インターネットの普及に伴い、過度の依存や中毒が問題になっています。「スマホ脳」という言葉がいわれるほど、四六時中スマートフォンの情報に没頭してしまうデメリットがはっきりとしてきました。このたび海外の研究から、インターネットに頼り過ぎていると学習意欲や能力が低下するという報告がありました。その背景についても分析されており、適切な使い方のヒントにつながるかもしれません。
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25%が1日4時間以上利用
日本国内の統計によると、インターネット利用率はここ10年、継続的に8割の水準で当たり前の存在になりました。パソコンによる利用が48.2%に対し、スマートフォンは59.5%で、ネット利用の中心はパソコンからスマートフォンへ。メリットが多い一方で、デメリットも注目されるようになっています。スマートフォンを含め、デジタル機器やインターネット全般の影響について国際的に研究が進められているのです。昨年11月に日本で発刊された、スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書『スマホ脳』は2月になっても日本でベストセラーランキングに上位に。ネットの影響は誰しも気になるところです。
このたびイタリアと英国の研究グループは、あらためて過度のインターネット依存が、人の学習能力などにどのような影響を及ぼすのかを分析して、その結果を報告しています。対象としたのは、イタリアの大学で健康関連コースを履修している学生285人。デジタル技術の利用度、学習能力や意欲、不安感や孤独感について調べました。
デジタル化には未知のリスクも
こうして判明したのは、インターネットへの依存度が高いほど、学習意欲が低いことです。参加者のおよそ4人に1人が、1日4時間以上インターネットを利用していました。ほかの人でも1日1〜3時間は利用しています。主な利用目的はSNS(40%)と情報収集(30%)。インターネット依存度の高い人では、計画的な学習が難しくなり、差し迫った試験に対する不安感も大きくなっていることがわかりました。また、インターネット依存が高いと孤独感も強く、学習意欲も低下していることが判明しました。
インターネット依存が強いと、学習意欲が低下し、そのために学業成績が下がるリスクが高まると研究グループは分析。学習の場面でもデジタル化が進むなか、十分に解明されていないリスクの可能性も指摘しています。
これまでもネット依存があると、気持ちのコントロールや計画能力などに悪影響が出てくるとされています。ただ、そうはいっても新型コロナウイルス感染症の影響でネットの利用が欠かせなくなっているなかで、ネットからうまく距離を置く工夫も求められているのかもしれません。
<参考文献>
令和元年情報通信白書(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd232120.html
アンデシュ・ハンセン著 久山葉子訳(2020)スマホ脳 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/610882/
Problematic internet use and study motivation in higher education
Roberto Truzoli Caterina Viganò Paolo Gabriele Galmozzi Phil Reed
First published: 12 December 2019. https://doi.org/10.1111/jcal.12414
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jcal.12414
INTERNET USE REDUCES STUDY SKILLS IN UNIVERSITY STUDENTS
https://www.swansea.ac.uk/press-office/news-events/news/2020/01/internet-use-reduces-study-skills-in-university-students.php