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作り置きおかずより気楽な“下ごしらえストック”で腸を整える「藤井定食」の考え方【料理研究家 藤井恵さんの美と元気の秘訣・第2回】
テレビ、雑誌などでいつも明るく元気な笑顔を見せてくれている料理研究家の藤井恵さん。でも、その裏側には40代後半の更年期からさまざまな不調に悩まされた過去があるのだそう。今回は、藤井さんの更年期を乗り切った食事改革、腸活や筋肉・美肌づくりにもつながっている『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)の時短ワザについてお話をうかがいます。
Contents 目次
手湿疹に悩まされて…料理研究家の仕事をしながら闘った更年期の不調
子育て、家事、料理研究家の仕事に忙しい日々を走り続け、今年57歳になった藤井さん。40代半ばからの更年期は女性ホルモンが急激に低下する時期ですが、藤井さんの体調にはどのような変化があったのでしょうか。
「当時は忙しすぎて疲れがすごくたまっていたのですが、子育てが一番、仕事が二番で、自分の体のことをあまり気にしていませんでした。“疲れているのが当たり前”になっていて、自分の体と向き合わなかったのがよくなかったなと思います。
疲れて肩がこっているから、ちょっと休んで体を伸ばそうとか、そういう気持ちも全くありませんでした。朝起きるとひざが痛いのは当たり前。50歳が近くなる頃は、立ち上がると生まれたての小鹿みたいにひざがガクガクすることもありました」
藤井さんが特に悩んだ不調が、料理家の仕事を支える手に現れた手湿疹です。
「更年期にホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)はほとんどなかったのですが、手湿疹に悩まされました。足から湿疹がはじまってどんどん体の上に出て、手の内側、次に外側に出てさらに手指の3本の爪が剥がれて…。なかなかよくならず、毎日痛くなったり、かゆくなったり腫れたりしました。
手湿疹が出ているとき、雑誌の撮影では料理のでき上がりを撮るので調理中に手袋ができるのですが、テレビでは調理をしているシーンを撮影するので手袋をして作ると目立ってしまって…。当時、番組を見ていただいた方は、なぜ藤井先生は手袋をするのかなと疑問に思われたかもしれません。
そのときは、更年期の不調というとホットフラッシュの症状が出るという知識しかありませんでした。手湿疹が出ても皮膚科しか受診をしていなくて、治るまでに5年ほどかかりましたが、今思うと婦人科で診てもらえばよかったなと思っています」
自分の体と向き合い、腸活の発酵食品、海藻、きのこを足した「藤井定食」へ
年齢を重ね、藤井さんは健康に関する料理の仕事をすることが多くなり、自分の体と向き合うようになったといいます。
「腸活、更年期、筋肉や骨づくりなど、健康系の料理の仕事をするたびに知識が増え、自分の体を整えるために今の食事に何が足りないのかを振り返るようになりました。
30代までは、とにかく野菜!野菜!で、緑黄色野菜をたくさんとることに意識が向いていたのですが、腸活レシピの仕事をしたときに、私の食事には発酵食品、海藻、きのこが足りないことに気づいて、食事改革をしたんです」
食事“改革”といっても、生活の中で無理なく負担なく作って、食べることを楽しむのが藤井さん流。藤井さんの普段の献立を紹介しているレシピ本の『THE 藤井定食』(ワン・パプリッシング)では、腸活食材を毎日手軽においしくとる工夫を知ることができます。
腸活のために藤井さんがほぼ毎日とるようになったのが発酵食品の「納豆」です。
「いろいろなメーカーの納豆を選び、多様な納豆菌を体にとり入れています。私は5㎝角ほどの小皿に納豆(1食1/2パック)を盛ることが多いのですが、食器洗いが面倒ならもちろんパックのまま気楽に食卓に出しても。納豆とめかぶを合わせた“めかぶ納豆”、生卵を加えてよく混ぜた“ふわふわ納豆”もおすすめです」
海藻、きのこの「下ごしらえストック」で腸活おかずが手間なく作れる
日常の食事で意識しないと欠けてしまいやすいのが「海藻」。『THE 藤井定食』では、カットわかめや乾燥芽ひじきをもどして冷蔵庫にストックしておき、食事作りのときすぐ使えるようにする「もどし乾物」の時短ワザも紹介されています。
「ひじきの料理は煮ものをイメージしがちですが、“もどしひじき”をストックしておけば、汁もの(上の献立写真参照)、卵焼き、あえものなどいろいろな料理に気軽に使えて海藻をとりやすくなります」
さらに、藤井さんの下ごしらえストックのレシピの中で目を引くのが、「ゆできのこ」です。
「きのこは、あえて強めの塩分でさっとゆでると香りやうまみが残り、つるんとした口当たりになります。
みそ汁(上の献立写真参照)、おひたし、ナムルなどアレンジ法はいろいろ。汁ものに入れると、汁にはうまみが出ないのですが、きのこの素材感が活きてすごくおいしくなるんです。もちろん、きのこを冷凍ストックして使うのもよいと思います」
また、緑黄色野菜も美肌づくりや風邪予防のために積極的にとりたい食材。食事の準備のたびに、いちから切って鍋にお湯を準備してゆでて…となると手間も時間もかかりますが、それを解決する時短ワザも!
「にんじんをスライサーで細切りにしてから塩をふり、もみ込まずにやさしくふんわりと混ぜるだけで、素材の色、食感、風味が損なわれず、おひたし、あえもの、サラダなど幅広い料理にアレンジできます。
また、小松菜、ブロッコリーなどのアクが少ない野菜は、鍋にたっぷりのお湯を準備してゆでなくても大丈夫。フタ付きのフライパンに入れて水と塩を少し加えて蒸しゆでにし、水をきって冷蔵庫でストック。煮びたし、ナムル、汁ものなど、いろいろな料理に使えます」
植物性+動物性のWたんぱく質で、きちんとお腹が空く健康食に
たんぱく質は、筋肉、骨、皮膚など体づくりに必要な栄養素。藤井さんは「大豆や大豆製品の植物性たんぱく質をメインにして、肉・魚の動物性たんぱく質を少し足す」ことを意識して献立を考えているそうです。
「大豆製品は納豆、豆腐、厚揚げ、豆は糖質が少なめの大豆、青大豆、黒大豆を選ぶことが多いです。植物性たんぱく質と動物性たんぱく質を合わせると、動物性脂肪が抑えられて体にいいばかりではなく、うまみが合わさってすごくおいしくなるんですよ」
「たとえば、こちらの豆腐ハンバーグ。豆腐にひき肉を入れて混ぜると豆腐だけよりもぐっとおいしくなるし、動物性脂肪が少なめなので、次の食事のときに“お腹がきちんと空く”という面でも健康的です。
以前、Wたんぱく質や豆腐レシピの本の料理撮影をしたとき、5日間ぐらい試食で大豆製品の料理をスタッフで食べたのですが、みんな口をそろえてお通じが快腸だと言っていました(笑)」
更年期を乗り越えて50代後半に入り、料理研究家として活躍し続ける藤井さんの食事はさらに進化中です。
「今まで育児、家事、仕事をがんばってきたごほうびとして楽しく遊びたい(笑)。そのためには、健康が一番大切だと思っています。
最近では、“脳のサビ”をためないことを意識していて、私の食事にはくるみなどのナッツ類、ベリー類が足りないことに気づいて足しています」
まだまだ気になる藤井恵さんの美と健康の秘訣。次回は、藤井さんの朝型の生活スタイル、忙しい中でも“ながら”でできる運動や美容法、心の整え方などについてお話をうかがっていきます。
取材・文/掛川ゆり 撮影/安藤佐也加
【プロフィール】
藤井 恵
1966年生まれ。料理研究家。管理栄養士。女子栄養大学在学中から恩師のもとで料理番組のアシスタントを務める。長女の出産を機に専業主婦となり、節約料理や子どものお弁当のレシピをノートに書き留める。主婦向けの雑誌に節約料理が掲載されたことをきっかけに、30代から料理研究家に。簡単、時短、おいしくてヘルシー、さらにセンスのいい料理にファンが広がり、幅広い世代から支持を受けている。現在は、東京・長野・韓国を行き来し、素材とていねいに向き合いながらレシピを開発中。自身のInstagram(fujii_megumi_1966 https://www.instagram.com/fujii_megumi_1966/?hl=ja)で公開している定食を読みやすいレシピと美しい写真でまとめた『THE 藤井定食』(ワン・パブリッシング)は、発売からすぐに増刷を重ね、現在6刷と大好評。『からだ整えおにぎりとみそ汁』(主婦と生活社)、『藤井弁当』(Gakken)など著書多数。