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膣プランナー・山口明美さんに聞く! 膣トレ・膣ケアで、美肌なれるってホント? おろそかにすれば、老化を早めたり、不調を招くことも!?
近年、耳にすることも多くなった「膣トレ、膣ケア」。でも、実際のところ、「どんないいことがあるかわからない」「自分に必要なの?」などと、思っている人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は膣プランナーとして活躍する、“ちつ姉”こと山口明美さんに膣トレ・膣ケアのメリットや、必要性を教えていただきました。「膣ケア・膣トレは、いいこと尽くめ」と話す山口さん。誰もが驚く、つやつやの肌も「膣」と深く関わっているようです!
Contents 目次
尿漏れが続く、壮絶な産後を救ってくれたのは「膣トレ」だった!
「膣こそ女性の健康と美容の要!」「美と健康と、膣は切っても切り離せない」。そう語るのは、ちつ姉こと山口明美さん。山口さんは、19歳でエステティシャンとなり、25年間美容業界に従事。そして、3年半ほど前からは膣プランナーとして、「膣にまつまる女性の健康と美容」についても発信し続けています。
ところで、長年エステ業界で活躍してきた山口さんが、どうして「膣」に着目するようになったのでしょうか。そのきっかけは、ご自身のつらい産後の体験にあるようです。
「そもそものきっかけは、さかのぼること約20年。2人目の出産のときです。次女は生まれてくるときに大きめの赤ちゃんでした。そのため、膣口に肩が引っかかってしまい、なかなか出てこられなかったんです。どうにかこうにか引き出して出産したのですが、結局、私の会陰(膣と肛門の間の部分)は大きく裂けて、14針も縫うことに。これだけでも痛々しい話ですよね…。でも、本当の壮絶はここから。もちろん痛みもつらいのですが、それ以上につらかったのが『尿もれ』です。それも、ちょっとやそっとの漏れじゃないので、毎日オムツが手放せなくて。1人目のときも尿漏れは経験していたのですが、おむつ生活はせいぜい2日程度でした。だからそれくらいで元に戻ると思っていたのですが、2か月経ってもまったく改善しませんでした」
まったく予想だにしなかった状況に、ただただショックを受ける日々。家族にも話すことができず、一人思い悩んでいたそうです。そんな、絶望の淵にいた山口さんを救ったのが、「膣トレ」だったそうです。
「産後のリハビリで通っていた助産院で『やってみたら』と紹介されたのが『膣トレ』だったんです。膣トレとは、骨盤の底にあって子宮や膀胱、腸をハンモックのように支える筋肉『骨盤底筋』を鍛える運動のこと。骨盤底筋は妊娠中に大きくなる子宮をダイレクトに支えたり、分娩のときに大きく引き伸ばされたりします。妊娠や分娩時のこういった負荷でゆるんでしまうことは珍しくなく、それが産後の尿もれにつながってしまうんです。
当時は『膣トレ』なんて言葉はまったく知られていなかったので『尿漏れ体操』として紹介されました。何の知識もなかった私は、『こんな体操で直るの?』とにわかには信じがたかったけど、藁にもすがる思いでコツコツ続けたんです。すると、3か月ほどした頃には、あれほど悩んでいた尿もれが改善したんです」
シミも消えた! つやつやのノーファンデ美肌は、「膣トレ」の賜物
現在47歳の山口さんですが、その肌は見るからにつやつや! シミもひとつとしてなく、しかもノーファンデ!というからさらに驚きですが、山口さんは「これも、膣トレと膣ケアのおかげ」と話します。
「膣」と聞くと、出産や尿漏れの話となんとなく結びつくかもしれません。でも、「美肌」と聞いても、いまいちピンとこない人は多いのではないでしょうか。でも、山口さんが産後の膣トレを続けていると、尿漏れの改善だけでなく、肌にも驚くべき変化が起こったそう。
「膣トレによって、尿漏れがみるみる改善していきました。でも、トレーニングをやめればまた尿漏れしてしまう。だからやめるわけにはいかず、ずっと続けていました。同時に、傷口もあったデリケートゾーンのソープ選びや洗い方などにも、気をつけるようにしていたのですが、それらを半年くらい続けていると、さらに驚くことが起こりました。
じつは、産後、顔のあちこちにシミができてしまったんです。でも、皮膚科の先生に相談しても、女性ホルモンの影響だからどうにもならないと門前払い…。もう一生直らないかもしれない。エステ業界には戻れないかもしれない。そんな不安も頭をよぎりました。
ところが、膣トレと膣ケアを半年ほど続けていると、シミがすっかり消えていたんです。本当に驚きました。エステティシャンという仕事柄、肌のメカニズムはそれなり熟知していましたが、膣トレや膣ケアで美肌になれるなんて! これは本当にスゴイと思い、そこからは膣トレや膣ケアがどう皮膚に作用したのかを独学で調べる日々がはじまったんです」
ほかにも生理痛が軽くなったり、産後なかなか落ちなかった体重が25㎏の減量に成功したり、メンタル的にも、いい効果を実感。「膣トレ、膣ケア」には、ただならぬパワーがあることに気づいた山口さんは、助産師さんから教わった運動を自分なりにアップデートしながら、約20年継続してきたそうです。それが、現在の美しい姿にもつながっているというわけです!
「膣トレ、膣ケア」のスゴさや大切さを、多くの女性に伝えていきたい!
美肌をはじめとしたきれいのヒミツは「膣トレ、膣ケア」にあり! もちろん、健康にもメンタルにも、いい効果がある。ご自身の体験を通して、そう確信した山口さん。
だからこそ、「膣トレ、膣ケア」をもっと多くの女性に知ってもらいたいし、女性は知るべき。そういった気持ちをずっと胸に秘めてきたそうです。しかし、長年の間、自分で実践していることも、産後のつらい体験のことも誰にも言わなかったそうです。
「じつは欧米では、膣トレや膣ケアの話はもっとオープンだし、小学生から膣ケアを教わっています。それに対して日本はというと…、学校で教えてくれないどころか、大人でも『そんな話しちゃダメ!』『人に言ったり聞いたりするなんて、恥ずかしい』。どことなく、そんな傾向がありませんか? だから、私自身も誰かに話したり、発信したりすることに踏み切れなかったんです。何よりも、娘たちに恥をかかせてしまうのではないか。そんな懸念もありました。でも、『いいじゃん』『やってみたら』と背中を押してくれたのは、高校生になった娘たち。それが、約3年前です。そこから、娘たちに教わりながらインスタグラムなどもスタートし『膣トレ、膣ケア』を発信しはじめました」
インスタグラムはじめた当初は、批判的な意見も多く届いたそうですが、風向きが大きく変わったのは、山口さんが発信を始めたおよそ半年後の2020年10月のこと。野田聖子議員が会長を務める「フェムテック振興議員連盟」が発足したことで、世の中に「フェムテック」を応援しようという流れが起こりました。これによって、山口さんのまわりの環境も大きく変わっていったと言います。
近年、よく耳にするようになった「フェムケア」や「フェムテック」。これらは、生理や妊娠、出産、更年期など女性のライフステージにおけるさまざまな課題を解決できる製品やサービスのこと。AIなどのテクノロジーを用いたものを、「フェムテック」。それを用いないものを「フェムケア」と言います。もちろん、膣ケアや膣トレもこれらに当てはまります。
「多くの人が私の活動にも一気に注目してくれるようになったんです。健康はもちろんですが、美容のためにも大切だということをわかってくれる人も増えていき、セミナーや講演の仕事をたくさんいただくようになりました。でも、いろいろ活動をして思うのは、発信側と一般の方との間に大きなギャップがあるということ。フェムケアと聞いても、『自分は、生理痛がないから関係ない』『出産してないし、関係ない』。あるいは、『デリケートゾーンのケアのことでしょ』『吸収ショーツのことでしょ』など特定のケアやグッズことだと思っていたり…。デリケートゾーンや膣トレ、膣ケアはもちろんですが、生理も出産も、不妊や避妊、ピルや婦人科系疾患、更年期のこともそう。女性の体や健康にまつわることはもちろん、それにかかわる美容のことや心のこと、暮らしのこと。「フェムケア」という言葉には本当に広く、深い意味が含まれています。そして、年齢問わず、すべて女性が必要なことだし、知るべきことなんです」
フェムケアはすべての女性に必要! 解決できる悩みもたくさんある
日本では、近年注目をされるようにもなった、「フェムケア」や「フェムテック」。山口さんによると、海外ではもはや常識。子どものころから、知識を教わることも当たり前なんだそう。
「日本は、フェムケア後進国。膣ケアや膣トレのこともまだまだ知られていないし、間違った解釈をしている人や、『自分は関係ない』など他人事の人も多いですよね。でも、先にお伝えしたように、フェムケアはすべての女性に関わることなんです。それから、フェムケアの知識があるか、ないか、実践しているか、していないかでは、健康も美容も人生も、ぜんぜん違うと思います。たとえば、私自身あんなにつらい出産や産後があるなんて、思ってもいませんでした。もっと知識がれば、産前から膣トレもしていただろうし、対策もできたはず。
生理痛やPMSをはじめとした不調も、肌の悩みやメンタルの悩みだって、フェムケアをうまくとり入れることで解決できることは、たくさんあります。反対に言えば、膣トレ、膣ケアをおろそかにすることは、不調を引き起こしたり、老化を早める原因にもなりかねません。人生100年時代。いつまでも、『キレイ』『健康』でいたいですよね。そのために、フェムケアはなくてはらないものです」
次回は、美と健康の根源ともいうべき「膣トレ」の方法と、その効果を深掘り。ほかにも、いますぐできるフェムケアをご紹介していきます。
撮影/我妻慶一 取材・文/柿沼曜子