やせるためにはまず糖質をカットすることを考えますが、「極端に糖質制限をすると筋肉が減ってしまい、かえって引き締まらない体になってしまいます」と各種指導者へのパーソナル指導を手がけるスポーツ&サイエンス主宰の坂詰真二さん。長い目で見ると、糖質、たんぱく質、脂質のバランスを整えることが最もダイエットに役立ちます。今回は、坂詰さんの初の育筋食本、『筋肉がよろこぶ最高の食べ方』(宝島社)から、育筋食の基本についてお伝えします。
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糖質を減らしすぎるとやせにくくなる
糖質を通常の半分以下に減らすような糖質カットは厳禁です。
なぜなら私たちは安静にしているだけでも、生命を維持するメインのエネルギー源として糖質が必要だからです。糖質を抜いてしまうと、体内のたんぱく質を肝臓で分解して糖に変換し、それをエネルギーとして使わざるを得なくなってしまいます。そもそも糖質をとって血糖値を上げ、インスリンというホルモンが分泌されないと、筋肉内でのたんぱく質合成は促されません。
ボディビルダーがささみ肉とブロッコリーばかり食べているという話を見聞き したことがあるかと思いますが、あれは体脂肪を減らしていく大会前などの短期間だけのこと。むしろふだんは筋肉量を増やすため、糖質豊富な白米も麺類もポテトも、じつはケーキやお菓子類なども食べています。
これはたんぱく質も同様。たんぱく質を必要以上にとると、消化吸収しきれな いたんぱく質が腸内の悪玉菌のエサとなり、腸内環境が悪くなります。余ったたんぱく質を分解して排出するために、肝臓や腎臓に負担もかかります。糖質も脂質もタンパク質も、大切なのは適正量をとることです。
PFCのバランスに注目してみよう
大切な指標はPFCバランス。Pは Protein=たんぱく質、Fは Fat=脂質、Carbohydrate=糖質です。一般的には、たんぱく質13~20%、脂質20~30%、糖質50~65%のバランスが推進されていますが、育筋をしながら脂肪を減らす場合は、たんぱく質25%、脂質20%、糖質55%になります。
1日の消費エネルギー量は基礎代謝量に「生活活動強度」というものをかけて出します。事務職や専業主婦など、運動量が少ない人であれば、1.5をかけます。
たとえば30〜49歳女性で体重が55kgの場合、基礎代謝量は1190 なので 1日1785kcalとなります。
これと同じエネルギー量を摂取すれば体重はキープされ、多ければ体重が増えます。育筋では筋肉をつけながら体脂肪を減らすので極端に摂取エネルギー量を減らすのは厳禁。
スタート時の体重と体脂肪率によって異なりますが、消費量と同じか、1~3割少ない量を摂取するようにします。
それぞれのPFC摂取の目安量は?
たんぱく質摂取量の目安
育筋食の中心ともいえるたんぱく源をとるときに注意したいのは脂質です。肉 や魚、大豆、牛乳にはカロリーを引き上げる脂質も含まれるからです。
とるべきたんぱく質は先に計算したように、筋トレをする人は体重×1.6gなので女性は80~100g程度。
これを3分割すると1食あたりでとるべきたんぱく質量がわかります。女性は25〜35gです。これを中心に献立を考えます。
高タンパクかつ低脂質な食品の栄養成分(100gあたり)は、
鶏むね肉(皮なし)・・・たんぱく質・約22g、脂質・約1.5g、エネルギー・約110kcal、
まぐろ(赤身) ・・・たんぱく質・約26g、脂質・約1.4g、エネルギー・約 120kcalです。
逆に脂質が多い食品は、豚バラ肉・・・たんぱく質・約14g、脂質・約35g、エネルギー・約380kcal。
うなぎ(蒲焼き)・・・たんぱく質・ 約23g、脂質・約21g、エネルギー・約290kcalです。
脂質摂取量の目安
育筋では1日の摂取エネルギー量の20%程度を脂質からとります。男性は 400~500kcal、44〜55g、女性は300~400kcal、33〜44gになります。これを3分割すると1食あたりにとるべき脂質の量は、男性で 145kcal、16g程度、女性は120kcal、13g程度です。
食用油はどれもカロリーが同じで1gあたり10kcal。大さじ1杯(12g) あたり120kcalです。バターは1gで8kcalです。
育筋では脂質の多い食品を避けたほうがよいですが、脂質も重要な栄養素なので過度に神経質になる必要はありません。ただしとりすぎを防ぐため、バターやマヨネーズ、ドレッシングの使いすぎは避け、調理法はなるべく蒸し料理やゆで料理を選び、脂質の多い食品は脂を少しカットするか残しましょう。
糖質摂取量の目安
育筋では1日の摂取エネルギー量の55%程度を糖質に設定しますので、男性はおよそ1250kcal、女性はおよそ1000kcal。これを3分割すると1食あたりでとるべき糖質の量は、男性で約420kcal、100g程度、女性で約330kcal、80g程度です。
糖質を多く含む主食の代表はご飯。茶碗1杯150gは約250kcalで糖質約8gと、約0.5gの脂質と約4gのたんぱく質が含まれています。普通にご飯を食べる分には糖質をとりすぎる心配はないのです。
スパゲッティ1人前(250g)は約370kcalで糖質は約70g、脂質は約2g、たんぱく質は13g。スパゲッティを含めた麺類の場合は、主菜や副菜がつかず、麺類単体で食事が構成されやすいため、量が多くなりがちで、その結果 糖質の量も増えることが問題です。麺はあくまでも主食として考え、別途お肉や魚などの主菜や野菜メインの副菜をつけて、麺の量を抑えましょう。
食事制限では「減らす」ことばかりに目が行きがちですが、それがストレスになって余計に食欲を増し、やがてザセツにつながります。そうではなくバランスを考えてみること、それだけでも育筋には効果があり、さらに食生活を改善する気持ちを後押しすることにもなるのです。
文・写真/庄司真紀
参考書籍
坂詰 真二『筋肉がよろこぶ最高の食べ方』(宝島社)