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めまいの専門医が解説! メニエール病は、別名「耳のストレス病」。起こりやすいのは耐え難いストレスや人生に関わる大きなストレスを感じたとき

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めまいの専門医が解説! メニエール病は、別名「耳のストレス病」。起こりやすいのは耐え難いストレスや人生に関わる大きなストレスを感じたとき

最近、20~40代の女性にストレス性のめまいを訴える人が増えています。メニエール病はその代表的な耳のストレス疾患で、心に大きなダメージとなるようなストレスが引き金になります。めまい症状が出る疾患についてシリーズで紹介します。今回は、メニエール病について、横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長で、25万人のめまい症状を改善してきた新井基洋先生にうかがいました。

監修 : 新井 基洋 (医師)

北里大学医学部卒業。横浜市立みなと赤十字病院めまい・平衡神経科部長。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本めまい平衡医学会専門会員・代議員。95年に「健常人OKAN(視運動性後眼振=めまい)」の研究で医学博士取得。96年、米国ニューヨークマウントサイナイ病院にて、めまいの研究を行う。全国から集まる難治のめまい患者に対して、北里方式をもとにオリジナルメソッドを加えた「めまいリハビリ」を指導し、高い成果をあげている。著書に『全国から患者が集まる耳鼻科医のめまい・ふらつきの治し方』(毎日が発見)、『最新版 くすりに頼らず自分で治す!めまい・ふらつき』(宝島社)などがある。

Contents 目次

このシリーズでは、めまい症状が出る疾患について紹介していきます。
(1)ストレス性のめまいって?
(2)ストレス性のめまいのセルフケア
(3)PPPD
(4)メニエール病 ←今回はココ
(5)めまいを伴う突発難聴
(6)前庭性片頭痛
(7)良性発作性頭位めまい症

はじめに、メニエール病のチェックテストを行ってみましょう。

【チェックテスト】
□ある日突然、めまいが起こった
□激しい回転性のめまいが何度もくり返し起こる
□一度、めまいが起こると数十分から数時間続く
□めまいに伴い、吐き気・嘔吐がみられる
□耳鳴りや聴力の低下がある
□大きなストレスを耳鳴り、めまい発症の半年前から感じることがあった

いかがでしたか? すべての項目に当てはまれば、メニエール病かもしれません。

めまいといえば、メニエール病?

メニエール病は、ストレス性めまいの代表的な疾患です。また、めまいが症状として出る病気としても有名で、「めまい」といえば、メニエール病を思い浮かべる人も多いかもしれません。

「メニエール病のめまい症状は、視界がグルグル回るような、激しい回転性のめまいが数十分から数時間にわたって続きます。はじめに耳鳴りや聞こえが悪くなる症状が出て、その後めまいが始まります。そのタイミングは、翌日だったり、1週間後だったり、いろいろなパターンがあります。耳鳴りがしても忙しさでガマンしたりしてしまい、めまいが出てから受診する人も少なくありません」と新井先生。

メニエール病のめまいはくり返し起こり、回数を重ねるごとにひどくなっていくのが特徴です。
「長時間にわたって続き、嘔吐をくり返したり、起き上がることができずに寝込んだりする人も少なくありません。なかには、病院に救急車で運ばれてくる方もいます。
聞こえ方が変化していくのも特徴で、まず汽笛のボーッというような低音領域の聴力が低下し、そのうち会話領域が、さらに進行すると電子音のピピッといった高音領域が聞きとりにくくなっていきます。
ただし、めまい症状で日常生活に支障が出てくるため、聴力の低下が進行する前に医院や病院で治療を始める人がほとんどです」

人生に関わる大きなストレスが引き金に

メニエール病は、「耳のうつ病」とも言われ、ストレスが発症の引き金になります。
「ストレスといっても小さなストレスではなく、肉親との死別、離婚、離職、仕事上の大きな負荷や悩み、子育て、介護、人間関係などで心にダメージを受けるような大きなストレスを受けたときです。ストレスホルモンの増加で内耳にリンパ液がたまり、水ぶくれになる『内リンパ水腫』を起こすことで、平衡感覚と聞こえに影響が出るのです」

新井先生が診てきた患者さんの中には、子どもが就職難の時代にやっと就職したと思ったらブラック企業で、円形脱毛症になったことをきっかけに引きこもりになり、それを見守っていた母親がメニエール病になってしまったという事例があったと言います。

「ヒストリーは人それぞれですが、つらい経験を涙ながらに話される方がたくさんいます。つらい状況にずっと耐えてきたけれど、ついに耐えきれなくなったときに、メニエール病という形で、耳という体のストレスに関わる部位に症状が現われるのだと思います」と新井先生。

ストレスの原因に対応することが治療の第一歩

メニエール病の治療は、薬で内リンパ水腫を改善しながら、めまい、難聴、耳のつまりなどに対応していきます。2019年には、耳鼻科専門医のもとで受けられる、中耳に圧を加える「中耳加圧療法」が保険適用になりました。とても効果がありますが、重症のメニエ-ル病のみが適応です。

でも、「メニエール病の改善において最も重要なのは、内リンパ水腫を起こしたストレスを軽快し、疲れてしまった心を元気にしていくこと」と新井先生は話します。
「私が診ているのは、診断の難しい患者さんがほとんどで、外来では、症状の背景にどんなストレスがあるのか、じっくり話を聞くことを重視しています。今や、『心療耳鼻科』と言っても過言ではありません」

生活習慣を見直し、ふらつきが残る場合は「めまい改善トレーニング」を

メニエール病を改善するには、まず耳鼻科で治療を受けることが大切です。その上で、病気の引き金となったストレスをとり除けるように、生活習慣を改善したり、心がラクになるケアを行っていくことも大切です。

生活習慣の見直しは、コチラを参考に。

さらに、医師のもとでメニエール病の治療を受け、聴力が固定し、かつめまい発作が治まったものの、ふらつきなどが残る場合に、バランス感覚を強くするめまい改善トレーニングを行っていきましょう。激しいめまいがしたり、聴力が安定しない時期に行うのはNG。聞こえが悪くても聴力が安定していればOKです。

速いヨコ
(1)両腕を伸ばして、肩幅よりやや広めに開く。両手の左右の高さをそろえて親指を立てる。

(2)頭を固定して、目だけを動かして右の親指と左の親指を交互に見る。

※1秒間に1回見るリズムで、「1」「2」と声を出して回数を数えましょう。合計20回です。

はてな
(1)体と顔を正面に向けて右腕を伸ばし、手を握って親指を立てる。

(2)親指の爪を見ながら、頭だけを右に30°傾ける。同様に、左に30°傾ける。

※(2)を10回(左右に10往復)行う。
※頭を傾けるときに、声を出して「1」「2」と回数を数えましょう。合計20回です。

速いタテ
(1)両腕を体の正面に伸ばし、右手が目の上30°、左手が目の下30°の位置になるように開く。左右の手を握り、親指を立てたら横に寝かせる。

(2)頭を固定したまま目だけを動かして、上(右手)の親指と下(左手)の親指を交互に見る。10往復行う。

※1秒間に1回見るリズムで、「1」「2」と声を出して回数を数えましょう。合計20回です。

無理のない範囲で行いましょう。

取材・文/海老根祐子  イラスト/クロカワユカリ

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