「低酸素トレーニング」といえば、マラソン選手を筆頭にトップアスリートがとり入れていることでおなじみのトレーニング法。でも最近の研究で、一般の人々のダイエットや生活習慣病の予防にも効果があることがわかってきました。都内には低酸素環境でのトレーニングが体験できるスポーツジムも増加中! そこで今回は、トレーニング科学を専門とする立命館大学スポーツ健康科学部・後藤一成教授によるセミナーに参加し、「低酸素トレーニングって本当に効果があるの?」「どうやってとり入れたらいいの?」といった疑問を解決してきました。
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アスリートはもちろん、一般の人も要注目!
そもそも「低酸素トレーニング」とは、酸素が少ない場所で運動を行うトレーニング法です。通常のトレーニングに比べて、体がより多くの酸素をとり込もうとするため最大酸素摂取量が増加。すると、持久力が向上するほか、スピード力アップの効果があることが明らかになりました。
アスリートの競技力向上だけではなく、一般の人の健康にも役立つことが知られ始めたのは2010年以降のこと。「肥満男女が4週間にわたって低酸素トレーニングを行なったところ、体脂肪率が大きく減少した」というオランダの調査結果を皮切りに、国内外で同様の結果が続々と発表されました。
食欲を抑えるホルモンの働きで、体脂肪が減少
「低酸素トレーニング」を私たちのダイエットに活用できるのはうれしい話ですが、なぜ体脂肪が減少するのでしょうか。その答えのカギを握るのは、「食欲」。
胃から放出される「グレリン」というホルモンには食欲を増進する機能がありますが、低酸素の環境下ではこの「グレリン」が大きく減ることが明らかになったのです。
東京都内では、豊洲にアシックスの低酸素トレーニングジムがオープンするなど、近年はこうした施設がどんどん増えています。例えば、朝に低酸素トレーニングジムで運動を行なうと、そのあとは1日中食欲が抑えられるため、ダイエットに役立てることができるといえそうです。
鉄欠乏症の人が、炭水化物ダイエットをやるべきでない理由
さらに、セミナーでは貧血や立ちくらみに悩む女性にとって気になる研究結果が発表されました。女性アスリートの多くは鉄欠乏の症状に悩まされていますが、これは運動すると肝臓から分泌される「ヘプシジン」というホルモンが鉄の吸収を阻害するため。とくに、炭水化物の摂取を制限した状態では「ヘプシジン」の値が高くなるため、鉄欠乏のリスクが高いことがわかっています。
また、とくに運動を行わずに3日間炭水化物の摂取制限をするだけで「ヘプシジン」が増加したことも判明。最近は炭水化物を制限するダイエットが流行っていますが、貧血や立ちくらみなどの症状がある女性にとっては悪影響を及ぼす原因になるのだとか。炭水化物を抜くのではなく、炭水化物を摂取することで「ヘプシジン」の分泌を抑制するというのも鉄欠乏の症状を悪化させないためのひとつの方法なのかもしれません。
最近は、低酸素の環境が「ヘプシジン」の抑制にも効果があるとわかってきています。もちろん、効率的に体を鍛えたい人にもおすすめ。
忙しい女性こそじょうずに低酸素トレーニングをとり入れて、ダイエットや健康的な体作りに役立てみませんか?
取材・文/わたなべゆきこ