“0 kcal”の表記を見ると、ダイエット中はとくに魅力的に感じてしまいますよね。こんにゃくやきのこ類、海藻類のエネルギー値をすべて0 kcalとしていた時代があったことをご存じでしょうか? それは日本食品標準成分表(以下、食品成分表)の四訂が使用されていた1982年~1999年まで。正しくはこれらのエネルギー値を定めることが困難だったことから「-」と掲載され、数値が記されていなかったものを当時0 kcalとして栄養計算をしていたということです。このことから“こんにゃくやきのこはいくら食べてもカロリーゼロ!!”そんな誤解が生まれるきっかけにもなってしまったのかもしれません。今回は、食品成分表のエネルギー計算にまつわるお話をしてみたいと思います。
Contents 目次
食品成分表におけるエネルギーの計算方法
食品成分表に掲載されている食品のエネルギー値は、実際に分析しているわけではありません。分析した【A:エネルギー産生栄養素】の値に【B:エネルギー換算係数】をかけることによって導きだされています。
食品のエネルギー値(kcal)=A×B の合計
A:エネルギー産生栄養素
炭水化物・たんぱく質・脂質を主要とする、その名のとおりエネルギーを生み出す栄養素です。ビタミン類やミネラル類などの栄養素はエネルギーを生み出しません。
B:エネルギー換算係数
エネルギーの利用率は食品別にちがいがあるという理由から、日本では食品成分表七訂(1982年~2019年)までは食品別にエネルギー換算係数を研究・使用しています。
係数が明らかでない食品は世界基準等を採用していました。
最新の食品成分表八訂(2020年~)からは世界基準に揃え、組成ごとのエネルギー換算係数が全食品共通で使用されることになりました。すなわち、計算で利用するAの種類もBの数値も大きく変更されたのです。食品そのものは同じなのに、【計算方法】の変化によって、エネルギー値が変化している…。不思議な話ですが、常に情報がアップデートされ、よりたしかな数値に近づいていると理解しています。
こんにゃく、きのこ類、海藻類の計算方法
少し話がむずかしくなってしまいましたが、こんにゃく、きのこ類、海藻類の計算方法の変化をまとめてみます。
○四訂(1982年~1999年)まで
・・・・・・ 「-」(計算不可)
○五訂~七訂(2000年~2019年)まで
・・・・・・暫定値としてエネルギー計算後に「0.5」をかけて算出
○八訂(2020年)から
・・・・・・世界基準に合わせた全食品共通の計算方法で算出
食物繊維が豊富なこれらの食品は、食べ方や個人の消化吸収力によってエネルギー値に大きく差が出るため、正しい数値がわからないというのが近年までの見解でした。最新の食品成分表では世界基準に合わせて“現在において最も確からしい数値”として発表されています。
計算方法のちがいによって、こんにゃく、きのこ類、海藻類のエネルギー値はこのように変化してきました。約25年前まで、しいたけ100gあたりのエネルギーは0 kcalと計算されていたのに、現在は25 kcalです。同じ食品でも、時代によってこれだけ数値だけが変動しています。これらの食品は低カロリーですが、0 kcalではないということは明らかであるようです。
「0kcal食品」の魅力と食べ方
いわゆるダイエット食品と呼ばれるものには「0kcal」と表記されるものが多く存在します。通常よりもエネルギーが低いことは事実であり、罪悪感が少ないと積極的に食べている人も多いはず。しかし、食事は何ごともバランスが大切です。0 kcalとはいえ、人工甘味料を使ったものは強い甘みを感じるため、甘さに鈍感になる、それだけを食べても満足感が得られにくい、食費がかさむ、などの点も知っておきましょう。食べ過ぎたときの調整食や、小腹が空いたときの間食などにとり入れていきたいですね。
0 kcalではありませんが、こんにゃくやきのこ、海藻は食物繊維が豊富で低カロリーのため、ダイエットには強い味方です。食べすぎた翌日のリセットおかずに、かさ増し食材に…うまく活用して、効率的に食事バランスを調整していきましょう。おいしく、そしてよくかんで食べることもお忘れなく!
<参考>
・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年,文部科学省,2023.
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
・渡邊智子,日本食品標準成分表2020年版(八訂)のエネルギー値について,日本栄養・食糧学会誌,大76巻 第1号5-14, 2023.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/76/1/76_5/_pdf
・香川昭夫,八訂食品成分表2022,女子栄養大学出版部,2022.