最近、20~40代の女性にストレス性のめまいを訴える人が増えています。スーパーの陳列棚を見るとクラクラする、立ち上がるとふらつく「慢性めまい」は、ただの立ちくらみではありません。近年、ストレスがそのめまいの発症に大きく関わる「PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)」という病気であることがわかってきました。めまい症状が出る疾患についてシリーズで紹介します。今回は、PPPDについて、横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長で、25万人のめまい症状を改善してきた新井基洋先生にうかがいました。
Contents 目次
このシリーズでは、めまい症状が出る疾患について紹介していきます。
(1)ストレス性のめまいって?
(2)ストレス性のめまいのセルフケア
(3)PPPD ←今回はココ
(4)メニエール病
(5)めまいを伴う突発難聴
(6)前庭性片頭痛
(7)良性発作性頭位めまい症
はじめに、PPPDのチェックテストを行ってみましょう。
□体がフワフワするようなめまいが3か月以上続いている
□ほぼ毎日フワフワめまいや雲の上を歩いているようなめまいが起こる
□スーパーの陳列棚を見たり、スマホのスクロール画面などを見ているとめまいがする
□めまいは立ったり、歩いたりするときに起こる
□朝よりも夕方に症状が悪化する
□大きなストレスを感じることがあった
いかがでしたか? 4つ以上の項目に当てはまれば、PPPDかもしれません。
PPPDは、ストレスからめまい・ふらつきが起こる
PPPDという病気の名前を初めて知ったという人も多いかもしれません。PPPDは、じつは最近わかってきた病気です。
「2017年に国際的なめまい学会が新たに診断基準を策定し、2018年にめまい疾患としてWHOが認定した新しい疾患がPPPDです。めまいは回転性ではなく、持続的な浮動性めまいで、陳列棚を見るといった視覚的な刺激で誘発されます。それが立っているときや歩いているときに多いことから、このPPPDというめまい疾患は『持続性知覚性姿勢誘発めまい』と訳されています。
体が浮くような感じがしたり、足もとがふらつく『フワフワめまい』が3か月以上にわたり、ほぼ毎日か2日の1度の割合で続くという、慢性的なめまいであることが症状の特徴です。朝よりも夕方、また疲れているときに悪化するようです。スマートフォンをスクロールしたり、スーパーの陳列棚や人混みで行き交う人々を見たりすることで症状が出る人も多いようです」
これまで原因不明とされてきためまいが、PPPDという可能性もあるそうです。
PPPDの発症には、ストレスが関わっています。
「私たちは耳、目、足裏の3か所でバランスをとるための情報を集め、小脳がこれらをまとめて体のバランスをコントロールしています。耳・目・足裏・小脳は、いわば“バランス四天王”です。PPPDは、心にダメージを受けるようなストレス(過去のめまい発作というストレスも含む)によって誘発されますが、このとき“バランスの四天王”のうち、目(視覚系)と足の裏(深部知覚系)の2つが、正しく、ほどよく働かないため、アンバランスな状態になってしまっています」
足裏を刺激して体のバランス機能を強化
PPPDの場合、小脳を鍛え、体のバランス機能を強化することで改善が期待できます。足踏みなどで足裏をくり返し刺激しましょう。
50歩足踏み
(1)両腕を肩の高さまで上げて、まっすぐ伸ばす。
(2)その場で、腕を伸ばしたまま、「1、2」と数えながら、左右交互に脚を上げて、リズミカルに50歩足踏みをする。初めは目を開けて行い、馴れたら目を閉じて行いましょう。
※フラつく場合は、テーブルや壁に手をついて行ってもOK。
【片脚立ち】
(1)壁に右手を当て、背すじをまっすぐにして立つ。目線はまっすぐ前を見る。
(2)ひざが90°になるように右脚を上げ、15秒数えてから下ろす。左脚も同様に行う。※(2)を3セット行いましょう
【右ハーフターン】
(1)背すじを伸ばし、両脚をそろえて立つ。左右の手は太ももの横に軽くつける。
(2)左脚を1歩前に出す。
(3)「回れ右」をするように、右側にくるっと回る。
(4)うしろの左脚を前に戻す。
(5)右脚にそろえる。連続して3回行う。同様に左回りも行う。
※右回り、左回りを連続3回ずつ行う。
PPPDを改善するには、ストレスの原因をご自身で探りながら、あえて「めまい改善トレーニング」でめまいが起こりやすい状況を再現することで克服していくことが大切です。
また、症状が悪化したり、セルフケアで軽快しない場合は、耳鼻科のめまい専門医を受診しましょう。
取材・文/海老根祐子 イラスト/クロカワユカリ