原因不明の不妊は不妊症の5件に1件を占めるといわれ、約半分は男性に原因があると考えられています。男性不妊は検査で原因の特定が難しい場合がほとんどであるものの、近年では半分近くは遺伝子に原因があるとみられるようになっています。このたび米国の研究グループが特定の遺伝子異常が男性不妊につながることを発見しました。
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遺伝子異常に着目
原因不明の不妊は、生殖可能年齢のカップルの2~3%にみられるといわれています。その謎を解明するカギを握る要素のひとつと考えられるのが、遺伝子の異常です。
米国の研究グループは「ゲノム・アナトミー・プロジェクト」(DGAP:米ハーバード大学と関連研究施設が共同で取り組む、ヒトの先天異常と分子基盤の成長に関する研究)の一環として、2年間不妊で精子数が非常に少ない28歳の男性患者を研究してきました。
男性には、遺伝子を収めている46本の染色体のうち、「20番染色体」と「22番染色体」に変化が見られ、このために「SYCP2」と呼ばれる遺伝子が通常よりも20倍も活発に働いていることがわかっていました。このたび研究グループは一連の変化がどのような影響をもたらすのかを分析したのです。
精子が減る原因に
こうした分析の結果、染色体の変化が起きたために、SYCP2が破壊されたり、正常に機能しなくなったりしており、このことが精子の減少や不妊につながっている可能性があるとわかったのです。
さらに、研究グループは国際協力によってSYCP2が不妊の原因となっている事例を調査し、実際に当てはまる男性不妊のケースを確認。その結果、SYCP2遺伝子異常が男性不妊の原因のひとつであると考えられました。
研究グループは、不妊治療にどのように役立つかはまだ不明であるとしつつも、SYCP2遺伝子の発見で、原因不明とされていた不妊に診断がつけられると説明。「たとえ治療法はまだ確立されていないとしても、診断がつくと安心感につながり、臨床研究の門戸がさらに開かれる」と研究グループは期待しています。
男性不妊につながる遺伝子はほかにも存在する可能性はあり、さらなる謎の解明が期待されます。
<参考文献>
New Gene for Male Infertility Discovered
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=3523