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CATEGORY : ヘルスケア |女性ホルモン

40代で体の不調を感じたら「更年期」かも? 更年期症状のしくみや、快適に過ごすためのケア方法をドクターが解説!

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更年期イメージイラスト

40代になり、だんだんと気になりはじめる更年期。更年期とは、閉経をはさんで前後5年間の合計10年間のことを指します。「更年期ってどんな症状が出るの?」「更年期に突入したらどうすればいいの?」といった疑問を抱えている女性も少なくないのではないでしょうか。そんな更年期のしくみや症状、今から知っておきたい更年期症状のケア方法について、産婦人科医でイーク表参道副院長の高尾美穂先生に伺いました。これから更年期を迎えるプレ更年期世代の人や、今まさに更年期症状に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。

監修 : 高尾 美穂 (産婦人科医・医学博士・スポーツドクター)

産婦人科医・医学博士・スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。文部科学省・国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー。長年ヨガを愛好し多くのヨガインストラクターを指導。YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答え、楽に生きられる考え方を配信している。

Contents 目次

月経が変化し始めたら、更年期のサイン

目次1

そもそも、更年期とは、どのような時期をいうのか、知っていますか? 更年期とは、閉経をはさんだ前後の5年間、合計10年間のことです。

「閉経は、卵巣機能の低下により、女性ホルモンの分泌量が急激に減ることで起こります。最後の月経から1年間、月経がなければ閉経です。日本人の閉経の平均年齢は50.5歳。したがって、45~55歳に更年期を迎える人が多いといえますが、個人差があり、実際には、閉経になってみないと、いつから更年期が始まったのかはわかりません。しかし、女性ホルモン分泌量の低下は35歳頃から始まり、40代になると乱高下しながら急降下します。40代後半で閉経する人も少なくありません。また、“閉経前の5年間”より前に、不調を感じ始める人もいます。40代になったら、『そろそろ更年期かも?』と心の準備をしておくといいでしょう」(高尾先生)

女性ホルモン

更年期のわかりやすいサインは、「月経の変化」です。ここでちょっと月経のしくみについて、おさらいしておきましょう。

月経の変化

月経周期に関わるのは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンです。エストロゲンの分泌量がピークを迎え、月経1日目から数えておよそ2週間で排卵が起こります。その後プロゲステロンの分泌量が増え、妊娠に備えて子宮内膜をより厚くします。ここで妊娠が成立しないと、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が減り、月経が始まります。

では、更年期になると、この月経サイクルにどのような変化が表れるのでしょうか。
「40代以降は、エストロゲンの分泌が急減することで、エスロゲン分泌のピークがなくなり、排卵しにくくなっていきます。そのため、無排卵月経で周期が短くなったり、月経の間隔が間延びしたり、飛び飛びに来るようになったりします。経血量は減ることもあれば、とても多いときもあります。基礎体温を測ると、高温期がないこともあります。こうした月経の変化が更年期に突入しているサインといえるでしょう」

個人差はありますが、更年期によくある月経の変化には、いくつかのパターンがあります。
●月経サイクルが短くなったり、長くなったりする
これまで28日周期で月経が来ていた人が、25日周期になったりして、月経サイクルが短くなっていきます。逆に、周期が長くなったり、月によってあったりなかったとりというバラつきもみられるようになります。

●月経期間が短くなり、経血量が減る
月経期間が1週間だった人が3~4日で終わるなど、月経期間が短くなり経血量も減っていきます。その一方で、突然、大出血するようなことも起こります。

●月経がだらだらと続く
2日目に経血量が多くなり、その後、だんだん少なくなっていく、というようなメリハリもなくなり、少量の出血がだらだら続く場合もあります。

閉経に対して、「だんだんに月経の間隔があいて、いつの間にか月経が来なくなっていた」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実際は、上記のようなさまざまなパターンをたどって、閉経することが多いようです。

更年期には、必ず不調が出るとは限らない

暑い女性

更年期には、月経の変化にともない、のぼせ・多汗、めまい、うつなどの症状が出てくることがあります。これは更年期症状と呼ばれています。特に、生活に支障が出るほどとの強い症状を更年期障害といいます。またエストロゲンには、血管、筋肉、骨、内臓機能などを健康に保つ働きがありますが、その恩恵にあずかれなくなることで体のいろいろなところも影響を受けます。とはいえ、「更年期をいたずらに怖がらないで」と高尾先生はアドバイスします。

「更年期にはさまざまな症状が出るという情報を目にすると、『更年期は怖いもの』ととらえてしまう人もいることでしょう。更年期、更年期症状、更年期障害は混同されやすく、更年期=更年期障害ととらえている人もいるかもしれません。更年期と更年期症状、更年期障害は分けて考える必要があります。更年期症状が出る人は、更年期を迎えた人全体のうち6割です。さらに、更年期障害がみられるのは更年期症状のある人の3割です。更年期症状が出るか出ないかは、その人の体質やストレス耐性、環境なども関係しています。PMS(月経前症候群)症状が出やすい人は、更年期症状が出やすいとされています。月経の変化以外は、特に不調を感じることもなく過ごす人も多いので、更年期をやみくもに恐れることはありません。症状が出たとしても『これが更年期なんだな』と、気をラクにして過ごしていきましょう」

「更年期症状」の原因は、自律神経の乱れにあり?!

脳

自律神経のアンバランスによる更年期の主な症状は、次の通りです。

■主な更年期症状
<自律神経の乱れによる症状>
●のぼせ、ほてり、多量の発汗(ホットフラッシュ)
●めまい、耳鳴り
●動悸、胸がしめつけられるような感じ
●便秘、お腹の張り
●頭痛など

では、なぜ、更年期には自律神経の乱れが起るのでしょうか。まず覚えておきたいのは、更年期のさまざまな症状は、女性ホルモンの中でもエストロゲンの影響が大きいということです。

エストロゲンの仕組み

「エストロゲンは、脳から指令を受けて卵巣から分泌されますが、卵巣の機能が低下してくると、脳から『エストロゲンを出せ』という指令が出ても、それに応えてエストロゲンを分泌できるときと、できないときが出てきます。更年期に、エストロゲンの分泌量が下降線をたどりながらも乱高下しているのはそのためです。エストロゲンを出すように卵巣に指令を出している脳の視床下部は、この指令と応答のアンバランスに混乱してしまいます。視床下部では自律神経をコントロールしているため、呼吸や心拍、体温調節、代謝といった、体を微調整する働きも影響を受け、のぼせ・ほてり・多汗、動悸、めまいなどのさまざまな不調が出てくるのです」

女性ホルモン

ちなみに女性ホルモンのアップダウンは更年期にのみ経験するものではなく、私たちはすでに月経周期の中で経験しています。毎月のように体調の変化を経験している人もいるかもしれません。

「エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が下がり始める月経前に、便秘、乳房の張り、イライラ、うつうつなど心身に変調を感じるPMSの症状が出る人もいることでしょう。月経が小さな嵐だとすると、更年期は大きな嵐といえばイメージしやすいかもしれません。
そもそもエストロゲンが乱高下する時期は、不調が出やすいのです。産後に不調を感じるのもエストロゲンが急減することが関係しています。更年期という嵐が通り過ぎ、エストロゲンがほとんど分泌されなくなって変化がなくなると、それに振り回されることもなくなり、体調は安定していきます」

プレ更年期世代のつらい症状は、ストレス?

文字の書いてあるつみき

ところで、プレ更年期に自律神経症状が表れたら、更年期のはじまりと考えてもよいのでしょうか。高尾先生は「平均的な更年期の年齢よりも若い女性が、月経は順調なのに更年期に起こりうる自律神経症状がみられた場合は、視床下部への強いストレスで自律神経がうまく働かなくなっていることが考えられます」と話します。

また、「ストレスを抱えたまま更年期に突入すると、更年期症状が出やすくなります。今のうちからストレスコントロールを身につけておきたいですね」と高尾先生はアドバイスします。

一方で、更年期はさまざまな病気が発症しやすい年代です。なかには更年期症状と似た症状が出る病気もあるため、不調をすべて「更年期のせい」と決めつけてしまうのは要注意です。
「たとえば、動悸は甲状腺機能亢進症という病気でも起こります。また、めまいはメニエール病の主な症状です。『更年期かも』と病院にかかったとしても、まず、こうした病気がないかどうか必要な検査が行われ、異常がなければ更年期症状と診断されます」

高尾先生は、「40代は自分の健康を棚卸しする時期」と話し、健康診断の機会があれば、「飛びついてでも受けて」とアドバイス。会社や自治体などの健康診断を積極的に活用したいですね。

「更年期」のうるおい不足とエストロゲン

ホルモンの文字雑貨

更年期には、卵巣の機能が低下することで、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が急激に減少します。脳の視床下部がエストロゲンを出すように指令を出しますが、だんだんと機能が下がってきている卵巣は、それに応えられなくなるからです。視床下部は指令と応答のアンバランスにパニックを起こしてしまい、大切な働きのひとつである自律神経もその影響を受けます。その結果、自律神経がうまく働かずに不調が引き起こされる、これがいわゆる更年期症状ですが、さらに「エストロゲンそのものの急減も、更年期症状の原因になります」と高尾先生は話します。

そもそも、エストロゲンとはどのようなホルモンなのでしょうか。
「エストロゲンは女性ホルモンのひとつで、月経周期をつくり、妊娠・出産に関わるだけではなく女性の美容と健康も守っています。たとえば、LDLコレステロールを減らして高脂血症を防ぐ、血管をしなやかに保ち、動脈硬化、高血圧などを予防する、脳の機能を維持する、骨を丈夫にするといった働きがあります。さらにはコラーゲンや水分を保持することで、皮膚や粘膜にうるおいをもたらします」

エストロゲンの急減による更年期症状には、次のようなものがあります。

<エストロゲンの急減による不調>
●肌の乾燥、肌あれ
●髪がパサつく、薄毛になる
●ドライアイ、ドライマウス、ドライノーズ
●デリケートゾーンのかゆみ、性交痛
●骨密度や筋力が低下する
●手指のしびれ、関節痛、指のこわばり
●不眠、気分の落ち込み、イライラなど気分の変調

更年期症状の特徴としては、「体のさまざまなところでうるおいがなくなり、乾燥が気になり始めます。美容面では肌の弾力やつやがなくなり、肌あれを起こしやすくなります。また、ドライアイやドライマウスが気になったり、性交痛を感じる人も少なくありません」

閉経後には、血管リスクなどにも意識を向けて

胸をおさえる女性

エストロゲンは脳、血管、骨、筋肉、内臓などさまざまな場所で大切な働きをしているため、分泌されなくなっていくことで、全身にも影響が出てきます。

たとえば、気づきやすい症状としては、次のようなものがあります。
●筋力が低下する、それに伴う尿もれ
●手指のしびれ、関節痛
●指のこわばりなど

さらには、「LDLコレステロールが増えることで、高脂血症になりやすくなります。血管がしなやかさを失っていくことで動脈硬化を起こしやすくなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。閉経を境に、高血圧になる人も多いです。骨密度も低下するので骨折しやすくなったりもします。

気をつけたいのは、こうした体の内側で起こる変化は、早い段階で自覚しにくいということです。たとえば骨密度の低下は、転んだ拍子に骨折して初めてわかるという具合です。その中でも、比較的わかりやすいのが筋力の低下です。特に女性の場合は尿もれが気になったら、骨盤底筋がゆるんでいるサイン。ほかの筋肉も筋力が落ち始めていると考えていただきたいです」

血圧やLDLコレステロール値など、健康診断を受ければその変化が数値で確認できることもあります。会社や自治体で行われる健康診断を積極的に受けて、定期的に健康の状態をチェックしましょう。

また、LDLコレステロールの増加や動脈硬化、高血圧などは、生活習慣とも密接に関連しているもの。脂肪分や塩分をとり過ぎない食生活や適度な運動も大事です。更年期になってから生活習慣を変えていくのは大変。プレ更年期のうちから、病気のリスクになるような習慣を改善していきましょう。

自分でできる! 「更年期症状」のセルフケア

リラックスしている女性

更年期以降の不調には大きく分けて、自律神経のアンバランスによるものと、エストロゲン減少の影響を受ける2タイプがあります。

更年期の自律神経症状をやわらげる方法

自律神経のアンバランスを整える方法として、深呼吸が有効です。自律神経を整える呼吸法として注目されているのが、ゆったりとした呼吸法です。次の手順で行っていきましょう。

【ゆったりとした呼吸法】
〈1〉息を吐ききったら、4つ数えながら、息を吸う。
〈2〉息を止めて、7つ数える。
〈3〉8つ数えながら、息を吐く。
〈1〉~〈3〉を2、3回くり返しましょう。
気になる症状別のセルフケア法は、次のとおりです。

●のぼせ、ほてり、発汗
頭や顔にカーッと熱を感じて汗が出てきたときは、首を冷やすことで治まってきます。短時間の外出であれば、小さめの保冷剤を持ち歩いたり、水でぬらして使えるように大きめのハンカチを常備したりするといいですね。もちろんホルモン補充療法は非常に効果的ですし、漢方薬の服用も有効 です。

●疲れやすい、やる気が出ない
貧血や甲状腺機能低下症などでも疲れやすい症状が出ることがあります。また、うつでも同様の症状が出やすいです。忙しい生活をしている人は、まず、しっかり睡眠をとる、栄養バランスのとれた食事をとるなど生活習慣を整え、それでも改善しないようなら婦人科に相談してみましょう。

●動悸、胸がしめつけられる
動悸、胸がしめつけられる感じは更年期によくある自律神経の症状ですが、心筋梗塞、狭心症、不整脈、甲状腺の病気などでも同様の症状が出ます。まずは内科や循環器科を受診しましょう。心臓や甲状腺などに問題がない場合は、1日の中で少しでもリラックスできる時間をとるように心がけたいですね。

●めまい
メニエール病でもめまいが起ります。めまいがひどいときは耳鼻科を受診しましょう。疾患によるものではない場合は、耳や首回りの血流を促すことで改善することがあります。首を回したり、耳のうしろのツボを押したりすると血の巡りがよくなります。

エストロゲンの減少によるトラブルにはコレが効く!

笑顔の女性

エストロゲンの減少による主な更年期症状への対策をまとめました。

●肌の乾燥、肌あれ
更年期の肌の乾燥、肌あれは、エストロゲンの減少により肌の水分を保つヒアルロン酸も減ってしまうせいです。更年期の肌ケアは、まずは保湿です。自分の肌に合った保湿剤でケアしていきましょう。

●ドライアイ
エストロゲンの減少により涙も少なくなるため、ドライアイのリスクが高まります。同じドライアイのリスクになるパソコンやスマホの使い過ぎには要注意。ときどき、画面から目を離して目を休ませましょう。

●ドライマウス
ドライマウスは、唾液の量が少なくなることが原因です。唾液には抗菌作用、消化作用、食べものを飲み込みやすくする作用などがあります。食べものをよくかんで食べたり、ガムをかんだりすると唾液の分泌量がアップします。

●ドライノーズ
鼻の中がカサカサする、鼻くそがたまりやすくなったといった変化を感じたら、ドライノーズかもしれません。セルフケアとしては鼻に潤いを与えることが大事。空気の乾燥した季節には加湿器などを使う、マスクをすることなどが有効です。

●性交痛
婦人科で相談してみましょう。性交をスムーズにするゼリーや腟に入れる座薬などを処方してもらえます。ホルモン補充療法も効果が期待できます。

●骨密度の低下
閉経後、エストロゲンの減少により骨密度が急激に低下していきます。骨がスカスカになってしまう「骨粗しょう症」を予防するためにも、乳製品、小魚、小松菜、大豆製品などでカルシウムを摂取して、体内でビタミンDが合成されるように適度に日光浴をしましょう。骨に刺激を加えることも大切なので、ウォーキングなど運動もおすすめです。

●関節痛、指のこわばり
エストロゲンには関節の動きをスムーズにする作用もあります。更年期以降は関節痛が起きたり、指にこわばりを感じることがあります。血行を促すようにゆっくりマッサージをするといいでしょう。痛みや腫れなどの症状を強く感じるようなら、関節リウマチや手指に炎症が起こるヘバーデン結節などの可能性もあるので、整形外科を受診してみましょう。

●手指の冷え
更年期には末端の血流が悪くなり、冷えが強くなることがあります。洗面器を2つ用意して、お湯と水を入れ、交互に手を入れて血流を促すケアがおすすめです。

●尿もれ、筋力の低下
骨盤底筋を鍛える体操をしましょう。
骨盤底筋を鍛える筋トレを紹介します。朝起きたら行うなど、無理のない範囲で、生活習慣に組み込んでいくとよいでしょう。

あお向けになって、ひざを立てる

あお向けになって、ひざを立てる

尿道、腟、肛門をきゅっと締めるようなイメージで、お尻を持ち上げる。その姿勢のまま10秒キープ。3回くり返す

尿道、腟、肛門をきゅっと締めるようなイメージで、お尻を持ち上げる。その姿勢のまま10秒キープ。3回くり返す

「更年期」のメンタル不調を解決するヒント

寝ている女性

更年期は、女性ホルモンの急減によってメンタルの不調も出やすくなります。その理由を高尾先生は、次のように話します。
「抗うつ作用のあるエストロゲン、抗不安作用のあるプロゲステロンの両方が激減することで、人によっては、うつうつとした気分になったり、不安感が強くなったり、あるいはイライラしやすくなったりします。更年期世代が抱えやすい仕事、子育て、介護などのストレスが重なることも、メンタルに不調が出やすい一因です」

更年期世代がメンタルを整えるためには、「まずは睡眠をとることが大切」と高尾先生は話します。
「誰しも朝までぐっすり眠れた日は、元気に過ごせるという感覚を持っていると思います。理想的な睡眠時間は7時間から9時間です。40代は仕事や子育てなどで忙しいかもしれませんが、なるべく睡眠時間を確保できるように生活を工夫しましょう」

ぐっすり眠るための6つのポイントを紹介します。
①起床時間を決めて、起きたら朝日を浴びるようにします。
②日中に自由に行動できる環境であれば、昼間にウォーキングをするなど活動量を増やしましょう。
③入浴は、布団に入る1~2時間前にぬるめのお湯に入るとリラックス効果があります。逆に、寝る前に熱いお湯に入ることは、交感神経を興奮させ、寝つきが悪くなるので避けましょう。
④気にかかることがあって眠れないときなどは、鼻からゆっくり息を吸って、口から吐くという呼吸を数回くり返すと、リラックスして入眠効果があります。
⑤布団に入る少なくとも4時間前にはカフェイン飲料は控えるようにします。夜にお茶を飲むときは、麦茶やハーブティーなどカフェインレスのものがおすすめです。
⑥アルコールには寝つきをよくする効果もあるものの、飲酒してから4時間後には覚醒効果のほうが強くなり、夜中に目が覚める原因になります。休肝日を作り、夜にお酒を飲むならビールは大ビン1本、日本酒は1合程度を目安にします。

更年期にストレスをためこまないコツとは?

犬と女性

「更年期症状とうつと不眠はお互いに関連し合っている」と高尾先生。改善できるところからとり組むこともメンタル不調を解決するヒントになります。
「たとえば、更年期でほてり、のぼせ、多汗といった症状があると、寝汗をかきやすく、その不快感が睡眠をさまたげる原因になります。うつうつとした気分も不眠につながりますが、不眠でうつになることもあります。にわとりが先か卵が先かという話と同じで、更年期症状を改善すれば眠れるようになって、うつが改善することがあり、不眠を改善すれば、うつや更年期症状が軽くなることもあります。いろいろな症状が同時に起って、混乱してしまうかもしれませんが、今、自分ができることは何かを客観的に考えてみることも大事です」

そこで、高尾先生から、ストレスを軽くするための考え方のちょっとしたコツをアドバイスしていただきました。

●起こっているできごとをストレスフルにとらえないコツ
「そのできごとに対して、きちんと対策を持つことです。そうすれば、自分はちゃんと対策をしているから、そこは心配しなくていいと考えられるようになります。体の不調がストレスになっているなら、健康診断を受けて異常の有無を確認することも対策のひとつです」

●イライラしたときに、心をしずめるコツ
「イライラという感情は、自分の思い通りにいかないときに湧き上がってくるものです。そこで、イライラしたときに自分ができることはどれぐらいあるかを考えてみます。自分の努力によって改善できることは実行しましょう。しかし、社会は人間関係で成り立っているもの。自分でどうにかできることは、それほど多くはないことに気づくはずです。自分で改善できないことは、この際、手放しましょう。起こっているできごとをストレスとして感じないようにすることも大切です」

ちょっと見方を変えるだけで、気分がラクになりそうですね。また、ストレスコントロールの具体的な方法も紹介します。試してみましょう。

●ストレスをコントロールする方法
・定期的な運動は自律神経の活動を促します。ウォーキング、ヨガ、ダンスなど、自分に合った運動を見つけて体を動かしましょう。
・休日も就寝時間と起床時間、食事の時間を変えないようにして、なるべく規則正しい生活リズムで過ごすようにしましょう。
・趣味を見つけて自分が「楽しい」と思える時間を持つようします。映画やドラマを見て、泣いたり笑ったりすることでもストレス解消になります。
・親しい友だちと食事をしながら本音で話ができる機会をつくるなど、心のストレスをため込まない工夫をしましょう。

「更年期症状」を軽減させる医療からのアプローチ

パジャマの女性

更年期を迎え、不調を感じたら、婦人科に相談してみるのもひとつの方法です。医療からのアプローチで更年期症状を軽減できる主な方法には、次の3つがあります。

●ホルモン補充療法(HRT)
「足りなくなったエストロゲンを人工的に補う方法です。内服薬、貼り薬、塗り薬、腟剤などさまざまなタイプがあり、健康保険が適用されます。さまざまなリスク低減のために黄体ホルモンを併用します。

エストロゲンの欠乏によって起こるさまざまな症状を緩和する療法で、更年期症状ののぼせ・ほてり・多汗、動悸・息苦しさ、手指のこわばり、イライラ、疲れやすさなどの改善が期待できます。さらに、皮膚や粘膜の潤いが戻ってくることでドライアイやドライマウス、性交痛なども改善して、肌のつや・ハリも出てきます。また、骨粗しょう症や動脈硬化なども予防できます。
ベネフィットは多いですが、日本では更年期の女性の2%程度しか行っていないのが実情です。血栓症や乳がんリスクが多少上がり、それを不安に思う人が多いからかもしれません。しかし、乳がんに対するHRTのリスクは飲酒等の生活習慣と同程度といわれています。年に一度の乳がん検診を受けましょう」

<ホルモン補充療法で改善が期待される症状>
・のぼせ・ほてり・発汗
・動悸・息苦しさ
・イライラ、疲れやすさ
・肌の乾燥
・腟の乾燥、性交痛
・ドライアイ、ドライマウス
・手指のこわばり、関節痛

<ホルモン補充療法で予防が期待できる病気や症状>
・骨粗しょう症
・動脈硬化
・LDLコレステロールの増加
・高血圧など

<ホルモン補充療法に注意が必要な人>
・喫煙者
・肥満/BMI25.0以上の人
・高血圧、糖尿病
・偏頭痛、てんかん
など
※乳がんの経験者、また乳がん、その他のがんの治療中は、受けることができません。

<ホルモン補充療法を受ける期間>
閉経から10年以内にスタートすることが望ましいです。また、とくに使用期間に制限はありません。やめる時期については医師と相談しましょう。
ホルモン補充療法を受ける場合は、「更年期外来」などがある婦人科に相談してみましょう。

漢方やエクオールという選択肢も

漢方薬

ホルモン補充療法のほかにも、更年期を緩和する方法があります。

●漢方
漢方薬の中にも、更年期症状に効果的なものがあります。ホルモン補充療法との併用も可能です。ドラッグストアなどでも購入できますが、漢方薬は気・血・水という概念から、その人の体質などに合ったものを服用するのが基本です。漢方薬にくわしい婦人科医に相談しましょう。更年期に用いられる主な漢方薬は、以下の3つです。
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
虚弱体質の人向き。イライラ、うつうつなど精神症状を緩和しながら、のぼせ、ほてりなどの症状も抑えます。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力がなく、疲れやすい人に向く。冷え、貧血などに効果があります。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体力がある人に向く。頭痛、めまい、冷えのぼせなどを緩和します。

●エクオール
「エクオールは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されて生まれる物質で、エストロゲンと似た働きをするとされています。更年期のほてりやお肌のしわ、薄毛の改善や指のこわばりなどに効果があります。ただし、腸内でエクオールを産生できるのは2人に1人であり、エクオールを作れるかどうかは市販の検査キットで調べることができます。エクオールが産生できれば、毎日の食生活に大豆製品をとり入れることで摂取できます。エクオールが作れない場合、サプリメントから摂取する方法があります」

これから更年期症状を経験しても、対処法を知っていればしんどい思いをせずに乗り越えることができます。「ぜひ一度、婦人科で相談してみてください」と高尾先生はメッセージを送ります。また、プレ更年期から適度な運動、ストレス解消などに心がけ、しっかり睡眠をとるように生活を整えておくことも大切です。

取材・文/海老根祐子  イラスト/クロカワユカリ

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