気持ちは30代と同じつもりなのに、40代に入って疲れやすさ、やる気の低下、不眠、冷え、イライラetc.さまざまな心身の不調が出てきた、という人も多いのでは? 「もしかして更年期…?」と思ったら、中医学に基づいた食事「薬膳」をぜひとり入れてみて! 薬膳というと専門的で難しいイメージがあるけれど、薬膳アテンダントの池田陽子さんが身近な食材で誰でも簡単にできるレシピを伝授。おいしく食べて、もやもや不調を乗り切りましょう。
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「これって更年期…?」不調を乗り切る方法は?
「中医学では、人間の生命活動の中心は『五臓』であると考えます」と池田さん。
五臓とは肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)の5つで、西洋医学でいう臓器と名前は近いですが、中医学ではその働きを含めてもっと広い意味でとらえています。
「五臓の中でとくに加齢と関係が深いのが腎。腎が元気であることは若々しさのカギです。
西洋医学では更年期は女性ホルモンの低下ですが、中医学では腎のパワーが落ちていることの現れとされ、弱った腎をいたわり活力を高めるには、腎によい食材をとり入れた食事をとることが効果的。日々の食事を腎のパワーアップを意識したものに変えるだけで、手軽に更年期ケアができますよ」
そしてもうひとつ気をつけたいのが、若さを維持する「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の考え方。
「若々しい体を維持するには、この3つのバランスがとれていることが大切。どれかが不足したり流れが滞ってしまうと、体調を崩したり老けこんでしまいます。
このバランスを保つのもまた、私たちが日々食べるものがベース。
腎の活力を上げ、気・血・水のバランスを整える食事で、不調に負けない元気な体をキープできますよ」
「五臓」の働きが弱ると不調の原因に
五臓のそれぞれの働きは、その名前の臓器+関連する機能を含みます。
血液を貯蔵したり血流を調節し、自律神経をつかさどる「肝」。
血流を循環させて意思や感情にも影響を及ぼす「心」。
食べものの消化吸収をつかさどり、栄養を全身に送る「脾」。
呼吸器や皮ふ、免疫機能とも関連が深い「肺」。
生殖機能や発育・エイジングのカギを握る「腎」。
前述のとおり、この中で更年期対策の要となるのが「腎」です。
「腎が弱るとまず足腰にきます。腰痛や足腰のだるさといった症状として現れます。そこから関連して尿トラブルも発生。頻尿や尿漏れは腎が弱っている証拠で、人によっては膀胱炎や性交痛などが出てくることも。
さらには薄毛や白髪、ボリュームダウンなどの髪の悩み、耳の聞こえにくさが出る人もいます。また、ささいなことが心配になったり不安がちになるのも、腎の力が低下することで出てくる精神症状です。
これらを年齢が上がるにつれて出てくる自然な加齢現象、と言ってしまえばそれまでですが、腎の活力低下だと気づいてケアすることで体も心もラクになれる。しかも毎日の食事という、最も身近で手軽な方法で叶うのです」
腎をパワーアップする「腎トレ」で更年期不調を撃退!
腎の活力を高める「腎トレ」。そのお役立ち食材の代表と言えば、いわゆる「黒い食材」。
「薬膳では、黒豆や黒ごま、黒きくらげ、黒酢などさまざまな『黒い食材』には腎を強くする働きがあるとしています。
血を補い、巡りをよくする黒きくらげ、滋養強壮効果の高い黒豆、老化によるエネルギー不足を補う黒ごま、血行を促進させる黒酢など、黒い食材を意識して食べましょう」
そして黒以外でも、腎のために積極的に食べたい「若返り食材」があります。
「魚介類の中ではダントツに温め作用が高いのがえび、そのほか造血作用が高いイカ、メンタル不調に効くカキ、足腰の強化にいいと言われるいわしもおすすめ。
野菜類では血行を促進するにら、滋養強壮にいい長いも、五臓すべての機能を上げるのがブロッコリーです。
薬膳ではおなじみのクコの実は、滋養強壮から美髪や美肌まで守備範囲が広く、ほんのり甘みがつくのでみりん代わりにも使えて便利。常備しておくといいですね」
これらの腎トレ食材は、できるだけ毎日何かしら食べることを目標に。難しければ3日に1度はとり入れることを心がけてみて。
次回からは不調のタイプ別におすすめの対策を紹介。
今回ご紹介した腎トレ食材にプラスして、さらに更年期不調をおいしく乗り切りましょう!
撮影/安井真喜子 取材・文/遊佐信子 スタイリング/井口美穂