10月9日(土)にFYTTEのファンコミュニティ「Fan!Fun!FYTTE」のオンラインクラスを開催しました。今回の講師は、Twitterのフォロワー数が15万人を超える、大人気の漢方家・櫻井大典さん。乾燥や冷えが本格化してくる秋におすすめの養生法と、自分でできる「おうち健診」で体質をチェックする方法を教えていただきました。その一部をレポートとしてご紹介します!
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陰と陽が入れ替わる秋は、じつは心身への負担大
読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、あなたはどんな秋を楽しんでいるでしょうか。秋は1年の中でも過ごしやすい季節というイメージがありますが、櫻井さんによると秋こそ養生を意識してほしい季節だそうです。
「秋は中医学(東洋医学の一種で、2000年以上の歴史を持つ中国伝統医学)では、陰陽転化の時期とされています。夏の暑さで強まっていた陽気(陽)が次第に収まり、冷気(陰)が徐々に強まっていくという過渡期なので、過ごしやすい季節ではあるものの、体や心には負担がかかります。
中国最古の医学書とされている『黄帝内経(こうていだいけい)』には、“この季節には鳥の寝起きのように早く寝て早く起きることが大事であり、心を安らかにして精神を落ち着かせ、秋の気が体を損なうことのないように、やたらと動き回って肺を冷やさないように過ごす。これが秋の季節に調和した養生である”とあります」(櫻井先生)
中医学的には、読書の秋とはいっても熱中しすぎて夜更かししてはダメ、スポーツの秋だけれどハードすぎる運動は避けたほうがいいということですね。
そして、肺を冷やさないようにとありますが、肺の概念が西洋医学とは少し異なるそうです。
「中医学でいう『五臓(ごぞう)』のひとつである『肺』は、臓器の肺よりも広い働きを持つとされています。呼吸によって酸素をとり入れてそれを体のエネルギーに変えたり、体内に水分を循環させたりする働きを担っており、エネルギーと潤いをコントロールする重要な器官ととらえられています。ですから、皮膚や粘膜とも関係が深く、いわゆる免疫系にも関連します。肺は外気と直接ふれる器官なので、秋の乾燥した冷たい空気によって弱りやすいのです。肺が弱ると、風邪をひきやすくなったり、肌も乾燥しやすくなったり、さらに肺は大腸とも関係してくるので便秘にもつながります。また、肺は悲しみという感情とも結びつきが強いので、肺が弱ることで感傷的になったり、情緒不安定になったりもします」(櫻井先生)
乾燥で肺が弱るというのはイメージしやすいですが、免疫力の低下や皮膚トラブル、便秘や感情の落ち込みにもつながっているなんて、驚きますね。こうした症状が思い当たる人は、ぜひこれからご紹介する秋の養生法をお試しください。
秋の養生の大原則は、肺をいたわること
では、肺を弱らせないためには、どんなことをすればいいのでしょうか。それにはまず、「肺を乾燥させるような行為を避ける」ことが大切だそうです。
具体的にすぐできる養生法を教えていただきました。
「難しく考えずに、普通に乾燥から身を守る生活をすれば大丈夫です。加湿器を使って空間の湿度を上げたり、室内にぬれタオルをかけておくだけでも効果がありますよ。要注意なのは、サウナや長風呂です。『黄帝内経』に、秋はやたらと動き回らないようにとありますが、それは汗を大量にかくような行為をしないようにという意味です。過度な発汗をすると乾燥が助長されてしまうので、この時期は避けてください。また、早く寝ることが推奨されていたのにも、ちゃんとした理由があります。中医学では、夜に寝ている間に潤いのもとが作られるとされています。つまり、夜更かしをすると潤いのもとを作ることができず、乾燥につながってしまうのです」(櫻井先生)
外気が乾燥しやすい時期だからこそ、秋は早く寝る必要があるというわけですね。
では、「肺を元気にする」には、どんなことをすればいいのでしょうか。
「すぐに行えるのが、深呼吸です。背すじを伸ばしてしっかりと鼻から吸い、新鮮な空気が背骨を通って骨盤内に広がるようなイメージで。吐くときは、口から細く長くを意識しましょう。また、乾布摩擦もおすすめです。といっても、服を脱いで行う必要はありません。その字の通り、乾いた布でこすればいいので、洋服の上から腕や足もとを軽くさすりましょう。皮膚をこする動作は、肺を丈夫にしてくれます」(櫻井先生)
どれも簡単で、すぐに行えるゆる~い養生なのがいいですね。
さらに、「肺に潤いを届ける」には、食事が重要なポイント。とはいえ、ただ水分をとればいいかというと、そういうわけではないそうです。
「潤い補給が必要というと、それなら水をたくさん飲もうと考える方が多いのですが、それは間違いです。水分をとっても、それがそのまま体内の潤いになるわけではなく、多くはそのまま尿として排泄されてしまいます。潤いは食材からとるのが基本と覚えてください。イチオシは“白いもの”。例えば、長いも、山いも、白菜、豆腐、豆乳、豚肉、松の実、白きくらげなどですね。これらは肺を潤すとされているので、秋には最適です。また、薬膳では“酸甘化陰(さんかんかいん)”といって、酸っぱいものと甘いものの組み合わせは体を潤すと考えます。ひとつの食材で酸味と甘味を併せ持つ食材の代表が梨で、ぜひ食べてほしい旬の果物です。ご飯に梅干し、はちみつにレモン、料理では酢豚などもこの体を潤す組み合わせなんですよ」(櫻井先生)
潤す効果を最大限に引き出すためには、梨の食べ方にもひと工夫するといいそうです。
「果物というと、冷蔵庫で冷やしたものを食べる方が多いのですが、それでは体が冷えてしまいます。ぜひ、梨を温めて食べてみてください。梨の真ん中をくり抜いて、そこに氷砂糖を3~4個入れて40分くらい蒸すと、肺にやさしい薬膳デザートのでき上がり。咳止めの効果もあります。もっと手軽に試したい人は、スライスしてはちみつをかけてレンジでチンするだけでもいいですよ」(櫻井先生)
潤い補給の食養生は、顔を鏡でチェックしてから
さまざまな養生法を教えていただきましたが、あなたにピッタリなものは見つかりましたか。食欲の秋なので、食養生でおいしく健康になろうと思った方も多いかもしれませんね。
でも、食養生を始める前には、ひとつ注意点があるそうです。
「食養生は、その人の体質によっては合わないという場合もあります。ですから、そのチェックのために、ご自分の舌をみてみましょう。寝起きすぐの舌は苔が厚くなりがちなので、ちょっと時間が経ってからのほうがいいのですが、朝食の前もしくは朝食後15分以上経ってから舌をみると、どんな状態でしょうか。このとき、舌の赤色が見えないくらい白い苔がべったりとついている人は、体内に余分な水分がたまっているサインです。この場合、先ほどの潤い補給の食養生は体質に合いません。食べ続けていると体が重たくなったり、冷えて軟便になったりと、かえって不調につながる可能性もあるので避けてください」(櫻井先生)
食養生は自分の体質を知って、それに合わせて行うことがとても大切なのですね。
「例えば、肌の乾燥という秋に起こりやすい不調でも、それが顔全体にみられる場合は、体内に熱がこもっていることが考えられるので、苦みのある緑茶や銀杏をおすすめします。一方、口の周りが特に乾燥したり、肌荒れしているという場合は、胃腸の弱りが考えられるので、何か食べるということよりも、脂っこいものや生ものを控えて、水分もとりすぎないことが養生になります。詳しくは書籍『漢方的おうち健診』に書きましたが、鏡で顔をみることを習慣にすれば、不調のサインに気づいたり、いまの自分の体に必要な食材も見極められるようになりますよ」(櫻井さん)
すぐに試せるゆる~い養生と自分でできるおうち健診で、体調を崩しやすい秋を元気に過ごしましょう。
FYTTEのファンコミュニティ「Fan!Fun!FYTTE」では、ダイエットやビューティ、健康をテーマにしたオンラインクラスに気軽に参加することができます。
文/出雲 安見子
『漢方的おうち健診 顔をみるだけで不調と養生法がわかる』(学研プラス)