加齢とともに気になってくるニオイもあります。ミドル脂臭や加齢臭です。こうしたニオイは男性に多いイメージですが、女性にも発生します。『日本人はなぜ臭いと言われるのか~体臭と口臭の科学』の書著で、ニオイにくわしい桐村里紗先生に、ミドル脂臭・加齢臭についてうかがいました。
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枕がニオったら、ミドル脂臭のサイン!?
30代になったら、そろそろニオイに気をつけましょう。30代から40代にかけては、ミドル脂臭という独特のニオイが出やすくなります。
「ミドル脂臭は、ジアセチルというニオイ成分が原因で、汗に含まれる乳酸から発生するジアセチルと皮脂の中に含まれる中鎖脂肪酸が合体して発生します。いわば、汗と皮脂の混合臭です。特に、後頭部から首すじの後ろに発生することが多く、枕がくさくなります。枕がにおったら、ミドル脂臭といえます」
ミドル脂臭は、皮脂の分泌が多い男性特有のニオイといわれてきました。「しかし、近年は、女性にも発生することがわかっています。男性に比べて髪の量が多いため、頭皮に汗や皮脂がこもりやすく要注意です」
頭皮のミドル脂臭対策は、シャンプーのしすぎに注意
ミドル脂臭が発生しやすい頭皮は、しっかりケアしていきましょう。
「ニオイ対策には、シャンプーで頭皮の皮脂を落とすことですが、シャンプーのしすぎは逆効果。手頃な価格の市販シャンプーには、ラウリル硫酸、ラウレス硫酸などの洗浄力や脱脂力の高い界面活性剤が含まれているものが多いです。皮脂を落としすぎると、防御反応でかえって皮脂の分泌が高まり、マラセチアというカビ菌を増やし、脂漏性湿疹を招きます。そうなるとフケが出て、毛穴がつまり、よりニオイがひどくなることも。シャンプーは1日1回にしましょう。頭皮にやさしいのはアミノ酸系シャンプーです。頭皮の汗やニオイが気になるなら、2回目以降はお湯で洗い流す“湯シャン”がおすすめです」
夏は、汗対策も一緒に行うと、ニオイの改善には、より効果的です。
※関連記事「汗臭対策! 汗のニオイを防ぐには、ベタベタ汗をサラサラ汗に変えるのがカギ」から汗対策を見ることができます。
女性も加齢臭で、おじさんくさくなる?
更年期を迎えたら、気をつけたいのが加齢臭です。
「加齢臭は、ノネナールというニオイ成分が原因で、枯れ草、古本のようなひなびたニオイが特徴です。ノネナールは、皮脂に含まれるパルミトオレイン酸が酸化して発生。糖質や脂質の多い食事をとっていると皮脂が増えて発生しやすくなります。閉経で女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモンが増えることで、皮脂の酸化が起こりやすくなり、加齢臭も発生しやすくなります」
加齢臭というと、中年男性のニオイを想像して、「自分からそんなニオイが?」と不安になるかもしれませんが、「中年以降の男性のいわゆる“おじさん臭”は、ミドル脂臭、加齢臭に加え、老人臭も入り混じっていると考えられます」と桐村先生。
女性の場合は、男性より皮脂の分泌自体が少ないため、それほど心配する必要はないかもしれませんが、やはり加齢臭がしたら、がっかりしてしまいますよね。しかし、桐村先生は次のように話します。
「フレグランスのスペシャリストは、加齢臭に関して、『ノネナールは、年齢を重ねた成熟した香り。フローラル系の香りに少し混ぜると、奥行きのある香りになる』と言っています。年齢とともに変化する体臭は成熟とも捉えられ、気にしすぎずにポジティブに考えることも大切かもしれませんね」
加齢臭の予防は、抗酸化力UPがカギ
加齢臭を防ぐには、体の抗酸化力を高めることがカギ。それには有酸素運動、リラクゼーションが効果的です。
「有酸素運動は、酸素をたっぷり吸いながら行うので、いったんは細胞内で活性酸素が増えますが、少しの酸化を与えることで、体はこれを克服しようとして、抗酸化力が高まります。暑い時期は熱中症に注意しながら、ウォーキングなどを行いましょう。だらだら歩くのではなく、軽く息が上がり、少しきついと感じる程度の速さで歩くことが大切です。
また、ストレスは、活性酸素を発生させます。ストレス対策には、ゆったりと入浴をして、睡眠をとることが大切。ブルーライトは脳を覚醒させてしまうので、就寝2時間はスマートフォンの使用は控えます。ゆったりと呼吸をすることは、意識的に高ぶった交感神経をしずめ、副交感神経優位に切り替えられるので、リラクゼーション法としておすすめです。5秒かけて息を吸って、5秒かけて吐く、というリズムで、呼吸を3〜5分程度くり返しましょう」
取材・文/海老根祐子