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「男女の違いを理解して、お互いに知る努力をすれば、価値観や行動が変化する時代へ」フェムケアの現状について聞きました!
女性の体や健康をケアする製品やサービスをあらわす「フェムケア」。これがさらに実生活に根づいていくだろうということで、「FYTTEヘルスケアトレンド2023」で今年注目の8つのトレンドワードのひとつとして「リアル・フェムケア」を掲げました。最近は、フェムケアにテクノロジーを活用した「フェムテック」も話題です。
そこで、フェムケア、フェムテックのブランドはたくさんあるのですが、デリケートゾーンケア製品の開発・販売を通して、女性の健康課題だけでなく地元の農業課題に取り組んでいるという異色のブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」にクローズアップ。ブランドを立ち上げた小林味愛さんにフェムケア、フェムテックの現状について話を聞きました。
Contents 目次
「女性の健康問題の解決」が会社のミッションのひとつ
小林さんの会社は福島県国見町にあり、地元の特産品「あんぽ柿」(干し柿の一種)の製造過程で廃棄される果皮を使用し、「明日 わたしは柿の木にのぼる」ブランドでデリケートゾーン用のソープ、セラム、オイルなどを開発・販売しています。じつは小林さんは、かつては東京で体調を崩すほどの激務をこなしていたのだそう。
「男性が多い職場というのもあって長時間労働も必要で、猛烈に働いていました。そうするうちに生理不順など女性特有のトラブルが出てきて、どこかで限界がくるだろうなと思いながら働いていたんです。そんなときに東日本大震災が起きて、その中で自分の無力さを痛感して、『福島で何かできることがあれば』という思いを持つようになりました。
その後、福島が果物の産地であんぽ柿については発祥の地だということ、でもいろいろな問題で農家さんの所得が上がらないこと、人手が足りないことなどを知りました。それで『農業を持続可能な産業にする』『女性の健康問題の解決』を2つのミッションとして会社を立ち上げたんです」(小林さん、以下同)
一般的な「フェムケア」認知度は低め。でも変化の手応えが
もともと「福島の力になりたい」という気持ちが先で、「フェムケア」「フェムテック」という言葉自体についてはあまり意識していなかったのだとか。
「私たちが開発を始めたのは2017年で、当時はデリケートゾーンという言葉さえほとんど認知されていませんでしたから(笑)。それを思えば、今はフェムケアといった言葉の認知度も上がってきていると思うのですが、一般的にはまだまだかなと思います。ただ、変化は感じています。
私たちの会社では女性特有の健康課題を知ってもらうための企業向けセミナーやワークショップもおこなっていて、参加者が管理職などの男性ということが多いのですが、思った以上にいい反応や反響をもらえるんですよ。年配の男性などは、はじめは『俺は関係ない』という感じだったりするのですが、いろいろ話していくと、『なるほど』『じつはうちの妻も』とか、『これってマネジメントや組織にもすごく関わることだね』という反応に変わっていくことが多い。
その後の価値観や行動についても大学の先生に研究分析をしてもらっているのですが、いい変化が起きていることがわかっています。そういうことからみても、『お互いに理解し合おうという気持ちが大事』『状況や環境をもっとよく変えられる要素はたくさんある』と心から思います」
課題を知ってもらうことで、周りの価値観や行動も変わる
小林さんは、女性が働きやすい社会をつくるには、女性の健康課題について知ってもらうことが重要といいます。
「結局、知らないだけなんだと思うんです。たしかに長い間、男性が働きやすいように社会がつくられていたし、みんながそれを普通だと思っていたので仕方がないところもあると思います。それに、『女性活躍』『フェムテック』といった話になると『男性がもっとこうしないとダメだ』という流れになりがちで、そうなると男性は自分のやってきたことを否定されているように感じてしまうこともあると思います。
でも、時代は変わっていて、『違いがあることを理解してお互いのことをもっと知っていこう』という段階にあると思うんです。『おじさんたちの考えは変えられない』と言われることも多いと思いますが、話してみると、別に悪気があるわけではなくて、『みんなが働きやすくなったらいいよね』と思っている人が多いです。まずは課題を知ってもらい、理解してもらい、みんなで一緒に考えるようにできれば、男女ともに価値観や行動も変化していく、それをすごく実感するので、この活動を継続していかねばと思っています」
【取材協力】
株式会社陽と人(ひとびと) 代表取締役 小林味愛(こばやし みあい)
東京都立川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向、株式会社日本総合研究所を経て、福島県国見町に株式会社陽と人設立。福島の地域資源を活かして地域と都市をつなぐさまざまな事業を展開。2020年には国見町のあんぽ柿の製造工程で廃棄される柿の皮を活用したフェムケアブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』を立ち上げ。
商品の販売に留まらず、経済産業省フェムテック実証事業にも複数回採択され、女性の健康課題に関する研修など医療の専門家と連携しながらさまざまな普及啓発活動も行う。
2021年3月から復興庁「復興推進委員」も務める。
子育てをしながら福島と立川の2拠点居住。
取材・文/小高 希久恵
ヘルスケアトレンドの詳細は下記をご覧ください。
*FYTTEヘルスケアトレンド2023特設サイト:https://fytte.jp/trend2023/