ただでさえ心身ともにストレスがかかる妊娠と出産。コロナ禍では、勝手が違って大変なのではないかと容易に想像されます。そうしたなかで、このたび、新型コロナ関連の不安や失望から、出産前後のうつ病、不安障害、PTSDが増加しているという報告がありました。もともとメンタル面で問題があった人では特に多かったそうです。
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2020年5月〜8月に米国で調査
出産前後の期間は、精神的に特に不安定になりやすく、産後うつも一定の割合で見られます。日本でも産後うつの問題がクローズアップされるようになっています。新型コロナウイルス感染症の関連も疑われています。
そこでこのたび、ハーバード大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが出産前後の女性にどのように影響しているか調べてみました。
対象としたのは2020年5月から8月にかけて妊娠中または出産直後だった米国女性1100人余り。新型コロナウイルス感染症に関連した健康上の心配事や悲しい体験を評価するための標準的な質問方法を使用したほか、メンタル面での症状について、現在の状態や過去の診断などを調査しました。
精神的なストレスを感じる人が増加
こうして浮かび上がったのは、うつ病、不安症、PTSDの増加です。パンデミック以前、産後うつの割合は一般的に15〜20%と考えられていましたが、それが約36%(3人に1人)に増え、不安症は約23%(5人に1人)、PTSDは約10%(10人に1人)に見られました。
以前にメンタル面の病気で診断を受けた人のグループでは、診断を受けていない人たちに比べて、これら3つの症状の割合が1.6〜3.7倍でしたが、過去の病気に関係なく、精神的なストレスの増加が見られました。パンデミックにより強い悲しみや喪失感、失望などを抱いた人は全体の9%を占め、特にこのグループでは精神的な症状を示す割合がおよそ5倍、パンデミックのせいで「健康をかなり心配」しているグループ(18%)では最大で4倍でした。
今回の研究参加者は主に口コミやSNSなどを通じて集めたため、90%が白人で大学教育を受け、配偶者と暮らしている経済的には恵まれている女性で、データは偏っている可能性もあると研究グループ。また、研究の性質上、因果関係は確立できません。
それでも研究グループは、パンデミックの初期、感染リスクに対する恐れから、家族や友人の支援など通常であれば得られる助けがうまく受けられずにいた点を指摘。新型コロナに関連した心配や悲しい体験のせいで、精神的な症状を示す確率が高くなっている可能性があると結論。パンデミック以降、オンラインの利用など革新的な環境も整いつつあるため、メンタル面でのケアが必要な人は積極的に求めてほしいと励ましています。
<参考文献>
COVID-19 May Deepen Depression, Anxiety, and PTSD Among Pregnant and Postpartum Women
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=3743
Liu CH, Erdei C, Mittal L. Risk factors for depression, anxiety, and PTSD symptoms in perinatal women during the COVID-19 Pandemic. Psychiatry Res. 2020 Nov 4:113552. doi: 10.1016/j.psychres.2020.113552. Epub ahead of print. PMID: 33229122.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33229122/
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165178120332133