足には、『内側の縦アーチ』『外側の縦アーチ』『横アーチ』という3つのアーチがあります。こうしたアーチのくずれで起こる扁平足や開張足は、足の痛みや外反母趾などの足の変形を招く原因にもなります。扁平足、開張足のリスクとケア方法について、日本で唯一の足の総合病院「下北沢病院」の菊池守院長に話を聞きました。
Contents 目次
扁平足が足の疲れや変形の原因に
足に合わない靴や歩き方のクセなどで、足のアーチがくずれてしまうことがあります。そのひとつが扁平足です。
まず、足には3つのアーチがあります。
【扁平足の原因】
扁平足は、かかとと親指のつけ根を結ぶ『内側の縦アーチ』(1)がくずれることで、土踏まずがくずれてバランスが悪くなってしまう状態です。
内側のアーチがくずれる原因は、さまざまです。
「扁平足は、ハイヒールを長くはき続けることでアキレス腱が短く、かたくなったり、加齢で内側のアーチを支える筋肉が弱くなったり、出産によって靱帯がゆるんだりして起こります。年齢が上がるにつれてリスクが高くなりますが、そもそもアジア人に扁平足は多く、若い人でも遺伝的要素で扁平足が見られる場合があります。足が疲れやすく、ハンマートゥ*、開張足(『横アーチ』がくずれた状態)、外反母趾など足の変形の原因にもなります」(菊池先生)
*ハンマートゥ……足指の関節が曲がって、もとに戻せなくなった状態のこと
【扁平足の特徴】
扁平足の場合、歩き方や靴の状態に次のような特徴が現れます。
「足の内側のアーチがくずれている扁平足の足は、うしろから見るとかかとが内側に倒れているのがわかります。それによって、靴の内側が型くずれを起こしたり、靴底の内側がすり減ってきたりします。また、長時間歩いていると、土踏まずや親指のつけ根あたりに痛みが出ることがあります。歩くときに前へ進む力も弱く、“ペタペタ歩き”になるため、足がだるくなったり、疲れやすかったりもします」
あなたは大丈夫?
扁平足かどうか、チェックしてみましょう。
□足を引きずって歩く
□歩くと疲れる
□歩くのが遅い
□内またで歩く
□靴の内側が型くずれを起こしやすい
□スニーカーのベロが外側にずれる
□かかとの内側がすり減る
ひとつでも思い当たることがあれば、扁平足かもしれません。
また、扁平足になると、下図のような足の位置にタコができやすくなります。
「歩くときに、アーチが適度に沈み込まないため、着地時の衝撃を足指のつけ根やかかとに受けやすく、その部分が痛むことがあります。ハイアーチの人は、親指、小指、かかとの3点で立っている状態で、これらの部分にタコができやすいです」
また、ハイアーチの場合、足の重心が外側に傾くため、靴底は外側が減りやすくなる、という特徴もあります。
横アーチがくずれて「開張足」に
一方、親指から小指までのつけ根を結ぶ「横アーチ」がくずれた状態が開張足です。
【開張足の原因】
「開張足は、扁平足に伴って起こることが多いです。扁平足と同様に、妊娠・出産で靱帯がゆるんだり、加齢でアーチを支える筋肉が弱ったりすることも原因です」
【開張足の特徴】
足指のつけ根の横アーチがくずれることで、足先が幅広になります。「靴のサイズが大きくなることもあります」と菊池先生。
また、「横アーチがしっかりとあれば、歩行時の衝撃を親指と小指で受け止めますが、開張足になると人さし指と中指で衝撃を受け止めるため、この2本の指のつけ根に縦にタコができやすくなる」という特徴もあります。
●開帳足の人に多いタコの位置
アーチくずれや足の変形の進行を防ぐセルフケア
【セルフケア】
「扁平足、開張足は、軽度であれば、足の筋トレでアーチくずれの進行や外反母趾などの足の変形を防ぐことができます」と菊池先生はアドバイスします。
○アキレス腱ストレッチと足の筋トレで、足の変形を防ぐ
足の変形など、さらなるトラブルを防ぐために、ふくらはぎとかかとをつなぐアキレス腱のストレッチと足のアーチを支える筋肉をトレーニングしましょう。
【アキレス腱ストレッチ】
〈1〉両手を壁につき、片方の足を1歩うしろに下げる。つま先はまっすぐに前を向け、かかとが浮かないように注意。
〈2〉壁に体重をかけながら、前側のひざをゆっくり曲げる。アキレス腱が伸びていることを感じながら、30~60秒キープ。うしろの足のひざは曲がらないように。足を入れ替えて、同様に行う。各5回ずつ。
【後脛骨筋トレーニング】
しかし、足の筋トレではアーチのくずれをもとに戻すことはできません。
「歩行時には、靴にアーチを支えるインソールを入れて」と菊池先生。靴にインソールを入れて、アーチを下から支えることで、正しい歩行ができるようにしましょう。
○インソールで歩行をサポート
扁平足と開張足に向くインソールは次の通りです。
【扁平足をサポートするインソール】
【開帳足をサポートするインソール】
扁平足の場合は、靴選びにも注意が必要です。
○扁平足には、やわらかい靴はNG
扁平足の場合、足の重心が内側に傾くため、靴は、サイドとかかとに芯の入ったしっかりとした作りのものを選びます。
「軽くて、やわらかい靴だと内側に負荷がかかって型くずれを起こし、内側部分がカパカパになってしまい、さらに足が内側に傾くことで、扁平足が助長されてしまいます。ミュールやバブーシュタイプのかかとのない靴も、かかとに痛みが出ることがあるのでNGです。やわらかいキャンバス地のスニーカーも、扁平足の人には向きません。サイドに芯が入ったスニーカーがおすすめです」
〈参考書籍〉『“歩く力”を落とさない! 新しい足のトリセツ』(下北沢病院医師団・著/日経BP)
取材・文 海老根祐子