日本のファーストフードの代表ともいえる牛丼。パパッとかきこめる料理だからこそ、早食いや食べ過ぎなど、ダイエット中の食事には向かないイメージでしょうか。今回はカレーの回に続いて、牛丼1杯で栄養バランスを整え、みなさんがポジティブに食べられるようなご提案をしたいと思っています。ごはんを豆腐に変えたり、サラダを添えたりしなくても、バランスのよい1杯が手軽に食べられたらいいですよね。
Contents 目次
理想的な食事バランスとは?~PFCバランス~
まずは日本人の理想的な食事バランスの基準値を確認しましょう。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」というガイドラインで示されている基準値をグラフ化しています。
ごはんなどの穀類やいも類に多く含まれる「炭水化物(C)」は、摂取エネルギー(カロリー)全体の50~65%をとるのがよいとされています。肉や魚、卵などに多く含まれるたんぱく質(P)は13~20%(ただし50~64歳は14~20%、64歳以上は15~20%)、脂質(F)は20~30%です。摂取エネルギー(カロリー)に対して、これらの3つの栄養素がどのくらいの割合を占めるかを示したものが【PFCバランス】です。個々の運動量や目指す体型によってもちろん調整は必要ですが、健康的な食事はこのPFCバランスを保つことを意識するのがよいでしょう。
この理想的なPFCバランスを1食あたりの数値に変換したのがこちらの表です。
これに加えて、腸内環境を整えるには食物繊維を、肌トラブル予防にはビタミン類を、むくみ対策に塩分過剰に気をつけて…などのプラスαをお伝えしたいところですが、まずはこの基本となるPFCバランスが整っているかどうかが大切といえるでしょう。
それではさっそく、牛丼の栄養価を分析してみます。
牛丼の栄養価
牛丼といえば、「うまい、やすい、はやい。」のお店が定番なので(筆者イメージ)、某牛丼チェーン店の公式HPより栄養成分を参照しました。牛丼の栄養成分はこちら。
ちなみにごはんの量は公表していないそうなのですが、データから推計してみると、
【小盛】:約170g
【並盛】:約240g
【大盛・特盛・超特盛】:約335g
大盛、特盛、超特盛は具の量のみ多くなり、ごはん量は同じということだそうです。
それでは、それぞれのPFCバランスを見ていきましょう。
【小盛】
エネルギー:488kcal
たんぱく質:15.9g
脂質:16.9g
炭水化物:65.3g
食塩相当量:2.1g
ごはん量が少ない分、脂質の割合が増えます。たんぱく質の割合は下限値ギリギリ。
【並盛】
エネルギー:635kcal
たんぱく質:20.0g
脂質:20.4g
炭水化物:89.0g
食塩相当量:2.7g
1杯あたりのエネルギー含め、かなり理想に近い数値といえます。PFCバランスはたんぱく質の割合が低く、脂質の割合が高めなのは小盛と変わりありませんね。
【アタマの大盛】
エネルギー:724kcal
たんぱく質:23.5g
脂質:24.8g
炭水化物:97.6g
食塩相当量:3.0g
アタマの大盛とは、ごはん量は並盛と同じで具の量が多いもの。たんぱく質は多くとれますが、その分脂質も増えるため、脂質の割合が高めに。PFCバランスは崩れていきます。
【大盛】
エネルギー:846kcal
たんぱく質:25.5g
脂質:25.0g
炭水化物:124.2g
食塩相当量:3.4g
ごはん量335gは1食分としては多めですね。1杯分のエネルギー値も高くなります。ごはんに対して具の量が少なくなるため、たんぱく質と脂質の割合が低くなります。
※特盛、超特盛は女性1食あたりの食事量としては多いため省略します。
牛丼はPFCバランスが整っていた
理想的なPFCバランスと牛丼並盛のPFCバランスをもう一度確認してみましょう。
意外にも、というと失礼ですが、牛丼はバランスのよい食事といえることがわかりました! これからは「あぁ、今日は牛丼食べてしまった…」と思うのではなく、「おいしい牛丼でお腹が満たされたぁ~しかもPFCバランス整ってるぅ~~♪」と気持ちよく食べられそうですね。
牛丼並盛、管理栄養士がアレンジするなら?
「これだけでは野菜不足では?」「たんぱく質が足りていないのでは?」そんなご意見をいただきそうな予感がしています。
ですが…、前後の食事でカバーすればまったく問題ありません!
とはいえ、わたしが牛丼を食べる場合に健康を意識する3つのポイントをご紹介します。
1:ねぎ・たまごを追加する
野菜不足にはねぎ、たんぱく質不足にはたまごを追加してカバーしたいと思います。たまごにも脂質が含まれますので、PFCバランスは若干崩れてしまいますが、アタマ(具)を大盛にするより確実にたんぱく質をUPできます。さらには緑色の濃いねぎが加わることにより、β-カロテンやビタミンCなどのビタミン類を補給できます。
2:つゆぬきにする
1杯あたりの塩分量は2.7gです。決して高すぎることはありませんが、生活習慣予防、むくみ対策としてもできるかぎり塩分は抑えたいということで、「つゆぬき」を選択しました。
つゆだくの場合は塩分が高くなるばかりでなく、ごはんがシャバシャバになり早食いになりやすいという点も気をつけたいポイントです。
3:唐辛子をかける
牛丼のトッピングとして欠かせないのが紅しょうがと唐辛子。しょうがに含まれるジンゲロールや唐辛子に含まれるカプサイシンには血流促進や発汗を促す効果が期待できます。ただし、紅しょうがには塩分が含まれますので、ほどほどにしましょう。
ということで、さっそく牛丼を買いに走りました。
牛丼並盛つゆぬき 「ねぎ玉子」のトッピングです。ちなみに、アタマ(具)は78g、ごはんは246gでした。(1杯あたりのごはん量の計算が正しいことが判明!)
気になるつゆぬきですが、たしかにつゆはほとんどありません…(自分で頼んでおきながらちょっぴり残念)、ただし具材にはしっかり味が染みているようで、ごはんもほどよく色づいています。十分満足できそうな見た目です。
ここで、想定外だったのがねぎ。なにかに浸かっている…!
にんにく、ごま油、しょうゆなどがベースのつゆでしょうか。コチュジャンのような甘辛い味わいもあり…おいしい!! けれど、栄養価的には想定外。
公開されている「ねぎ玉子」の栄養価と食品成分表の「ねぎ」・「卵」それぞれデータとの計算が合わずに悩んでいたのですが、これが原因のようです。ねぎ玉子ラバーの方にとっては当たり前なのでしょうか。
とにかく、味付きねぎを加えるのであればなおさら「つゆぬき」がベストということですね!
すっかり冷めてしまったので、温め直しました。やわらかい牛肉ととろとろのたまねぎ、パンチのあるねぎをのせて。そこに、たまごをからめながら、まさに味も栄養価も最高の1杯です。
途中で唐辛子を追加。ピリッとした辛みが味変にもなり、体も温まり、まさにいいこと尽くしです。
いかがでしたか? 栄養バランスの良し悪しは、数字だけではわかりにくいものです。このようにPFCバランスをみてみると新しい発見がありますね。
今まで以上に牛丼をポジティブな気持ちで食べられる方が増えますように。
<参考>
・日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
・日本人の食事摂取基準(2020年版) 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
吉野家公式ホームページ/メニュー別・栄養成分・アレルギー物質⼀覧
https://www.yoshinoya.com/pdf/allergy/
カプサイシンの生理作用/農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/capsaicin/syousai/index.html#no3
栄養価計算ソフト
・栄養価計算エクセル「楽らく栄養ちゃん 2020(八訂)」 エミッシュ
https://ticket.tsuku2.jp/eventsDetail.php?ecd=01202120060456