人の体にとって大切な栄養素だけど、とり過ぎると何かと問題が起きる脂質。どれくらいがいいのか、さまざまな研究が続けられていますが、このたび、脂質を減らして野菜や果物、穀類を増やした食事を長く続けると、乳がん、心臓と血管の病気、糖尿病になりにくいという、20年以上にわたる研究の結果が米国から報告されました。
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5万人近くを追跡調査
食事に含まれる脂質に関する研究では、高脂肪の食事をとっていると、低脂肪の食事に比べて大腸がんや乳がんになりやすいという研究結果が動物実験から出ていました。人間でも、低脂肪の食事が乳がんの人の健康や寿命を改善したという報告があります。
そんななか、米国フレッド・ハッチンソンがん研究センターなどの研究グループは、5万人近い米国人女性を20年以上追跡して、低脂肪の食事が乳がん、大腸がん、心臓の病気に与える影響を調べました。参加者の40%には、脂肪を減らして(総カロリーの20%まで)、野菜や果物、穀類を増やした食事を、残りの60%の人には今まで通りの食事を続けてもらって、比べたのです。
長期的な効果が大きい
わかったことは、長期的に見ると、低脂肪の食事を続けた場合、病気になるリスクを低減できるということでした。研究開始からおよそ8.5年後に調べたところでは、乳がん、大腸がん、心臓と血管の病気のいずれのリスクにおいても、両グループに違いはありませんでした。ところが、およそ20年後の分析では、低脂肪食を食べ続けたグループのほうが、乳がんになった後に何らかの原因で死亡する確率が15〜35%低く、インスリン療法が必要な糖尿病になる確率が13〜25%低いと判明したのです。また、研究開始時に高血圧ではなかった人、または心臓と血管の病気になったことがなかった人では、低脂肪食グループのほうが、心臓と血管の病気になる確率が15〜30%低いという結果も出ました。
研究グループは、脂質を減らして野菜、果物、穀類を増やした食事は、乳がん、大腸がん、心臓と血管の病気に関してよい効果があり、悪影響は見られないと結論。短期的な効果があるダイエット法はたくさんある一方、低脂肪の食事には長期的な健康効果があるのではと説明しています。
ただ、今回の研究では、飽和脂肪と不飽和脂肪の区別なく脂質を全体的に減らしたほか、穀類として特に「全粒穀物」をすすめておらず、さらなる食生活の改善の余地もあるかもしれないそうです。
<参考文献>
ダイエット中、油はとってもいいor悪い?誤解しやすい脂質の役わり
https://fytte.jp/diet/6838/
J Nutr. 2019 Sep 1;149(9):1565-1574. doi: 10.1093/jn/nxz107.
https://academic.oup.com/jn/article/149/9/1565/5512736
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31175807