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現代社会ではどうしても睡眠時間が犠牲になりがち。それほど極端でなくても、毎日の生活では多少なりとも変動があることでしょう。このたび、その変動によって、ふだんの出来事に対する感情的な反応に違いが出るという報告がありました。基本的に寝不足だと喜びや興味、積極性といったポジティブな感情が薄れてしまうようなのです。
電話インタビューによる8日間の睡眠調査
今回、アメリカとカナダの研究グループが行ったのは、日常生活での睡眠時間の変動とふだんの出来事に対する反応との関連性を探るもの。
アメリカ国民の日常生活、特にふだんのストレス体験を調べた大規模調査の参加者を対象に、2000人近くのデータを分析してみました。参加者は8日間にわたって毎日、睡眠時間と、辛く嫌な出来事、ハッピーになれるいい出来事、それに対する感情的な反応などについて、電話によるインタビューに回答しています。
うれしい出来事でも辛い出来事でも低下
ここから見えてきたのが、寝不足の日はポジティブな感情が低下することでした。自然のなかで過ごしたとか、誰かとハグしたといったハッピーな出来事があっても、よく寝られなかった日ほどうれしい気持ちになれなかったほか、言い争いや職場・家庭でのストレスといった辛い出来事に際しても、ポジティブな感情が大きく下がっていたのです。研究グループは以前に、ストレスを受けるような出来事に直面してポジティブな感情を保てないと、体に炎症反応が起きたり、早死にしやすくなったりする危険があるという研究結果も報告していますから、健康にも大きな影響がありそうです。
また、心臓の病気や糖尿病、がんなどの慢性的な病気をもっている人では、よく眠る効果が強く見られ、ふだんより長く寝た日はうれしい出来事に対するポジティブな反応が強くなりました。このような結果から研究グループは、睡眠時間が多少違うだけでも、日常生活の出来事に対する反応に影響が出ると結論。睡眠時間は少なくとも7時間が推奨されているのに、成人の3人に1人がこの基準を満たしていないと指摘して、生活の質を向上し、長い間健康でいられるように、睡眠がもっと優先されることを期待しています。
<参考文献>
New research finds people react better to both negative and positive events with more sleep
https://news.ubc.ca/2020/09/15/new-research-finds-people-react-better-to-both-negative-and-positive-events-with-more-sleep/
Sin NL, Wen JH, Klaiber P, Buxton OM, Almeida DM. Sleep duration and affective reactivity to stressors and positive events in daily life [published online ahead of print, 2020 Sep 7]. Health Psychol. 2020;10.1037/hea0001033. doi:10.1037/hea0001033
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32897097/
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星 良孝 <ステラ・メディックス>
ステラ・メディックス代表取締役社長/編集者 獣医師 専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修をサポートしている。代表取締役の星良孝は、東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。https://stellamedix.jp
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