運動の健康への驚異的な効果に関する新たな発見が次々と報告されています。特に世界保健機関(WHO)が推奨する運動量の半分でも余暇を使って行う軽い運動で多くの病気のリスクを低減できるという研究結果が話題になるなか、脳卒中のリスクを下げることができるという驚きの報告も。効果は年齢や性別に関係なく見られるといいます。
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わずかな運動量でも効果がある?
過去の研究では、日常生活での身体活動と区別し、余暇を利用したレジャーとしての運動がどのように脳卒中のリスクを変動させるかに注目しています。その結果、中レベル〜高レベルの運動量で脳卒中のリスクが下がると示されてきました。ただ、これらの研究では矛盾する結果もいくつか見られ、たとえば、運動量が多すぎると逆に心臓や血管の病気になるリスクが上がる可能性があるという研究結果もあります。そうしたなか、虚血性の脳卒中については運動量が多いほどリスクが下がることが、報告されています。
では、運動量が少ないとどうなるのでしょうか。多くの人がWHO推奨の運動量を満たしていないというデータがある以上、運動量が少ないとどうなのか気になるところです。年齢や性別によって結果が異なる可能性も考えられます。
そこで今回イタリアをはじめとする国際的な研究グループは、健康な一般人を対象としてさまざまなレベルの余暇の運動と脳卒中リスクとの関連を調べた過去の研究を集約し、総合的な分析を行いました。
運動レベルは、米国心臓協会(AHA)が定めている分類、もしくはMETs(メッツ:安静時に比べた運動強度の指標)に基づく中レベル〜高レベルの運動の週間合計量で3つ(まったくしない、目標以下、理想的)から5つ(まったくしない、不十分、少ない、中位、多い)のレベルに分けて比較し、アンケートやインタビュー、ウェアラブルデバイスなどで運動量を測定した15の研究(合計参加者数75万人以上、平均追跡期間10年半)を分析しました。
少しでも余暇に運動すれば予防になりそう
この研究の結果、低レベルの運動量でも、まったく運動しないより脳卒中のリスクを低減できるということが明らかになりました。3つの運動レベルを比較した研究では、「理想的」なレベルの運動量であれば脳卒中のリスクが29%下がりましたが、「目標以下」のレベルでも18%の低下でした。4つまたは5つの運動レベルを比較した研究では、「中」のレベルでも27〜29%下がったほか、「不十分」や「少ない」レベルでも一定のリスク低下が見られました。この結果は、年齢、性別に関係なく確認されました。
研究グループは、余暇の運動は虚血性と出血性の両方を含めて脳卒中のリスク低下につながる可能性があると結論づけています。休みの日、少しであっても体を動かす時間を確保するように心がけるとよさそうです。
<参考文献>
Even low levels of leisure time physical activity help to lower stroke risk
https://www.bmj.com/company/newsroom/even-low-levels-of-leisure-time-physical-activity-help-to-lower-stroke-risk/
Risk of stroke with different levels of leisure-time physical activity: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies
https://jnnp.bmj.com/content/early/2024/01/18/jnnp-2023-332457
1日約11分! 海外研究によると、早歩きなど“体を動かしながら会話ができるような運動”でも病気のリスク低下に
https://fytte.jp/news/healthcare/187674/
メッツ / METs(めっつ)(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-004.html