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CATEGORY : ダイエット |考え方

夏バテすると、やせるどころか太ってしまう!? やる気1%から始める やせる養生(3)

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夏バテしている女性

前回は、冷たいものを飲み過ぎたり、食べ過ぎたりすると胃腸が弱ってしまい、夏太りの原因になるという話をお伝えしました。胃腸を弱らせないように、できるだけ冷え冷えの状態のものを飲んだり食べたりしない、アイスクリームを食べるときは質のいいものを選んで温かいお茶も一緒にいただく。どちらもそんなに難しくないことなので、実践しやすいですよね。『やる気1%から始める やせる養生』(Gakken)を出版された、漢方家・櫻井大典さんと美容家・本島彩帆里さんに、夏のダイエットを成功させる秘訣を伺う第3回目は、「夏バテで食べる量が減ったのにやせない……」「代謝アップにいいと思って激辛料理ばかり食べていたら太ってきた……」という2つのお悩みに効く“やせる養生”をご紹介します。

Contents 目次

食欲不振でも食事制限でも、食べないとめぐりの悪い太りやすい体に

食欲不振の女性

夏バテのせいか食欲が落ちて、何も食べる気がしないから、食事の量はガクンと減った。それなのに体重はぜんぜん減らない。あまり食べていないのにやせないのはなぜでしょう?

「夏バテで食欲が落ちたり、夏風邪をひいたりしやすいのは、中医学的な体質分類では“気虚(ききょ)”の状態、と考えられます。体を構成する気血水のうち、気(エネルギー)が不足して元気がなくなった状態です。僕たちは普段、食べたものを胃腸で消化吸収し、気血水を作って全身に届け、不要な成分は便や尿として排出しています。気虚タイプは、元気がなく疲れているので、これがうまくいきません。すると不要な成分の排出も滞り、体内に余分なものが溜まったままになるのでやせられないし、さまざまな不調が出てくるのです。また、夏バテによる食欲不振とは関係なく、ダイエットというと多くの人が食事を“食べない”または“極端に減らす”という方法を試しますが、これも間違いです。ちゃんと食べないと、やせるどころか、かえって太りやすくなってしまいます。その理由のひとつは、体には一定の状態を維持しようとするホメオスタシスという働きが備わっているから。食べる量や摂取カロリーが一気に減ると、体は飢餓状態になったと判断し、もとの状態を維持するために脂肪を溜めこもうとするのです。さらに、命を守るために省エネモードになるので、基礎代謝も下がり、脂肪が燃焼しにくい体になってしまいます。たとえどんな理由であれ、食べない方法では健康的にやせることはできません」(櫻井さん)

胃腸をいたわる&ぐっすり寝る、それだけでやせ体質になれる!

眠る女性

あまり食べていないのに太るなんて、ショックすぎます……。この状態から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか?

「気虚の状態を改善するには、気を補う食材を食べましょう。一番のおすすめは、おかゆを食べること。おかゆは、“食べる胃腸薬”とも呼ばれるほど胃腸にやさしいので、食欲がないとき、お腹やお肌の調子が悪いときには、ぜひ数日間食べてみましょう。気を補いつつ、疲れた胃腸を元気にしてくれます。何か具材を加えたい場合は、同じく気を補う食材のサツマイモやカブを入れるといいですね。定番の梅干しをトッピングすれば、うるおいを補う効果も期待できます。このタイプの人は、食欲がないからといってご飯抜きの食事を続けたり、糖質制限ダイエットに挑戦したりすると、ますます元気がなくなってかえって太ってしまうのでNGです。また、食べる元気も出ないという人は、まず眠りましょう。ぐっすり眠って体と心を休めないと、ダイエットはうまくいきません」(櫻井さん)

「快適な睡眠のためには、パジャマの素材もポイントです。夏は吸湿性に優れたものがいいですね。とくに肌が弱い人は化学繊維を避けて、綿や麻、シルク、オーガニックコットンなどのパジャマを選ぶとより心地よく寝られるはず。形状は、タイトではなくゆったりしたシルエットのものを。フードがついていたり、ゴムのきついものは、快適な睡眠の邪魔になってしまいます。睡眠は自律神経の働きにも関わっていて、腸が活発に活動するのは、副交感神経が優位になる睡眠中です。ぐっすり寝ることで、腸の消化吸収や代謝活動をサポートしましょう」(本島さん)

刺激物のとり過ぎが、さらなるストレス食いを招くことに

辛い料理

激辛料理を食べて汗をかけば、代謝がアップしてやせるかも。そう考えて、スパイスたっぷりの激辛カレーや麻婆豆腐、担々麺と、連日辛いものを食べ続けていたら、汗はドバドバ出るけれど、太ってきた……。そんな場合は、何が原因でしょうか?

「辛いものを食べて汗をかくこと自体は悪いことではありませんが、激辛料理を連日食べるのは明らかにやり過ぎ。太ったのは極端な食事を続けたことで体質に偏りが生じたことが原因と考えられます。下痢や便秘をしやすくなっていたり、情緒が不安的になっていたりと、太っただけでなく不調も出ていないでしょうか。適度な運動をして汗をかくのであれば、次第に筋肉がついて基礎代謝量のアップも期待できるかもしれません。けれど、辛いものを食べることによる発汗や、高温のサウナでの発汗では筋肉は増えないので、残念ながら基礎代謝量のアップは期待できません。激辛料理や、そのほかにも強炭酸飲料やコーヒーなど、刺激が強いものを過度にとっていると、中医学的な体質分類では“気滞(きたい)”の状態、になってしまうんです。体を構成する気血水のうち、気の流れが滞った状態なのでメンタルの浮き沈みが激しく、ストレスを溜めて暴食しやすくなります。その結果、胃腸が不調になり、不要物の排出も滞るので、全身がむくんだり、太りやすくなるのです」(櫻井さん)

香りの強いものを食べる&ほぐしてゆるめる、リラックスがダイエットのカギ

グレープフルーツ

食べ物が、体はもちろんメンタルにまで悪影響を及ぼしてしまう……。ドカ食いしがちになるのは、体質が偏っているサインかもしれませんね。この体質を改善するには、どうすればいいのでしょうか?

「気滞の状態を改善するには、気を巡らせる食材を意識的にとりましょう。香りの強いものが気を巡らせるので、柑橘系の果物がおすすめです。果汁100%のグレープフルーツジュースなら日常的にとりやすいですね。おかずやサラダに、レモン、すだち、ゆずなどの果汁をかけて、香りを楽しみながら食べるのもいいでしょう。香りが強いものという意味では、香草(ハーブ)やスパイスなどもいいのですが、とり過ぎはNG。激辛料理の食べ過ぎで太ってしまったことからもわかるように、刺激物のとり過ぎは逆に胃腸に負担をかけてしまい、胃腸の弱りによる肥満を招くので要注意です」(櫻井さん)

「食事にちょっと香りの強いものをプラスすると、食べるときに五感が働きやすくなり、ゆっくり味わって食べることにもつながります。普段から五感を働かせていると、自分の状態や変化にも気づきやすくなるので、ちょっとストレスを感じたなと思ったときにもすぐに対処できるようになりますよ。五感を働かせてストレスを溜めないようにすることは、“やせる養生”の重要なポイントです。気滞タイプは、ストレスを溜めやすいタイプで、緊張して肩に力が入って上がっていたり、歯の食いしばりが多いのが特徴です。首をゆっくりじわ~っと伸ばしてこわばりをほぐしたり、頭のてっぺんにある百会(ひゃくえ)というツボを刺激したりして、交感神経が優位な状態から、副交感神経が優位な状態にシフトできるよう、ゆるめることを意識しましょう。これは、気圧や気温の変化で頭痛やだるさを感じているときのお助けケアにもなります。ストレッチポールなどを使って、体の側面をほぐしたり、伸ばしたりすることでも、“滞っている気”がスムーズに流れやすくなりますよ」(本島さん)

<自律神経をととのえる 壁を使った百会の自重ほぐし>

<自律神経をととのえる 壁を使った百会の自重ほぐし>

壁を背にして座り、後ろの壁に頭頂部を押しつける。頭を軽く前後左右に動かし、頭頂部にある百会のツボを自重で刺激し、ほぐす。

夏バテ気味の方、激辛料理を食べ過ぎている方に向けた“やせる養生”。いずれも簡単で、すぐに試してみようと思えるものばかりだったのではないでしょうか。“これならできそう!”と思えた“やせる養生”をまずはひとつだけでもやってみる。楽しみながらコツコツ続けていれば、夏のダイエットはきっとうまくいきます。

書籍では、「気虚」「気滞」タイプをはじめ、体質と太ってしまう原因別に計4つのタイプを紹介するとともに、その解消法をお伝えしています。ほかにもたくさんの“やせる養生”が掲載されているので、気になる方はぜひ手に取ってみてください。

写真/黒澤義教 イラスト/山中玲奈(体操) 文/出雲 安見子

『やる気1%から始める やせる養生』(Gakken)

やせる養生の書影

【著者プロフィール】

櫻井大典(さくらい・だいすけ)

漢方家。漢方コンサルタント。国際中医専門員。日本中医薬研究会会員。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。漢方薬局で働くようになり、学んだ中医学の食養生を実践してみたところ、1年で10 ㎏やせて、その後リバウンドもしていない。これまでに4万件以上の健康相談を受け、その人の体質に合わせた対処法をアドバイスしている。Twitter(X)で発信されるやさしいメッセージと、簡単で実践しやすい養生法も人気で、フォロワー数は17万人を超える。Twitter(X):@PandaKanpo

本島彩帆里(もとじま・さおり)

ダイエット・セルフケア美容家。心も体も不安定な万年ダイエッターから、カウンセリングや妊娠出産をきっかけに、心身とも健康的に1年3か月で20㎏やせる。自身のダイエットや、痩身サロンでセラピストとしてさまざまな女性の悩みに寄り添いサポートをしてきた経験を活かし、ダイエットや美容情報、ライフスタイルを発信。自分とのパートナーシップを軸にした、無理のない心と体のセルフケアが幅広い層に支持されている。著書は累計43万部超で、Instagramのフォロワー数は23万人を超える。自社でセルフケアブランドeume(イウミー)も手がけ、多様なプロダクトを通してできたことを増やす体験やメッセージを届けている。
Instagram:@saoooori89

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