとひとくくりにしてもその種類はさまざまで、何を選ぶのがベストかお悩みの人もいるかもしれません。そこで今回は、食品成分表マニアの管理栄養士・藤原朋未さんに食品成分表を読み解いていただきながら、ダイエットや美容面で目的ごとにどのナッツをとるのがよいのか教えていただきました。
Contents 目次
ヘルシーおやつの定番「ナッツ」、どれを選べばいいのか知りたい
ヘルシーおやつとして知られる「ナッツ」。ダイエット中の間食や小腹満たしに常備しているという声も聞かれます。一方でアーモンドやくるみ、カシューナッツなど、たくさんの種類がある中で「一体どれを選べばいいの?」と気になる方も多いはず。今回は最新の栄養データである【日本食品標準成分表2020年版(八訂)】(以下、食品成分表)を基に、ナッツの栄養価を比較してみました。気になる1食分の目安量も合わせてチェックしてみてください。
ナッツってどんな食品?
食品成分表ではナッツは【種実類】に分類され、次のとおりに説明されています。
この食品群に属する食品は、「らっかせい」を除いて、穀類あるいは豆類以外の種子及びその製品で、植物学的には必ずしも近縁ではない。主にナッツ、種あるいは実として市販されている。「らっかせい」は、豆類であるが、脂質含量が高いため、この食品群に分類した。
種実類として掲載されているのは29品。そのうちナッツとは「木の実」として、固い殻や皮に包まれた果実や種子(胚や仁)を食べる食品を指します。
今回はアーモンド、くるみ、ピスタチオ、マカダミアナッツ、カシューナッツ、ブラジルナッツ、ヘーゼルナッツ、ペカン、そしてらっかせいの9種をナッツとして扱います。「らっかせい」はピーナッツとも呼ばれていますが、木の実ではなく豆類。ナッツと似た栄養素を持つため、種実類に分類されています。
目的別!体にうれしいナッツの栄養素
食品成分表に掲載されている9種のナッツにおいて、それぞれに含まれている栄養素を目的別に一覧表にしてみました。
<ダイエット・ボディメイク>と<美容・アンチエイジング>、2つのテーマに分けています。それぞれの気になる栄養素を比較してみましょう。
<ダイエット・ボディメイク>に関する栄養素をチェックしてみよう!
※注目したい食品の数値に色付けをしています。
※9種のうち、試料として<いり(炒り)>と<フライ>、<無塩>と<味付き>が散在しています。調理法によって数値に影響すると考えられるため、完全な比較はむずかしい旨ご了承ください。一覧表は<いり(炒り)>と<フライ>に分けて作成しています。
●エネルギー
エネルギーは「カシューナッツ」(591kcal)、「アーモンド」(608 kcal)が比較的低めな結果に。とはいえ、全体的に高いエネルギーを持つことにちがいありません。1食当たりを片手の手のひらに軽くのせた量(20g)とした場合は約150 kcalです。
●たんぱく質
ボディメイクに欠かせないたんぱく質も比較的多く含まれています。とくに「らっかせい」(25.0g)は100g当たりで比べると鶏むね肉(21.3g)を上まわる含有量です。1食20g当たりでは約5g。間食でたんぱく質が補えるのはうれしいですね。
●脂質
マカダミアナッツ(76.7g)など、エネルギーが高い理由に脂質の多さがあげられます。ナッツに多く含まれるのは不飽和脂肪酸といい、体内で合成できないため必須脂肪酸と呼ばれています。ナッツのほか魚の脂にも含まれています。
不飽和脂肪酸はさらに、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。
・一価不飽和脂肪酸
オリーブオイルに多く含まれることで知られ、血液中のLDLコレステロールを下げる効果があります。このオレイン酸がほかのナッツと比べて多いのが「ヘーゼルナッツ」です。一価不飽和脂肪酸54.74g中54gとほとんどがオレイン酸であることが特長です。
・多価不飽和脂肪酸
動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるなど生活習慣病予防に期待できるα-リノレン酸・リノール酸。これらを多く含むのが「くるみ」(50.28g)です。とくにダイエット中は脂質を控える人が多く見られますが、“体に必要な油”としてとり入れたいですね。
●食物繊維
便秘解消、腸内環境改善が期待できる食物繊維。「アーモンド」(11.0g)、ピスタチオ(9.2g)の順で多く、ナッツ全般で豊富に含まれることがわかります。1食20g当たりでは約1.5~2g。最新の調査(令和元年 国民健康栄養調査)では、女性では平均0.5g、年代によっては1~2gほど不足していることがわかっています。この不足分を20gのナッツで補える…と覚えておくといいですね。
●ビタミンB群
摂取したエネルギーを効率よく消費するために役立つのがビタミンB群です。糖質や脂質の代謝を促すため、疲労回復という面でも積極的にとりたい栄養素。なかでもエネルギー産生に深くかかわるビタミンB2は「アーモンド」(1.04mg)に多く含まれています。
<美容・アンチエイジング>に関する栄養素をチェックしてみましょう!
※注目したい食品の数値に色付けをしています。
※9種のうち、試料として<いり(炒り)>と<フライ>、<無塩>と<味付き>が散在しています。調理法によって数値に影響すると考えられるため、完全な比較はむずかしい旨ご了承ください。一覧表は<いり(炒り)>と<フライ>に分けて作成しています。
●ビタミンE
美容ビタミンとも呼ばれるビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぎます。血行をよくする働きがあるので、肩こりや冷え症などの症状緩和、顔色をよくする効果も期待できます。ほとんど含まれないナッツもあるなか、「アーモンド」(29.0mg)がダントツで多い結果です。
●ナイアシン当量
ビタミンB群であるナイアシンはエネルギー代謝やホルモンの合成などに関わる栄養素です。皮膚や粘膜の代謝にも関係するため、肌荒れ予防に役立ちます。「らっかせい」(28.0mg)にとくに多いことがわかります。
●葉酸
じつは葉酸もビタミンB群の一種。ビタミンB12と共に新しい赤血球を作り出すために必要で、「造血のビタミン」とも呼ばれています。貧血予防や妊娠中の胎児の神経管閉鎖障害のリスク軽減など、とくに女性が意識してとりたい栄養素です。9種のなかでは「くるみ」(91μg)に多く含まれています。
ナッツの定番「アーモンド」はやはり優秀だった!
気になる栄養素やナッツはありましたか?
どちらのテーマにも多く登場した「アーモンド」はナッツの定番でありつつ、栄養価も優秀と言えるのではないでしょうか。食物繊維を豊富に含み、エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群も併せ持ちます。抗酸化作用の強いビタミンEはトップクラス! もちろんほかのナッツもそれぞれのよさがあるので、ご自身の気になる栄養素に注目して選んでみてください。悩んでしまう人は“アーモンド入りのミックスナッツ”はいかがでしょうか?
ナッツをとる1日の目安量は【片手の手のひらにのせた20g】
ナッツをとり入れるときは、そのほかの食事とのバランスを考慮し1日当たり20g、約150kcalを間食の目安量としましょう。体にやさしいことを徹底するのであれば、無塩・ノンフライの商品を選ぶのがおすすめですが、「おいしさ」も大切ですよね。目安量を超えて食べ過ぎなければ、ご自身の好きな種類を好きな味付けで召し上がってください。サラダのトッピングなどにちょい足ししてもいいですね。毎日の健康管理やトレーニングのお供に、ヘルシーなおやつをとり入れてみてください。
<参考>
・日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
・令和元年国民健康・栄養調査報告 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html
・間食のエネルギー(カロリー) e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html
栄養価計算ソフト
・栄養価計算エクセル「楽らく栄養ちゃん 2020(八訂)」 エミッシュ
https://ticket.tsuku2.jp/eventsDetail.php?ecd=01202120060456