世界を舞台に活躍を続けた元フリースタイルスキー・モーグル選手・上村愛子さんと、自らもボディビルダー競技へのチャレンジを続ける日本体育大学教授の岡田隆さんに対談インタビュー。2回目の今回は、「アスリート時代の習慣が生きていること」「引退後のアスリートの体」などについてお話をしていただきました。
現役時代の習慣から、今もメニュー選びはバランスを考えて(上村さん)
—上村さんは、現役時代の食習慣が今も生きていると感じることはありますか?
現役時代に食事内容を改善したことにより、偏食気味だったメニュー選びが整ったと感じています。好きなものだけじゃなく、いろいろなものを食べられるようにバランスを考えてメニューを選べるようになったのは、現役時代の習慣によるものだと思います。現役時代に比べると、意識は低くなってしまっているかな、とは思いますが。
上村さんは謙遜しますけど、ふつうの人から見たら、十分意識高いですよ。
ありがとうございます。たしかに、栄養バランスは悪くないかなと思います。でも、筋肉量が減ったので、寒がりになりました。ずっと雪のなかでスポーツしてきたんですけど。
—引退したアスリートにありがちな変化というと、ほかにどんなことがあげられますか?
やはり、運動量と食事量のミスマッチですね。ストイックに節制していたアスリートだと、タガがはずれて食べすぎてしまう人もいます。ただ、女性にとっては栄養が潤沢に体に入ってくるようになるので、月経不順や貧血といった女性特有のトラブルが改善することも多いです。体脂肪はつきやすくなってしまいますけどね。
食べることは生きること。楽しめる方法を見つけた人が勝ちです(岡田さん)
私は現役中も楽しく食事をしていたので、急に食べ過ぎてしまうということはなかったんですが、40歳を境に運動を始めたのでむしろ食べないと、と思っています。体を動かすと頭もスッキリしますし、食事の時間もより楽しくなります。
食事を楽しむのはすべての人にとって大事なことですね。食べることは生きることですから。トレーニングやダイエットをして食事を楽しめないという人は、そのプランがどこか間違っていると思っていいでしょう。上村さんはずっと食事は楽しかったと話されているので、いろいろな取り組みもうまくいったんじゃないでしょうか。習慣化できるものしかうまくいかないので、楽しいやり方を見つけた人が勝つんですよ。
トレーニングをしているときは水って自然とたくさんとっているんですが、今は気がついたら全然とっていない、っていうことがあって。マッサージやトレーニングをしているときに、「あれ、ちょっとおかしいな」って思うときって、振り返るとだいたい水分をとれていない日なんですよね。
自分の体に敏感ですよね。自分の体をモニタリングして、自分の変化に気がつくことができる。トップアスリートに共通しているところですね。
—水分摂取以外に、現在気をつけていることはありますか?
油の選び方ですね。私は新鮮で少しピリッと辛さを感じるくらいの強いオイルが好きなので、調理でもなるべく新鮮な油を使うようにしています。自宅には、MCTオイル、ココナッツオイル、ごま油、アマニ油など、いろいろな油をそろえています。サラダやおみそ汁などに加えたりもして、質のいい油を体に入れるようにしています。
次回は、上村さんと岡田さんの最近の取り組みや今後の活動予定などについて伺いします。
<プロフィール>
上村愛子
元フリースタイルスキー/女子モーグル日本代表 オリンピアン。アルペンスキーからモーグルに転向して4年。初出場した長野五輪で一躍注目を集め、日本のエースとして常にメダルを期待される存在となる。世界トップ選手のひとりとして、日本勢の成績を数々塗り替えた。現在はスキー普及のため、メディアやイベントで雪との触れ合いの楽しさを伝えている。
岡田隆
日本体育大学 体育学部 教授/博士(体育科学)/理学療法士/骨格筋評論家。骨格筋評論家バズーカ岡田としてテレビなどのメディアに多数出演し、筋肉の啓蒙活動を積極的に行っている。『除脂肪メソッド』(ベースボール・マガジン社)『世界一細かすぎる筋トレ栄養事典』(小学館)『最強パワーエール 誰でも筋肉とメンタルは強くなる 筋トレで人生の主人公を取り戻す31日』(マイクロマガジン社)など、著書多数。
撮影/鈴木 謙介 取材・文/馬渕綾子